第367話
警備部隊ケソン支部。
「本とっっっっっうに、申し訳ありませんでしたぁっ!?」
信康達から事情を聞いた警備兵がステラを呼び行って、ステラは警備兵と一緒に来てローランドを見るなり、その頭をガシっと掴んで無理矢理下げさせた。
そして、自分も頭を下げて謝った。
「・・・・・・その、今後からはこの様な行いは控えて頂けるとありがたいのですが」
ローランドを捕まえた警備部隊の部隊長は何とも言えない顔で言う。
本来なら留置所に一晩でも拘束置いておきたいのだが、カマリッデダル伯爵家の当主補佐に頭を下げさせるのは流石に不味いと判断していた。
其処でローランドは釈放する事にして、後はステラに押し付ける事にした。
「はいっ。今度から厳じゅゅゅゅゅゅゅゅうに注意しておきますっ!!」
ステラは頭を下げたまま言うので、言われている部隊長の方が恐縮していた。
「え、ええ、では、お願い致します。では、もう、お帰り頂いて結構ですよ」
部隊長が扉を指し示したのでステラはペコペコと頭を下げながら、ロランを引き摺って部屋から退室して行った。
信康達もその後に付いて行った。
詰め所を出た信康達は、ステラの疲れ切った顔を見た。
「はぁ。絶対何か起こると思ったけど、やっぱりこうなったのね~」
ステラは重い溜め息を吐く。
「御足労を掛けて申し訳ない。ステラ殿」
「ええ、本当にね」
「私の魅力が無いからこうなったのだろうな。やはり此処は私の魅力をもっと知らしめる為に、もっと肉体美をアピールせねばならないなっ」
そう言う何故かまた、ローランドは服を脱ぎそうであった。
「あんた、此処で脱いだら刺し殺すわよっ?」
常軌を逸した目と殺気を放って、ローランドを見るステラ。
「むう、残念だ」
ローランドはステラの殺気を浴びても涼しい顔で、心底残念そうな顔をしていた。
信康はローランドの行動を見て分かった事がある。
(類は友を呼ぶか・・・・・・副団長でこうだから、団長もよっぽど変わっているのだろうな)
こんな二人を副団長にしているのだから、どう考えても常識外れな事しかしない想像しか浮かばない。しかもその団長がステラの血の繋がった実弟だと言うのだから、何とも言えない。
「大変なんだな。ステラ」
信康はステラの肩をポンっと優しく叩いた。
「分かってくれる?」
ステラが疲れた顔でそう言いので、信康は勿論だと言わんばかりに頷いた。
「ああ~ありがとう。今まで分かってくれたのは、プラダとリュパン以外には伝わらないのよね~」
「りゅぱん?」
初めて聞く名前に誰だ、信康はそれという顔をする。
「ああ、僕達の騎士団に居る、副団長補佐の一人だよ」
「五勇士の一人であり素晴らしい人格者で、我が騎士団の中でも常識人で知られているぞ」
オストルとローランドが教えてくれた。
「人格者で常識人か。それでも、こいつらを大人しくさせる事も出来ないとはな」
寧ろ人格者で常識人だから逆に、抑える事が出来ないのではと思った信康。
「いえ、本人も何とか大人しくさせようと頑張っているわよ。ちょっと効果が無いけど」
「それは何と言うか、苦労しているな」
この場には居ないリュパンという人物に同情を禁じ得ない信康。
心中で、頑張ってくれとエールを送った。
そして四人はオストル達が宿泊している高級宿に向かい、ローランド達が取っている部屋にローランドを押し込んだ。
「良いっ、ローランド。今日はもう外出したら駄目よっ!」
「ふむ。ステラ殿、出来れば、理由を説明して頂けるとありがたいのだが」
「あんたが変態行為に走るからよっ」
ステラが心底冷めた様子でそう答えると、ローランドは不服そうに抗弁した。ローランド曰く、ただ肉体美を披露しているだけなのだと。
「公衆の面前でそんな事をするのは、世間一般的に言って変態行為と言うのよっ!?」
「・・・・・・ふぅ。真に素晴らしいものは人には受け入れられないと言うが、悲しい事だ」
ローランドは悲しそうに首を横に振る。
そんな態度のローランドを見て、ステラは凄い形相だったが拳を握って耐えた。
そして、オストルを見る。
「あんたは監視役だから、こいつから目を離したら駄目よっ」
「はぁ~い」
オストルの返事を聞いて、ステラは何か言いたそうな顔をしたが止めた。
「良い? 今度また騒ぎを起こしたら、袋に詰め込んで騎士団の駐留地まで送り届けるわよっ!?」
「承知した」
「うん、分かったっ」
二人の軽い返事を聞いて、ステラは頭が痛そうな顔をした。しかしこれ以上言っても無駄だと判断して、溜め息を吐いてから部屋から出て行った。
「じゃあ、俺も失礼する」
「うん。また今度ね~」
「明後日だったかな? その日にオストルと一緒に応援に行かせて貰おう」
「あ、ああ、うん。どうぞ、お好きに」
来なくて良いと思ったが、善意で来てくれるので来るなとは言えず無難な事を言う信康。
そして部屋から出て行った。
オストル達が止まっている宿泊施設を出ると、ステラが居た。
ステラは何も言わず、信康の腕に自分の腕を絡めた。
「おいっ」
仮にも高位貴族なのにこんな人目がある所で、そんな事をして良いのかと言う目でステラを見る信康。
「良いのっ! それよりも、近くに良い店があるから行きましょう」
ステラはそう言って、信康を引っ張る。
「まぁ良いか。好きなだけ付き合おう」
「そう言ってくれると思ったわ。私が全部持つから、好きなだけ食べて飲んでね。その代わり、たっぷり愚痴を聞いて貰うから♥」
ステラが笑顔で言うので信康は、断ったら後が大変だと思い首を縦に振った。
「じゃあ、行くわよ。個室がある店だから、どんだけ騒いでも問題ないわよ」
それはつまり不満を口にしても問題ないと言う事だ。
「了解した」
信康は重い溜め息を吐いて、ステラに引っ張られる様に歩いた。




