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信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

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第383話

 信康が隊員の案内で会議室の前まで来ると隊員が扉を叩いた。


「ノブヤス隊長をお連れしました」


『入れ』


 部屋の中からヘルムートの声が聞こえて来た。


 隊員が扉を開けて、信康を通した。


 信康が部屋に入ると隊員は「それでは、俺はこれで」と敬礼して扉を閉めて部屋から離れて行った。


 気が利く奴だなと思いつつ、信康は会議室で空いている席に座る。


 と言っても、テイファが信康をジッと見て来るので、信康はテイファの右隣に座った。


「おし。全員揃ったから、会議を行うぞ」


 ヘルムートが上座に座りながら話し出した。


「今日、お前等に集まって貰ったのは他でもない。昨日、軍部から手紙が来た」


 ヘルムートは自分の手の中にある手紙を見せる。


「手紙には何と書かれているのですか? 隊長」


 カインが訊ねると、ヘルムートは何とも言えない顔で話し出した。


「手紙の内容はこうだ。アグレブ奪還の為に兵を出すから、俺達傭兵部隊も参加しろと書かれている」


 ヘルムートが手紙を見せながらそう言うのを聞いて、皆、歓声を上げた。


「しゃあああっ、これで去年の借りを返せるなっ」


「やられたらやり返さないと、この商売をやっていけなくなるからなっ」


 バーンは手を叩きながら喜び、ロイドは借りを貸せる事が出来て嬉しそうな顔をする。


「アグレブ奪還か。大変だろうけど、頑張れば大丈夫だろう」


 リカルドはやる気満々な顔をしていた。


「ああ、そうだな」


 言葉少なげに言うが、カインも戦う気満々であった。


「はいはい。去年の借りを返せる事を喜ぶ前に、ちゃんと報告を聞きましょう」


 ヒルダレイアは興奮する皆に冷静にさせようと声を掛けながら、手を叩き気を沈ませる。


 そしてヘルムートに話の続きを促した。


「で、だ。今月の二十七日出兵すると手紙に書かれているから、それまでに出兵準備を整える様に」


「「「「了解」」」」


 敬礼する信康達。


「隊長。今回の軍の編成はどうなんですか?」


 サンドラが気になっていたのか訊ねる。


「そうね。今回はアグレブの奪還という事だから、攻城戦を想定した編成なのかしら。それとも、兵糧攻めを前提にした編成なのか知りたいわね」


 ライナも同感とばかりに頷く。


「まっ、わたしはどっちでもいいけどね」


 テイファはどんな編成だろうと勝つと言いたげな顔をしていた。


「ふっ。頼もしいな」


 信康はテイファの顔を見ながら微笑む。


(今回の編成を聞いて、そんな顔を出来たら、度胸があると言えるな)


 信康がそう思っているとも知らず、テイファは信康が自分を見ているので嬉しそうな顔をしていた。


「それで、隊長。プヨ軍の編成を聞かせてくれよ」


 信康はテイファの顎を撫でながらヘルムートに訊ねる。


 既に鈴蘭達にどんな編成なのか聞いているが、此処は知らないフリをして聞いた方が良いと思い訊ねた。ティファは信康に顎を撫でられて「にゃ~」と言いながら、気持ちよさそうに目を細める。


 そんなティファの姿を見て、皆は心の中で猫みたいだなと思った。


「オホン。では、プヨ軍の編成を言うぞ。主力は第三騎士団と鋼鉄槍兵団だ。後は神官戦士団と第四騎士団の一部と第五騎士団の一部で最後に傭兵部隊という編成だ」


 ヘルムートの口から軍の編成を聞いて、皆首を傾げた。


「・・・・・・隊長。どうして砲兵師団が入ってないんですか?」


 カインが気になったのか訊ねる。


「お前等の疑問は尤もだが、これは上層部からの要請でこのような編成になった」


「今回の戦は攻城戦だぜ。それなのにどうして、大砲を用意しないんだよ。おかしいだろうっ」


 ロイドがそう尋ねると、ヘルムートは溜め息を吐いた。


「言うな。王国議会では、今回の出兵で砲兵師団を連れて行けばアグレブが壊されるかもしれないし、その砲撃でクルシャシス家の現当主と一族が被害が出るかもしれないという話が出たから、編成されなかったんだ」


 皆、それを聞いて呆れたような顔をした。


「という訳で、今回の戦は、砲兵の支援なしで城壁に攻め込むという無謀な戦になる。お前等、出来るだけ死なないように頑張るぞっ」


 ヘルムートが声を掛けるが、皆、嫌そうな顔をした。


 そんな顔をされては、流石に士気に係わるなと思い、信康は口を開いた。


「今回の戦が終ったら俺が貰った家で祝勝パーティ―をしようぜ。無論、招待するから、酒も食事も俺が用意するぞ」


「おおおおっ。マジかっ⁉」


「マジだよ」


「しゃああああっ。やる気出て来たぜっ」


「おうよ。今回も生き残って、ノブヤスの家で腹が膨れるまで酒を飲むぜっ」


 ロイドとバーンは歓喜した。


「良いのかい?お金とか大丈夫かい?」


 リカルドは心配そうに訊ねる。


「心配するな。隊長全員を呼んで宴会をしても、釣りがくるほどの蓄えはある」


 偶然手に入れた金塊とか。前の戦で手に入れた共通金貨とか色々有る。


 なので、金については問題ない。


「ノブヤスがそう言うのなら別に良いけど」


「じゃあ、大量の酒を用意してね」


 サンドラは良いのかなと思いつつも行くと言い、テイファは行く事を前提に話ている。


「ふふ、じゃあ、お邪魔させてもらうわね」


 ライナは微笑みながら行くと言う。


「わたしも良いかしら?」


「勿論だ」


「じゃあ、お言葉に甘えるわ」


 ヒルダも行く事にした。


「カインも行くだろう?」


 ロイドがそう尋ねると、カインは何か考え込んでいる顔をしていた。


「?どうした?」


「あ、ああ、いや、何でもない。俺も行っても良いか。ノブヤス?」


「勿論だ」


「じゃあ、お邪魔させてもらうぜ」


 カインも参加すると言った。


「勿論。隊長も行きますよね?」


「当然だろう」


 ヘルムートは頷いた。


「よし。今回の戦も生き残って、ノブヤスの家で祝勝パーティーをするぞっ」


「「「おおおおおおおおおおおおおっ‼」」」


 皆は嬉しそうな声を上げた。




 夜。




 信康は自室で、自分の隊の編成表を考えていた。


「ううむ。今回の戦は攻城戦だからな、騎兵は後方で、敵の遊撃部隊に備えた方が良いだろうな。だとしたら、後方に治療部隊を置くのは危険だな。中央に置くか?歩兵は先陣で良いな。だとしたら、弓兵は分けて、右翼と左翼に配備するか・・・・・・」


 ブツブツと呟きながら、編成を考えていると、ドアがノックされた。


「ちょっと待て」


 信康は編成表を戸棚に仕舞いドアをノックした者に「入れ」と言う。


 ドアが開き、部屋に入って来たのはルノワとケンプファとブルスティであった。


「ノブヤス様。お連れしました」


「ご苦労。二人共。今日の模擬戦は見事だった」


「はっ。ありがたきお言葉」


「へい。恐縮です」


 ケンプファもブルスティも頭を下げた。


「そこで、二人の能力を見込んで、お前達二人を、俺の隊の副隊長にする」


 信康がそう言うのを聞いて、二人は頭を上げて目を見開いた。


「お、俺が副隊長ですか?でも、まだ新参ですけど」


「そんな事は気にするな。正直、俺が不在の時に部隊の指揮を出来る奴が欲しかったんだ。俺が居ない間はケンプファが中心になって部隊を纏めていたそうだな」


「はっ。隊長みたいに上手く出来たかどうかは分かりませんが」


「ケンプファは歩兵部隊隊長もしてもらいたい。で、ケンプファが歩兵を指揮して手が空いていない時はブルスティ。お前が指揮しろ」


「ぶひっ、俺が?」


「理由は今言ったから二度は言わん、という訳で良いな?」


「はっ」


「おれで良ければ」


 二人は副隊長の職を受けてくれた。


「助かる。話は以上だ。下がって良いぞ。ああ、ルノワは残れ」


 信康がそう言うと、ケンプファ達は一礼して部屋から出て行った。

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