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信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

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第365話

 信康が観戦席に着くと、ナンナ達が参加する長距離走が始まる所であった。


 長距離走のコースは選手で、いっぱいいっぱいであった。


 スタートラインには審判が、手に何かを持ちながら立っている。


 信康の距離からはそれが何かは分からないが、恐らく開始の合図を告げるものなのだろうと思った。


 そして何処からか、鐘の音が聞こえて来た。


 その音を聞いた審判は、手に持っている物を天に掲げた。


「位置について、よ~い」


 審判がそう言い終えると、手に持った何かを鳴らした。


 パン!!


 その音と共に選手達は走り出した。


 一斉に走り出した所為か、選手達は肘や身体がぶつかりながら走り出した。


 最初はおしくらまんじゅう状態であったが、途中から二人が速度を上げて先頭に躍り出た。


 ナンナとマリーザであった。


 二人共最初から先頭に出る事はしないで、途中から一気にトップに躍り出る手段を取ったみたいだ。


 二人は先頭に躍り出ると、お互いを見る。


(負けないからねっ)


(こちらこそっ)


 そう視線だけで話しているみたいであった。


 そして、二人は走る速度を上げた。


 速度を上げた事で、後続をかなり離した。


 それでも、二人は速度を緩める事はしなかった。


 やがて、二人の目にはゴールに掛かっているテープが見えて来た。


 それを見て、二人はラストスパートと言わんばかりに駆け出した。


 そして、ゴールした。


 二人はゴールして少し走った後少しずつ速度を緩めて、ゴールの傍に居る審判の所に向かう。


「「判定はっ!!?」」


 お互いの顔をぶつけながら、二人は審判に訊ねた。


 審判は二人の迫力に押されて、ちょっと驚きながらも答えた。


「り、両者、同着ですっ」


 審判がそう答えるのを聞いて、二人は大いに不満そうな顔をして抗議して来た。


「いや、僕の方が少し先に出ていたっ」


「い~え、わたくしの方が貴女よりも、小指の分は出ていましたわっ」


「そんなの、お前の見間違いだろう!」


「貴女の方が、見間違いでは無くて?」


 二人は見えない火花を散らせながら睨み合う。


「あ、あ~ゴホン。次の競技に差し障るので、余所でしてくれるかな?」


 審判が咳払いをしたので、二人は顔を突き合わせて話ながら何処かに行った。


 二人の様子を観客達は笑いながら見送った。


 信康も笑いながら、二人の健勝を称えて拍手した。


 ナンナ達から引き離された選手達も、ようやくゴールして来たのを見て、これで長距離走も終わったのだなと思いこれからどうしようかと考えていた。


「ああ、いたいた。ノブヤス」


 そう考えていると声を掛けられたので、振り返ると其処にはオストルが居た。


 オストルの顔を見るなり、信康は眉間に眉を寄せる。


「何か、嫌そうな顔をしてないかい?」


「気のせいだ。それで、何の用だ?」


「いや、暇だからさ。君も外の祭りを見ないかと誘おうかと思って」


「祭りか」


 競技場では大会が行われているが、競技場があるケソン地区ではお祭りが行われている。


 元々、収穫祭とは秋で採れた収穫物を神に感謝を捧げる為に行われる祭りだ。


 なので、お祭りがあっても不思議ではない。


「何で、俺なんだ?」


「君が一番暇そうだし、馬上槍試合(トーナメント)の試合も明後日でしょう?」


 信康はそう言われて少し考えた。


(暇だから祭りに見るのも悪くはないが、こいつとか・・・・・)


 信康はオストルを見る。


 別段嫌っているわけではない。そして嫌な奴でもない。寧ろ人格者と言っても過言ではないのだ。


 優秀な実力者でありステラを紹介したのはオストルなのだから、信康としては寧ろ感謝しても良いと言える。


 だがどうにもオストルを見ていると同姓好きなのでは? と思える行動や言動をするので二も無意識にも距離を取ってしまう。


 信康の父親は両刀使いだったのだが、信康からしたらそっち方面の興味が全くない。


 自分の母親がその方面に対して酷く嫌っていた。


 父親とそういう関係がある者を目にすると、『汚らわしい男娼がっ』と罵っていた。


 子供の頃の信康が見ている前で言うのだ。余程、そういう方面が嫌いなのだろう。


 そんな母親の影響を受けた所為か、信康もそういう方面は好きではない。


 尤もだからと言って別に、ニューハーフなどが嫌いという訳ではない。元同僚にもニューハーフは居るし、同姓好きや両刀の知人が何人もいる。


 そちらの趣味趣向を押し付けないでくれるのなら、仲良くするというスタンスを取る事にしていた。


(まぁ此処まで良くしてくれているのだから、決め付けるのも良く無いよな)


「ねぇ、駄目かな?」


 信康がそう思っていると、オストルは首を傾げながら尋ねて来た。


 中性的な顔立ちなのでそんな事をして言うと破壊力があった。


(こいつ、ワザとか? それとも天然なのか?)


 男性だと分かっていても、何か心に訴えて来るものが来ると思った信康。


「・・・・・・分かった。どうせ、暇だからな。付き合ってやるよ」


 信康は腰を上げたのを見て、オストルは喜んだ。


「やった~じゃあ行こうっ!」


 オストルが歩き出したので、信康もその後に続いた。

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