第414話
「亡くなっただと? 一体何があった?」
信康はパレッリーナ夫妻の死亡を聞いて、死因が気になり職員に尋ねた。
「・・・・・・故人に関わる情報は、私の口からは話せません」
職員が話すのを拒否したので、思わず面食らう信康。
一瞬怒りそうになったが、咳払いして冷静に他の質問をする事にした。
「・・・亡くなったのは、このアグレブでか?」
「はい、そうです」
真相に辿り着ける回答を耳にして、信康はまた別の事を職員に尋ねた。
「二人が埋葬された墓地は、何処にある?」
「それでしたら、アグレブの共同墓地に一緒に埋められております。場所は・・・こちらになります」
職員に地図で共同墓地の場所を教えて貰うと、信康は早々に施設を出て行った。
斬影に駆けながら、共同墓地を目指す信康。
共同墓地に到着して先ずしたのは、墓守にパレッリーナ夫婦の墓が何処にあるのかを尋ねる事だった。
そしてその墓に案内しがてら墓守に、パレッリーナ夫婦が亡くなった理由を尋ねた。
墓守ならば故人を埋葬するに至った経緯を、耳にしている可能性が高かったからだ。そして信康の予想通り、墓守はパレッリーナ夫婦の死因を知っていた。
「私も人伝に訊いた話なんですが・・・以前に征西軍団ってカロキヤの軍団がアグレブにやって来ると、其処の兵士達がパレッリーナさんの奥さんに暴行を働こうとしたそうなんです。それを見た旦那さんは当然、奥さんを守る為にその兵士の前に立ったんですが・・・それに怒った奴等が数にものを言わせて、ボコボコにして殺っちまったそうです」
思ったよりも酷い話に顔を顰める信康。
墓守は前を歩いているため信康の顔が見えないので、気にも留めないで話を続けた。
「当然旦那さんを嬲り殺された奥さんは、夫を殺された事に激怒しました。そして泣きながら護身用の短剣を抜いて、兵士達に襲い掛かったそうです。まぁ女手じゃ叶わなくて返り討ちに遭うと、辱められる位ならと目の前で自殺したって聞いてます」
「そうか・・・それで、その外道共はどうなったんだ? まさかお咎め無しか?」
「真紅騎士団のお偉いさんに見られたそうで、兵士達は逃げ出そうとして全員取っ捕まりました。更に状況を知った団長さんが、見せしめも兼ねて公開処刑にしたんです。征西軍団の団長は越権行為だって止めさせようとしたみたいなんですが、意にも掛けず実行したそうです。それもその一回だけじゃなくて、犯罪をした奴等は例外無く全員処刑してます」
「道理であの戦いでは、連携を取らなかったんだな」
以前行われたパリストーレ平原の戦いを思い出して、信康は征西軍団と真紅騎士団の連携が無かった理由を察した。
「ほい、着きましたぜ」
墓守が手で示した先には、墓が二つ並んでいた。其処がパレッリーナ夫婦の墓なのだろう。
「ありがとな。それで、遺品などはあるか?」
墓守は墓の掃除だけではなく、死者の遺品を預かる事もある。
もしある程度の時間が経っても遺族が現れない場合、その遺品は墓守の物になると言う法律がこのプヨ王国にはあった。
なので遺品は例外無く、大事に保管されている。
「へぇ、服や生前使っていた物などがあります。御帰りの時は、私の所に来て下さい。用意しておきますから」
墓守はそう言って、信康に一礼してその場を離れて行った。
墓守を見送ると、墓前にしゃがみ込んだ信康は、手を合わせたまま、しばし目を閉じた。
風が吹き、草の擦れる音がやけに耳に残る。
(少なくともプヨに居る間は、レズリーの事は気に掛けるのでどうか安らかに)
心中でそう念じ、二人の冥福を祈る信康。
そして線香代わりに煙草に火を付けて、墓の所に置いた。
昔、嘗て所属していた傭兵団の煙草好きの元同僚から貰った物だ。
信康は煙草は吸わないのだが、無理やり押し付けられた。吸わないが使わないと勿体ないと思い、知り合いが死んだ時に線香代わりに使う事にしていた。
煙草の煙が、細く長く上がり空に溶けていく。
そして信康は煙草の火が消えるまで、その場に留まった。
その場から離れる際に信康は内心レズリーにどう言えば良いかなと悩みつつ、墓守の下に行き遺品を貰って兵舎に戻った。




