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信康放浪記  作者: 雪国竜
第四章

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第416話

 プヨ歴V二十七年十月二十三日。朝。



 信康の寝室に、朝日が差し込んだ。


 その光が信康の顔に当たったので、信康は目を覚ました。


「んん~・・・・・あん?」


 身体を起こして手を動かすが、シーツ以外に触れた感触が無かった。


 周りを見てみると、寝台の脇にあるサイドテーブルに手紙が置かれていた。


『また機会があったら楽しみましょうね♥』


 そう書かれた横に、キスマークがあった。


 シャナレイらしいなと思いつつ、信康は手紙を床に落としてシキブに処分させた。


 それから着替えた後に信康は、部屋を退室した。




 部屋を出て向かったのは兵舎の中にある、傭兵部隊が使う様に指示された大部屋。


 此処で朝食を取るように言われている。信康はプレートの上に皿を乗せて配膳係が居る所に向かう。


 皿に盛られたのはパンを三つ。具沢山のミルクスープ。ベーコン三枚。スクランブルエッグに、生野菜サラダだった。


 信康が適当な席に座り、朝食に手を付ける。


 食べていると、信康が声を掛けられた。


「やぁ、ノブヤス・・・・・・」


 頭を痛そうに抱えながら声を掛けて来たのはリカルドであった。


 信康はその様子から、リカルドがどんな状態なのか瞬時に分かった。


「二日酔いか?」


「ああ、そんなかんじだ。きのうはのみすぎた」


 余程頭が痛いのか、話している間も顔を顰めている。


「程々で切り上げれば良いだろうに。馬鹿だな」


「しかたがないだろう。みんながすすめてくるんだから」


 信康と対面の所に座り、頭を抱えるリカルド。


「食欲は?」


「ない」


「水ぐらいは飲めるだろう。取って来てやる」


「ああ、すまない」


 頭を痛そうに抱えるのを見て可哀そうだと思ったのか、信康は水を貰いに行った。


 配膳係に水を二つくれと頼むと、直ぐに二つのコップに水を注いで持って来てくれた。


 信康は両手でコップを持って、座っていた席に戻る。


「ほれ、水だ」


「ありがとう」


 信康から貰った水を喉に流し込むリカルド。


 信康も水を喉に流し込んだ。


 すると其処へ、食堂に誰かが入って来た。


 よく見ると第三騎士団の制服を着ていた。


「朝から失礼。此処に傭兵部隊の総隊長代理は居るか?」


「俺だ。何か用か?」


 信康が返事をすると、その団員は信康の下に来た。


 信康の前まで来ると、一礼してから話し掛けて来た。


「グイル団長閣下からの御命令です。直ちに城館の執務室まで来る様にとの事です」


「そうか。分かった」


 団員が言葉を聞いて、信康は急いで料理を掻き込んだ。


 料理を食べ終え水を喉に流し込むと息を吐いた。


「ふぅ~さて行くか。悪いがリカルド。下げておいてくれ」


「わかった」


 リカルドの返事を聞いて信康は、団員の後に付いて行った。


 


 団員の案内のお蔭か、城館の前で立っている衛兵達もすんなりと通してくれた。


 城館の中に入り、そのまま団員の後に付いて行くとある部屋の前で止まった。


 礼儀として扉をノックした。


「団長。傭兵部隊の総隊長代理であるレヴァシュテイン卿を御連れしました」


「通せ」


 入って良いと言われたので、団員が扉を開けて部屋の中に入室した。


 するとグイルは豪華な椅子に座り机の上で、腕を組みながらニコニコとしていた。


(何か不気味だな)


 何故ニコニコしているのか分からないが、信康は取り敢えず礼儀良くする事にした。


「傭兵部隊総隊長代理。信康・フォン・レヴァシュテイン。参りました」


「うむ。良く来た。諸将はまだ来てないので寛ぎたまえ」


「はっ。ありがとうございます」


 敬礼しながら内心で、何か良い事があったんだなと思う信康。


 そして、言われた通りに楽な体勢を取った。


 長い事待つかと思われたが、少しすると各軍団の諸将がやって来た。


 その中でクラウディアとシャナレイと目が合った。


 クラウディアは頭を軽く下げて挨拶し、シャナレイは微笑みながらウインクして来た。


 信康は二人には頭を下げるだけで留めた。


「これで全員だな」


 副団長のモルートが自分の傍に立ったのを見て、グイルは口を開いた。


「ヴァイツェン団長。こんな朝早くからの呼び出しとは何用か?」


 副将であるアルディラが、グイルに尋ねた。


 グイルはにやけた顔を引き締めて、真面目な顔をしだした。


「今回の遠征目標であるアグレブの奪還は達成した。これにより諸将がアグレブ(此処)に居る理由は、無くなったと言えましょう」


「確かにそうだな」


「アグレブ奪還は無事に果たせたので、各軍団は各々の持ち場に帰還して頂いて結構」


 グイルがそう言うと、諸将は特に何も言う事なく頷いた。


 グイルが言う様にアグレブの奪還を目的に、出兵に参戦したのだ。その目的が達成された以上、アグレブに居る理由は無い。


「発言しても?」


 そんな中で信康は挙手した。


「ああ、良いぞ。傭兵部隊総隊長代理」


 発言を許可されたので、信康は一歩前に出た。


「それは今日より我々は、王都(アンシ)に帰還しても良いという事でしょうか?」


 信康が尋ねると、グイルはその通りだと首肯した。


「では、第三騎士団も同じなのですか?」


「いや違う。国王陛下から勅命が届いた。我が第三騎士団は暫く間、此処アグレブに駐屯し国土防衛及びカロキヤ軍を撃滅する様にとの王命だ。それにより騎士団を動かす事になった場合は王都(アンシ)からの命令を待たずに、騎士団を動かしても良いとの許可を貰ったのだ」


「つまり、それは」


「その気になれば、カロキヤ領に攻め込んでも良いという事か」


 オリヴィエが呟くと、グイルはその通りとばかりに頷いた。


「しかし第三騎士団が単軍で、カロキヤに攻め込むのは流石に無謀では?」


「其処も大丈夫だ。陛下は第三騎士団に増員を許可された」


 それを聞いてグイル以外驚いた。


 モルートも聞かされて居なかったのか、驚いた顔をしていた。


「もう一つ聞いても宜しいですか?」


「うむ。何だ?」 


 信康がもう一度尋ねる。言っていて気持ち良いのか、グイルは気にする様子は無いみたいだ。


「増員はどれくらいの御予定なのですか?」


「兵力の方だが現兵力に加えて、更に五万五千もの増員を御許可頂いた。王都(アンシ)を中心に、人員を送って貰う予定だ」


「ありがとうございました」


 聞きたい事を聞けたので、頭を下げて下がる信康。


「では、他にはあるだろうか?」


 グイルがそう訊ねるが、皆は何も聞かなかった。


「これにて解散とさせて貰う」


 グイルがそう言ってモルートを伴なって、部屋から退室して行った。


 鼻歌を歌いながら出て行くので全員、内心では気色悪いと思っていた。

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