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信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

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第391話

 要塞を出たプヨ軍は、先陣を鋼鉄槍兵団。第二陣を神官戦士団。第三陣を第三騎士団。後陣を第四、第五騎士団の増援部隊と傭兵部隊という編成で進んでいた。


 敵軍に飛行兵部隊が居ると分かっているので、全軍、空を警戒しながら進軍していた。


 だが、要塞への襲撃の後から襲撃どころか威力偵察すら全く掛けて来ないカロキヤ軍の飛行兵部隊。


 これは何かあると思い、各軍団は警戒を強くした。


 そんな中で、傭兵部隊の者達は気楽にしていた。


「んぐんぐ、・・・敵さん。いつ襲撃して来るかな」


 バーンは要塞を出る時にちょろまかした酒を飲みながら、隣にいるリカルドに訊ねた。


「そうだね。僕の勘では、砦に着くまで襲撃はしてこないと思うな」


「何でだ?」


「飛行兵部隊にも限りがあるからさ。攻撃したら一兵も損なわないなんて事はまずない。だから、砦を攻撃している所を横撃してくるって所かな」


「ふ~ん。成程な。ノブヤスはどうだ?」


 バーンはリカルドの話を聞いて、他の者はどうなのか気になり近くにいる信康に訊ねた。


「俺もリカルドの意見に賛成だな。相手の飛行兵は一部隊しかいないようだから、数を頼みに攻撃してくる事はないだろう。だったら、砦を攻撃している所に横撃するのが一番良いな」


「そっか。ところで、今回の戦は真紅騎士団が参加しているんだろう?だとしたら、砦の防衛は誰がするんだろうな」


 バーンは気になっていたのか、二人に訊ねる。


 リカルドが答える前に、信康が口を開いた。


「恐らく『鉄壁』のバルドだ」


 信康が断言するのを聞いて、リカルドは訊ねた。


「『鉄壁』か。その渾名みたいに防衛線が得意なのかな」


「そうだな。俺は詳しくは知らないが、昔、そいつが自分の部隊だけで守っていた砦に一万の兵が攻め込んで来たそうだけど、撃退したって話を聞いた事がある」


「そいつは凄いな。それで、そのバルドが率いた兵の数は?」


「詳しくは知らないが二千未満だと聞いているぞ」


 その話を聞いて耳を疑ったリカルド達。


「まぁ、噂だから、本当の所は分からん」


「う~ん。でも、実際、そういった話があって、そして生き残っているのだから『鉄壁』の異名を持つのに相応しい実力を持っていると考えた方が良いんじゃないかな」


 少し考えながら答えるリカルド。


「まぁ、砦に着けば分かるか」


「そうだな」 


 バーンがそう言うと、二人は頷いた。



 数日後。



 プヨ軍はようやく砦の前まで来た。


 外から見た限り、厚く高い城壁を巡らせている所を見ると、かなり頑強に作られているようだ。


 その上、南と西は崖、東は川という所にあり、攻めれるのは北側だけという守るのに適した所であった。更には空堀も掘られていた。


 信康達傭兵部隊は後陣なので攻撃命令が下るまで、後方警戒という実質待機状態であった。


「さて、砦を先に攻撃する第三騎士団はどう攻めるのかな?」


 リカルド達は観戦するつもりで戦場を眺めていた。


 そうこうしている間に、第三騎士団は攻城戦の準備を始めていた。


 流石に攻城兵器も無しに砦を攻める様な事はしない様だ。


 今、作っているのは攻城櫓二器と破城槌一器であった。


 攻城櫓には、防火対策として泥が塗られていた。破城槌も屋根に泥を塗っていた。


 その指揮を取っているグイルの下に騎士が寄って来る。


「団長。準備が整いました」


「よし。では、各部隊、手筈通りに攻めよっ」


 グイルが腰に差している剣を抜いて号令を下した。


 すると、各部隊は直ぐに行動に移した。


 まずは、第一部隊が盾を構えながら砦に近付く。


 だが、砦からは何の反応も無かった。


 そうしていると、第一部隊が空堀の所まで来た


 隊長のカルノーが号令を下した。


「橋を渡せっ」


 カルノーの命令で部隊の者達は木の板を堀の上に置いていく。


「誰か、本陣に伝令を出せっ。我、堀の上に橋を通せりと」


「はっ!」


 部下の一人がそう返事して、馬に跨り本陣へと向かう。


 伝令に向かった部下が本陣に着くと、グイルの前で跪きながら報告する。


「報告します。カルノー部隊長からの言付けです。我、堀の上に橋を通せりとの事です」


「よしっ。引き続き、カルノー隊は敵の攻撃に備えてその場で待機。攻城兵器が傍まで来たら、本陣まで後退と伝えろっ」


「はっ」


 伝令が頭を下げて、直ぐにその場を離れた。


「攻城部隊。前進せよっ」


 グイルの号令により、攻城櫓と破城槌がゆっくりと動き出した。


 ゆっくりと進み、橋が掛かった空堀の所まで来た。


 攻城兵器はそのまま橋を渡った。


 その様子を見て、第一部隊隊長のカルノーが笑い出した。


「はっはは、敵はどうやら砦の奥で震えているようだ。こうして攻城兵器が来ているというのに、矢を一本も放たないとはっ」


「そのようですな。ははは」


「敵も我が軍の数に怯えているのでしょう」


 カルノーの言葉に追従する様に、部隊の者達も笑いだした。


 そして、攻城櫓が砦に取り付こうと橋を下ろそうとした瞬間。


 城壁から敵兵が姿を見せた。


「放てえええええっ‼」


 雷の様な号令と共に、敵兵が筒の様な物を構えて攻城櫓の下に向けられる。


 パン! パン! パン!


 そんな音と共に、発光した。

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