第44話
アパートメントを出た信康は、周辺を目的もなく散策した。
(暇だな・・・馬にでも乗りに行くか。この前アリスと行って来た、ジーンの家族が経営している牧場辺りで)
そう思いついたら、行動は早かった。
信康は駅馬車に乗り込み、カンナ地区に向かった。
駅馬車に揺られる事数時間。
カンナ地区に付くと、信康はまずは身体を伸ばした。
そして、ジーンの家族が経営している牧場に向かう。
歩いて向かっていると、重々しい装備をした兵士達を見かけた。
厳戒態勢を報告は受けていないので、何をするんだと思い、兵士達の後を付いて行く信康。
すると兵士達は、森林に向かっている事が分かった。
信康が後を付いている兵士達の他にも、森林の入り口で兵士達が居た。
簡易的だが陣を張っていた。
それによく見ると兵士達の中には、傭兵部隊に所属している傭兵の顔がチラホラ見えた。
何をするんだと思い、信康は傭兵部隊の傍に行き、何故此処に居るか理由を聞いた。
「よう、何でお前らがここに居るんだ?」
「ああんっ?・・・・・・・何だ、ノブヤスかよ。そういうお前こそ、俺達と同じ目的で来たんじゃねぇのかよ?」
「いや、偶然この騒動を見掛けてな。一体何が始まるんだとつい気になって付いて来たら、お前等を見つけたから声を掛けたんだよ」
「そうかい。何だ、知らなかったのか。熊だよ、熊」
「熊?」
「ああ、この地区に暮らしている住人が熊に襲われたそうだから、それを狩る為にこの地区の警備隊と傭兵部隊の何人か呼ばれたそうだぜ」
「何人来てるんだ?」
「えっと、何人来たんだっけ?・・・・・・・そうそう、全員で二十人ぐらいだ」
「ふむ。人数は二個分隊以上一個小隊未満だな。誰か指揮する奴は居るのか?」
「ああ、結構な人数だからな、指揮官としてティファ姐さんが来てるぜ」
「確か、女の准尉の一人か」
「そうだぜ。ほら、今警備部隊の指揮官と話し合いをしているぜ」
隊員兵の一人が指を指している方を見る信康。
其処には浅黒い肌をした容姿端麗な女性が、警備隊の指揮官と話していた。
露出度が高い踊り子の様な服をを身に纏い、暗褐色の髪を尻まで伸ばし、何かの動物を模した髪留めで留めている。切れ長のツリ目。
話した事はないが、ルノワ達の話を聞いた感じだと姉後肌で面倒見が良く剛胆な性格らしい。
准尉に選ばれるのだから、相応の腕前があると思う信康。
話が終わったのか、ティファがこっちにやって来る。
「あんた達、集合っ! これから狩る獲物の情報を教えるわっ!」
ティファがそう言うと、周囲に居た傭兵達は集まりだした。
(ふむ。隊員達の行動力を見ると、統率力はある様だな)
信康も集まった隊員達に混じった。
「全員、集まったね。じゃあ、狩る熊の特徴をおしえ・・・・・るわ」
ティファは信康を見るなり、驚いた顔をしていた。
「・・・・・・何であんたが、此処に居る?」
「近くを通り掛かったら、熊狩りの話を聞いてな。折角だから、俺も混ざろうかと」
「そうかい。まぁ、手練れが多いのは良い事だね」
ティファはそれだけ言うと、信康を見るのを止めて前を見た。




