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信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

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第400話

 同日。



 真紅騎士団とカロキヤ軍飛行兵部隊『独立鷲獅子騎兵隊』が駐屯する砦。


 その砦にある軍議を行う部屋では、激論が繰り広げられていた。


「だから、俺達だけで救出に向かうって言ってんだろうっ」


 ゲオルードが机を叩きながら自分の意見を述べる。


 どうやら、磔にされている自分の情婦を助けに行きたいようだ。


「馬鹿者が。あれは、敵が我らを誘き出す策に決まっているわ。挑発に乗ってのこのこ出て行ったら、生きて帰って来る事が出来ぬぞ」


 カールセンが敵の策だから動くなと正論を言う。


「爺っ、手前は自分の部下じゃあねえからそう言えるんだっ。部下一人を助けられないで、部隊を率いる資格がある訳ないだろうがっ」


「じゃが、時には一を捨てて十を救う決断をするのも、部隊を率いる者には必要じゃ」


「んだとっ⁉」


「その娘には悪いが、出撃は許可出来ん。見捨てろ」


「爺っ!」


 ゲオルードは机を飛び越えて、カールセンに襲い掛かろうと身を乗り出そうとしたが。


「止めろ。ゲオっ」


 ルディアの大声で、ゲオルードの動きが止まった。


「この場合、カールセン殿の言う事が正しい。悔しいが、あの子は見捨てろ」


「ルディア。お前っ」


「分かってくれ。我らがどうして、この砦に派遣されたのかお前も分かっているだろう?」


 ルディアにそう言われて、ゲオルードは唇を噛み締めた。


 彼ら独立鷲獅子騎兵隊がこの砦に派遣されたのはカロキヤ軍の援軍と言う事に表向きはなっている。


 だが、実際はこの騎兵隊は試験的に作られた部隊だ。


 何せこの隊の隊員は皆、二十代以下の男女で構成され部隊だ。


 来るべきプヨ軍の決戦に備えて、戦力の増強をするカロキヤ軍上層部。


 その戦力増強の一環で、飛行兵見習い達の中でも優秀な実力を持ったグリフォン乗りの者達で構成された部隊を作られた。


 カロキヤの飛行兵部隊の兵種にはグリフォンを始め大鷲。飛竜。ヒポグリフ。ペリュトンなど沢山いる。


 その中でグリフォンが選ばれたのは、グリフォンが強力な魔獣であり繁殖力が高いからだ。


 他の魔獣達は強力ではあるのだが、繁殖力がそれほど高くない。 


 ヒポグリフにいたってはグリフォンの雄と雌馬との間に出来る一代雑種だが、不思議な事に、このヒポグリフ同士を幾度交配させてもは子供が出来ない。ヒポグリフをグリフォンや雌馬と交配させても結果は同じであった。


 大鷲と飛竜とペリュトンは子供が出来にくい種だ。


 それで、失っても比較的変えが利くグリフォンが乗る事が出来る者達で構成された部隊が派遣された。


 自分達の成果によって、今後はこの独立鷲獅子騎兵隊が正式な部隊となるか又は試験的に作られた部隊と言う形で終わるかが掛かっている。


 それを隊長の情婦を救う為に、部隊員を犠牲にするなど有り得ない事だ。


「ぬうううう・・・・・・」


 自分が此処にいる意味が分かっているゲオルードは唸り声を上げるが、それ以上何も言わなかった。


 これでこれ以上、作戦に口出す事はないなと思い安堵するルディア。


「では、磔にされている者は救わないという事で良いな」


「ええ、部隊の者にも、そう連絡します」


 そして、ルディアとバルドとカールセンが今後の事で話し合う中、ゲオルードは黙って何かを考えていた。




 その夜。




 ルディアは自分用に当てられた部屋で休憩していた。


「ふぅ、このまま籠城しても問題ない兵糧。飛行兵部隊による機動攻撃と騎兵による攪乱で、敵も砦に取りつく事も容易に出来なくなった。これで、後はわたし達がカロキヤ軍の援軍が来るまで、砦を守れば正式に部隊になる、か」


 当初、この部隊が結成された時は年若い者達で構成された部隊だったので、軍部では嘲笑の的にされていた。


 曰く、見た目が良い奴らを集めたお人形部隊。


 曰く、国民の士気向上の為に作られたお飾り部隊。


 などと言われ続けていた。


 隊員達はそんな嘲笑にめげる事無く、訓練に励み、こうして傭兵部隊の援軍と言う形で実を結んだ。


 後は戦果と言う花を咲かせるだけ。


 それが分かっているので、これからの行動は慎重に慎重を期さねばならない。


「それなのに、あの馬鹿は」


 ルディアは溜め息を吐いた。


 隊長のゲオルードは感情のままに動いているの事に困っていた。


 飛行兵部隊は訓練でも死ぬ事があるので、どうも刹那の快楽に溺れる者達が多い。


 ゲオルードが良い例だ。


 実力は部隊の中でもピカ一だが、女性隊員を口説いては自分の女にしていく。


 口説いて自分の女にすると撃墜したと言って喜ぶ。


 女性隊員達もゲオルードの実力と魅力に惹かれてゲオルードの床に侍る。


 それによりゲオルードの女が段々と数が増えていく。


 このままでは、ゲオルードのハーレム部隊と言われる日が来るかも知れない。


 その事を考えると頭が痛くなるルディア。


「今度から、隊員を口説くのはやめろと言った方が良いな」


 と言っても聞かないかと思い、溜め息を吐くルディア。


 そう思っていると。


 ドンドン‼


『副隊長。大変ですっ』


「どうした?」


『ゲオルード隊長が部下を連れて、プヨ軍の陣地に夜襲に向かいましたっ‼』


「なんだとっ⁉」

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