表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

362/418

第356話

 新聞を読み終えた信康はルノワに訊ねた。


「つまりシーリアに勝った俺と勝負したいと言う事で、騎士共が兵舎に詰め掛けていると?」


「はい。ノブヤス様は今日も馬上槍試合(トーナメント)の練習をするだろうと思い、部隊の隊員達には居ないという事で帰って貰おうとしている所です」


「そうか・・・・・・いや、此処は相手をしてやるか。良い練習相手になるだろうからな」


「はい? これだけの人数をですか?」


 ルノワは信康の発言を聞いて、信じられない物を見る様な目で見ていた。


「ああ。だがそうは言っても、俺一人ではやる訳ではない。小遣い稼ぎも並行してやるぞ」


 ノブヤスの言葉の意味が分からないのか、ルノワは首を捻るばかりであった。


「・・・取り敢えず、リカルドを此処に呼んで来てくれないか?」


「分かりました」


 信康の言葉の意味は分からなかったが、取り敢えず言われた事をしようとリカルドを探しに行くルノワ。ルノワを見送ると、信康は手を叩いた。


「はいはい。ちょっと、こっちに注目っ」


 手を叩いた音で、騎士と隊員達は一瞬だけ静かになった。


 また騒がしくなる前に、信康は口を挟んだ。


「あんた達は、今朝出た朝刊を読んで来たんだよな?」


 信康は一応騎士達に、確認の為に訊ねた。


「勿論だ。我こそは」


「ああ、名乗り上げとか別にしなくて良いから。要約すると、俺と馬上槍試合(トーナメント)をしたい。それがあんた達の総意だな?」


 信康がそう言うと、騎士達は頷いた。


「では、勝負をしようじゃないか」


「おおっ。レヴァシュテイン卿は話が分かる御仁の様だっ」


 信康が勝負すると聞いて、騎士達から歓声が上がった。


「良ぉしっ。此処は年長者である私から」


「いやいや。馬上槍試合(トーナメント)の大会でも好成績を上げている、私が先であろう!」


 騎士達は自分が先にすると言って、勝手に口論を始めた。


「はい、其処でまた口論しないっ。其処でこちらから提案したい」


『提案?』


「ああ、そうだ。先ずは俺と試合をしたいと言う希望者は、大銀貨一枚を払って貰いたい」


「な、何故だ?!」


「こちらにも予定や都合と言うものがある。それを割いてまであんた達の相手をするのだから、それぐらい貰っても良いだろう。それに心配するな。もし俺に勝ったらあんた達が払った金は勝った奴等で山分け、一人勝ちなら全額そいつの物だ!」


 それを聞いて、騎士達は色めき立った。


「本当だろうな?」


「こんな事で嘘を吐いても、俺が後で困る事になるだけだ。それともう二つ、条件がある」


「・・・・・・聞こう」


「立会人はこちらで用意させる。それで良いか?」


 信康がそう言うと騎士達は思う事は無いのか、反論は無かった。


「次に、俺と戦う前に」


 信康がそう言っている途中で、ルノワがリカルドを連れて来た。


「お連れしました」


「ああ、御苦労。それでもう一つだが」


 信康はリカルドを指差した。


「まずは、こいつと試合をして貰う。それで勝った奴が俺と試合する。これが条件だ」


「お主と試合をしに来たのに何故、その者と先に試合をせねばならぬのだ?」


「何事にも前座は必要だろう。その条件が嫌だと言うのであれば、こちらは試合はしないからな」


 信康がそう言うので、騎士達はお互いの顔を見合わせた。


 そして全員を代表して、一人が前に出た。


「良いだろう。その条件で我等は試合をする」


「結構だ。じゃあ先ずは一人ずつ、大銀貨一枚を貰おうか」


 信康はマジョルコムを見つけて顎でしゃくると、マジョルコムは早速騎士達の所に行き大銀貨を一枚づつ貰って行く。


 五十名ほど居たので、大銀貨五十枚が集まった。


「では早速だがこれから、立会人を用意して来る。リカルド」


「何だい?」


 信康はリカルドを手招きして、自分の傍に来させる。そして、小声で話しだした。


「状況は分かっているな?」


 信康に尋ねられたリカルドは、首肯して信康に答えた。


「と言う訳で、先ずはお前が相手をしてくれ」


「何で僕が? 君と対戦したいと言ってるのだろう?」


「それはお前の馬上槍試合(トーナメント)の腕を、上げる為に決まってるだろうが。昔から言わないか? 百の訓練よりも、一度の実戦だって」


「う~ん、それは分かるけどこの人数は、ちょっと・・・」


「別に全員に勝たなくても良いんだよ。数人に勝ったら、問題ない」


 信康はそう言ってリカルドを説得するが、リカルドは苦い顔を隠せない。


「・・・言っとくが元々お前が勝手に相談も無しに、馬上槍試合(トーナメント)で兄貴と勝負すると言い出したんだぞ。それぐらいはしても良いと思わないか?」


「・・・・・・もしかしてさ、ノブヤス」


「何だ?」


「勝手に馬上槍試合(トーナメント)を了承した件、まだ怒っているのかい?」


 リカルドは恐る恐ると言った具合に、信康に訊ねた。


 すると信康はリカルドに対して、笑顔を浮かべた。


「ははは、・・・・・・当たり前に決まっているだろう」


「やっぱりっ!」


「ほれ。御託は良いからお前は部屋からあの馬上槍(ランス)を持って来い。それからあの騎士共を、昨日の練習場に連れて行け。俺は立会人を呼んで来るから」


「分かったよ。それで立会人は誰にするんだい?」


「ああ、ステラとオストルにして貰うかと思っている」


 信康が選定した立会人を聞いて、リカルドは納得した。


「それでは、現地集合な」


 信康達は行動を開始した。




 リカルドを別れた信康は、直ぐにカマリッデダル伯爵邸に向かう。


 信康がカマリッデダル伯爵邸に着くと、ステラとオストルは準備を整えていたのか玄関先で待っていた。シーリアとエイナは、宿泊せずに昨日の内に帰ったと聞いた。


「あれ? 今日は君だけ? リカルドは?」


「その事について、ちょっと報告がある」


 信康は事のあらましをステラ達に説明した。


「成程ね。それで私達に、立会人をして欲しいと言う事ね?」


「ああ、そうなんだ」


「分かったわ。じゃあ、行きましょうか」


 信康達は早速、昨日の練習場へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ