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信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

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第404話

 ヘルムートが作戦の決行を告げた日から二日後。




 まだ、朝を迎えるには早い時刻。


 信康はテイファ、ライナの二隊と共に砦の北近くを流れている川の傍に居た。


 西と南では、既に崖を上がっている頃と思われる。


 そんな中、信康達は川を見ていた。


「ねぇ、ノブヤス。そろそろ渡らないと、攻撃に遅れるわよ」


「そうよ。そろそろ川を渡らないと、軍法違反とか言われるかもしれないわよ」


 テイファとライナは早く川を渡ろうと急かした。


「もう少しだけ待て。そうしたら分かるから」


 信康は川を見ながら、何かを待っている様であった。


 それが何なのか分からず、ティファ達は互いを見て首を傾げた。


 そうして時間だけが過ぎて行くと。


「只今戻りました」


 ルノワが音もなく、信康達の傍に現れた。


 音もなく現れたのでライナ達は驚くが、信康は何とも思わない顔で訊ねる。


「ご苦労さん。で、どうだった?」


「はい。第三騎士団は攻城の準備はしています」


「そうか。じゃあ予定通り、陽動は行われるか」


 ルノワの報告を聞いて、ホッと安堵の息を漏らす信康。だが、次の報告を聞いて顔を顰めた。


「攻城櫓と破城槌を幾つも作っております」


「なに? 数はどれくらいだ?」


「大まかにしか数えていませんが、およそ二十機」


「っち、あの野郎。砦を俺らに押し付ける気だな」


 信康の呟きを聞いてライナは意味が直ぐに分かったのか、溜め息を吐いた。


「はぁ~、やる事がせこいわね」


「? どういう事?」


 信康とライナの反応が分からず、テイファは首を傾げた。


「砦の北門には何がある?」


「そんなの、前の攻城戦の時に使った攻城兵器の残骸がまだ残っているわ」


「だろう。だから、この場合、攻城兵器を作るよりも、陽動しつつ攻城兵器の残骸を撤去するが一番良いんだ。撤去したら敵も困るから、その撤去作業を妨害する為に攻撃に集中するから陽動になる。更に、もしこの作戦が失敗しても少しでも残骸を撤去出来たら、攻城兵器を繰り出す事が出来る」


「ふむふむ、成程。でも、それだったらどうして向こうは攻城兵器を作っているの?」


「そんなの簡単だ。俺達にこの砦を攻撃させている間に、アグレブに向かうんだよ」


「えっ⁉」


「じゃなかったら、攻城兵器なんか作らねえよ」


「そうでしょうね。でも、この攻撃が失敗したら、あの騎士団長どうするつもりかしら?」


「俺があいつの立場だったらこう言うぜ。『我らが陽動を行う前に、貴様らの攻撃が勘付かれた。これは貴様のミスだ。だが、わたしは寛大だ。そのミスの取り返す機会をやる。我々がアグレブを奪還するまで、その砦を包囲していろっ』ってな」


「うわぁ、最悪ね。そういう事言うの?」


「嫌ね。自分の功績に傷をつけたくない人が、総大将ってのは」


 テイファとライナは心底嫌そうな顔をする。


「それは同感だ。まぁとりあえず、騎士団がどんな風に動くか気になったから、こうしてルノワに調べさせていた。こう動くのなら、俺達もそう行動すると考えて砦を攻略すれば良いだけだ」


「あら?何か考えでもあるの?」


「無論だ。じゃなかったら攻撃に参加しないで、陣地で守りを固めるとか言って本陣にいたよ」


「ふぅん。そうなの、で、どんな方法を使うの?」


「ああ、それはな」


「隊長。ノブヤス隊長っ」


「どうした?」


「せ、せせせ、せいじょうさまが、ま、ままりましたっ」


「はぁ?せいじょう?ままり?」


 伝令に来た伝令の言葉の意味が分からず首を傾げる信康。


「意味が分からん。少し落ち着け」


 信康は部下を少し落ち着かせようと深呼吸しろと言おうとしたら。


「ふふ、お邪魔でしたか?」


 伝令役の隊員と信康が話をしていると、女性の声が聞こえて来た。


 その声を聞いて、信康は身なりを正した。


「これはこれは、聖女様方がこのような所に来られるとは」


「こんな所に呼び出して、何の用よ?」


 信康一礼した。その相手は、空と風の神ウラモイトールン教の聖女シャナレイ・フォン・ドゥ・ヨースティンとクラウディアの二人であった。


「ふふ、他ならぬノブヤス様のお呼び出しですから、てっきり逢引のお誘いかと思いましたが違ったようですね」


 手で口を隠しながらコロコロと笑うシャナレイ。


 それを聞いてクラウディアはジロリと信康を睨んだ。


 クラウディアの強烈な視線を浴びつつも、信康はシャナレイを見る。


「御冗談を。それで、手勢はどれほどお連れですか?」


「ええ、其処のダークエルフの方に言われた通り五百ほど」


「あたしの所は、多めと言っていたから千ほど連れて来たわよ」


「十分だ。助かる」


「ねぇ、ノブヤス。聖女様方を呼んだという事は、何か作戦を考えたようね」


「どんな作戦なの?」


「ああ、そんなの簡単だ」


 信康は笑みを浮かべながら教えた。


「別にあの砦は今後使うとは思えないからな。此処から強力な魔法を放って再利用出来なくなる程、徹底的に砦を破壊する」

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