第339話
(な、何であの女が此処にっ!?)
信康は目を見開いて、眼前の事実に驚いていた。
まさか自分が偶然知り合った美女と、プヨ王宮の謁見の間で出会うとは誰も予想出来ないだろう。
信康が茫然としているとヴォノス王が玉座から立ち上がり、腰に差している剣を引き抜いた。儀礼的な意味合いが強いのか、その剣は煌びやかな貴金属で覆われて様々な宝石を付けられた豪奢な装飾が施されていた。そしてその宝剣を、ルティシアに渡した。
「光の法の神カプロラリスの恩寵と御加護を」
そう言ってルティシアは、その宝剣の柄の部分に口付けをした。そして隣に居るクラウディアに、宝剣を渡した。
「夜と闇の神エレボニアンの恩寵と御加護を」
そう言ってルティシアと同様に柄の部分に口付けをして、隣に居るフラムヴェルに渡した。
「火と戦の神アレウォールスの恩寵と御加護を」
ルティシア達と同様に宝剣の柄に口付けをした。そしてその宝剣を、マルファに渡した。
「海と水の神ヌエーギセリドアの恩寵と御加護を」
マルファも宝剣の柄に口付けした。そしてその宝剣を、信康が抱いた女性に渡した。
「空と風の神ウラモイトールンの恩寵と御加護を」
その美女も続けて宝剣の柄に口付けした。そしてその美女は、信康が唯一見知らぬ美女に宝剣を渡した。
「大地と緑の神マーフィアの恩寵と御加護を」
その見知らぬ美女は宝剣の柄に口付けして、宝剣を横にして両手で持った。
「新たに騎士になる者達に、六大神の祝福があらん事を」
そう言ってからその美女は宝剣を、玉座に座るヴォノス王の前に来て跪き宝剣を掲げた。
ヴォノス王はその宝剣を手に取った。
「ノブヤス並びにリカルド・シーザリオン。両名とも此処に」
ヴォノス王がそう言うので、信康達は立ち上がり石段の所まで歩く。
信康達が歩くのを見て、ルティシア達は脇に避けた。
信康が横を通る際、目を動かしてルティシア達を見る。
ルティシア達は笑顔で頷いてくれた。
そして信康が抱いた美女に見ると、その女性はウィンクをして来た。
(ルティシア達が聖女って事だから、後の二人も聖女と言う事か)
そう考えながら歩ていると、石段の傍まで来たので信康達はまた跪いた。
二人が跪いたので、ヴォノス王は持っている宝剣の刃をリカルドの肩に乗せた。
「汝に聖騎士の称号を与える。それにより、フォンの称号も与えられる。リカルド・フォン・シーザリオンよ。今後とも我が国に忠義を尽くせ」
「ははぁっ」
リカルドは頭を下げて答えた。
そして次にその宝剣は、信康の肩に乗せられた。
「汝に聖騎士の称号と新しき名を与える。汝の名はレヴァシュティン。これより汝はノブヤス・フォン・レヴァシュティンと名乗るが良い」
「はっ。謹んで拝命致します」
信康がそう答えると、ヴォノス王は宝剣を収めた。
それに見計らって、ルティシア達が拍手し出した。
それに釣られてか、広場に居る者達が徐々に拍手して来た。
やがて拍手が収まると、ヴォノス王の傍に居る宮臣が口を開いた。
「これにて叙勲の儀を終わりとする。皆、新しく聖騎士に叙されし者達に盛大なる拍手を」
と言って拍手したので、周りの者達も再び拍手をした。




