表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

379/418

第373話

 少し休憩を挟んでから、馬上槍試合の決勝が開始された。


 信康はブルーサンダーに跨りながら、試合会場に向かう。


 会場に着くと、信康の反対側にはシーリアが居た。


「これより豊穣天覧会馬上槍試合(トーナメント)個人戦(ジョスト)部門の決勝戦を行う! ノブヤス・フォン・レヴァシュテイン卿。シーリア・フォル・レダイム卿。両卿ともに所定の位置へ」


 審判にそう言われて、二人は所定の位置に着いた。


「試合を始める前に、両卿は国王陛下へ拝礼せよっ!」


 試合会場から少し離れた所に、天覧席と言う貴賓席がある。


 その席は、プヨ王国現国王のヴォノス王が居た。


 元々豊穣天覧会とは収穫された作物を祝う祭りで行う競技を、プヨ国王が観戦したと言う由来からその名前が付けられた。


 なので豊穣天覧会で行われる各競技の決勝は、プヨ国王が見る事になっている。


 信康達の位置からは、あまりに遠いので顔は見る事が出来ない距離であった。


「今年はヴォノス王陛下だけではなく、ギネヴィーナ殿下とアリスフィール殿下も天覧を賜った。両卿は国王陛下並びに王族の皆様方に、無様な姿を決して見せぬ様に」


 審判がそう言って振り返り天覧席に向かって拝礼したので、信康達も天覧席に向かって拝礼した。


(陛下だけではなくギネヴィーナもアリスも観ているのか。そう言えば、見に来てくれると言っていたな)


 わざわざ見に来てくれた事を、信康は内心では嬉しく思っていた。


 審判が顔を上げて、信康達を見る。


「両卿、所定の位置へ」


 審判にそう言われて、信康達は柵の中に入り位置に着いた。


 信康達が位置に着いたのを確認した。


「では、これより豊穣天覧会馬上槍試合トーナメントの個人戦ジョスト部門の決勝戦を開始する。始め!」


 審判が手を上げると、直ぐに開始の合図がなった。


 信康達はその音がして、直ぐに馬を駆けさせた。


 二人はあまり速く駆けさせていない。


 速くすると、馬の体力も無くなるのが早い。


 二人共に長期戦になると予想して、馬の体力を少しでも残そうと判断したからだ。


 そして、二人が槍の間合い入った。


(最初は譲って、次で勝負だ)


 そう考えた信康は限り限りまで、自由自在を突き出さなかった。


 そうこうしていると、シーリアが馬上槍ランスを突き出した。


 信康も少し遅れて、自由自在を突き出した。


 その結果。


 シーリアの馬上槍(ランス)は信康の胴体に当たり、信康の自由自在はシーリアの左腕に当たった。


「「ぐっ!」」


 二人の当たった場所は違えど、衝撃は走る。


 その衝撃を堪えて、二人はそのまま馬を駆けさせた。


 二人が柵の端に着くと、観客席から歓声が上がった。


 左腕に当てた信康は十点。対するシーリアは胴体に当てたので五十点。


 点数にかなりの開きが出来た。


 試合会場の中央にある掲示板に、信康達の名前の横に点数が書かれた。


 しかし信康は一切、気にした感じは無かった。


(最初は捨てる心算だったからな。寧ろ儲けた位だ。勝負は次だ)


 信康は最初の位置に戻る。


 その際、シーリアも隣を通った。


 シーリアは兜越しに信康を見て、ポツリと零した。


「今度は負けないわ」


 その言葉には色々な感情が乗っていた。


 勝利への渇望。自分を負かした相手に勝つ事を望む気持ち。そして、それにより自分が更に強くなるという願望。


 言葉一つなのに、何故か重みがあった。


(これは手を抜いて負けたら、怒られると言うか怨まれそうだな)


 そんな事を思いながら、信康は定位置に戻る。


 二人が位置に着いたので、審判が手を上げた。すると、開始の合図が響いた。


 二人は馬を駆けさせた。


 今度は、信康の方が若干速かった。


 その差は、二人が槍の間合いに入ると分かった。


 信康が自由自在を突き出すと、シーリアの胴体に当たったが、シーリアの突撃槍(ランス)の腕に当たる。


 これにより、信康は六十点。シーリアは六十点になった。


 両者同点となった事で、観客席から歓声が上がった。


 これで勝負がどう転ぶか分からなくなったからだ。


 信康達は元の位置に戻った。


 位置に着く前に、深く呼吸をした。


 勝っても負けても次で最後。


 なので、全力を出して悔いは残さないようにしようと思っていた。


(・・・・・・よしっ)


 気合を入れた信康は位置に着いた。


 それを見た審判は、手を上げる。そして、開始の合図が鳴った。


「「っ!」」


 その瞬間、二人は駆け出した。


 音が鳴ったと同時に駆け出したので、どちらかが遅れたという事はない。


 後はどちらが早く自分の得物を突き出し、相手に当てるかだけだ。


 二人の馬は蹄が地面を蹴る音を立てながら駆ける。 


 それにより、二人の距離が縮まって行く。


 今にも互いの得物が当たるのではと思い、観客席で観ている観客達は拳を握りながら試合を観ている。


 やがて二人はが得物の間合いに入った瞬間。


 二人は同時に得物を突き出した。


 ほぼ同じタイミングで突き出された槍。


 穂先はそのまま突き出されて行く。その突き出された自由自在の矛先には、シーリアの馬上槍ランスがあった。


 お互いの槍の穂先がぶつかった。その瞬間。


 パキイイイィィィン!!!


 そんな甲高い音を立てて、二人の槍が砕けた。


 信康達はそのまま馬を駆けさせて、柵の端まで来ると馬の足を止めた。


 自分が持っていた、自由自在を見る。


 穂先から棒の部分まで、見事に砕けていた。


(ここまで見事に砕けるとはな。もしかして、師匠の呪いか?)


 信康は残骸となった自由自在を見ながら、そんな事を思っている間も審判達が集まった。


 槍を変えてもう一戦するべきか、それとも今までの獲得した点数で判定するべきか。


 話し合いの結果、どちらにするべきか決まらなかった。其処で豊穣天覧会である事から、此処はヴォノス王に決めて頂こうと言う話に決まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ