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信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

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第403話

 独立鷲獅子騎兵隊の夜襲を退けた信康達は、後始末をしていた。


 敵兵が死んでいるのか、それても生きているのかの確認だ。


 死んでいたら回収して仮葬する。生きていたら、それは捕虜になる。


 戦が終った後で捕虜を交換する場合に役に立つ上に、もし返還を望まないのであれば、隣国のトプシチェに奴隷として売る事も出来る。


 その為、死体を念入りに調べている。


 その作業の手を一旦止めて信康達は話を始めた。


「しっかし、死体かどうかの確認をどうして俺達がしないといけないんだか」


「全くだぜ。そんなの功績を立てた自分達がすればいいものをよ」


 バーンが愚痴ると、ロイドも同調した。


「仕方がないだろう。今回の策は表向き(・・・)は第三騎士団が考えた事になっているんだ。折角、士気が上がったところに、死体の確認なんてしたら、下がるかもしれないぞ」


 信康は手に止めて、二人の会話に加わった。


「でも、ノブヤス。良かったのかい? あの作戦は君が捕虜から聞きだした情報を元にして立てた作戦をなんだろう」


「士気が下がったままよりも、遥かに良い。最も隊長が立てた策にしたつもりが、まさか自分が考えた作戦という形にするとは、その意地汚さは俺も予想しなかったがな」


 呆れたように首を横に振る信康。


「あの野郎。随分と面の皮が厚いな。親はどんな教育をしたんだろうなっ」


「団長の親父はロゴスって聞いたぜ」


「成程な。じゃあ、面の皮が厚いのは当然だな」


 バーンがそう言うと、皆笑い出した。


「そう言えば、その捕まえた捕虜はどうしたんだい?」


「とりあえず、ルノワに預けた。グリフォンは逃げないように足に鎖をつけて厩舎の中に入れた」


「まぁ、同じ女性だったら変な抵抗はしないだろうね」


「多分な。それよりもよ。聞いて良いか?」


「何だい?」


「最近、カインの奴、妙に付き合い悪くないか?」


「う~ん。言われてみれば」


 信康にそう言われて、少し考えて返事をするリカルド。


 この死体調べにも、本人どころかその隊も隊員も参加していない。


 別に命令されてした訳ではない。ただ、ヘルムートが「本当に死体なのかどうか調べてくれ」と頼まれたので自主的にしている。なので、女性陣は参加していない。


 それは別に良い。女性に死体を触らせるというのも酷な話だ。


 信康達の隊にも女性は居るが、この頼まれ事はするかしないかは好きにさせていた。


 現に信康達の隊の女性隊員の九割は参加していない。


 しかし、カインの隊が参加しない事に変に思っている信康達。


「あいつ、最近付き合い悪いよな。戦争が始まる前に、飲みに誘っても断られたし」


「それが最近、一人で自主練しているそうだぜ」


「自主練?」


「ああ、あいつの隊の奴から聞いたんだが、最近、訓練が終ると一人で訓練場に残って鍛練しているって聞いたぜ」


「鍛練ね。あいつ、そんな真面目に鍛練する奴だったか?」


「此処に来て心境の変化でもあったのかね?」


 前は付き合いは悪くなかったのにと思いつつ、信康達は首を傾げる。


「おぅい。お前等っ」


 話をしていた信康達に声を掛けて来たのはヘルムートだった。


「あっ、隊長。今の所、死体しか確認していませんよ」


「それについては分かった。ところで、任務だ。お前等も付いて来い」


「「「任務?」」」


「またあの騎士団長様は無理難題を押し付けたんですか?」


「うむ。まぁ、そんな感じだ」


 ヘルムートは苦い顔をした。


「ここでは何だし、作戦会議のテントに来い。死体の確認はもうやめて良いぞ」


 ヘルムートがそう言ったので、信康達は部隊の者達に止めるように指示してからテントに向かった。


 


 信康達がテントに着くと、既にほかの部隊長達が座っていた。


 それを見て、信康達も慌てて椅子に座った。


「よし。全員居るな。先程、総大将閣下から命令(オーダー)が来た」


「どんな命令ですか?」


「そろそろ、決着を付けたいんだろう。今回の作戦は第三騎士団が敵の砦を攻撃する。だが、その攻撃は陽動で、本命は」


 ヘルムートは一度言葉を区切って、皆を見た。


「南、西、東の三方向から攻撃を仕掛ける。その攻撃に傭兵部隊も参加する事になった」


 ヘルムートの言葉を聞いて、皆は顔を綻ばせた。


「陽動作戦の本命の攻撃で俺達を使うとか、随分と気前の良い団長だなっ」


「腕が鳴るなっ」」


 バーン達は喜ばせた。


 戦場で手柄を立てる事が出来るのだ。少しぐらいの危険は付きもの。ましてや、自分達の働き次第で砦の攻略が出来るかどうか決まると分かれば、意気込まない傭兵は居ない。


「三方向に配置されるから戦力は分散されるが、敵の飛行兵部隊が半数になったから全ての方向を守る事は無理だろうという判断された。仮に全方面を守ろうとすれば自ずと数が減って脅威も小さくなる。で、お前等には、どの方面の攻撃に参加するか決めてくれ」 


 ヘルムートが考えろと言った後に、皆は答えた。


「俺は南にするぜ」


「じゃあ、わたしは南にするわ」


「じゃあ、僕も」


 バーン、ヒルダ、リカルドの三名は南の崖に。


「じゃあ、俺は西からにする」


「わたしもそちらに」


「俺もそっちにする」


 カイン、サンドラ、ロイドの三名は西の崖に


「俺は東から」


「わたしも」


「じゃあ、わたしもそっちにするわ」


 信康、テイファ、ライナお三名は東の川にした。


「・・・・・・お前等、もう少し考えてから答えても良いと思うぞ」


「隊長。こういうのはさっさと決めるが一番ですよ」


 ロイドが皆の気持ちを代弁して答えた。


「そうか。まぁ、良い。じゃあ、作戦決行日は明後日だ。各々、準備は怠るなっ」


「「「「了解」」」」


 ヘルムートに言葉に、皆敬礼して答えた。

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