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信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

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第333話

「では、改めまして。私はルティシア・ドゥ・グダルヌジャンと申します。そしてこちらに居るのが次女のアンヌエット、そして末妹のマリアになります」


 ルティシアに紹介されたアンヌエットとマリアは、信康達に会釈した。


「姉妹だけあって、三人共顔立ちが似ていますね」


 そう言いつつリカルドは、ヘルムートと共にアンヌエットとマリアに頭を下げた。


「あのっ! いきなりなんですけどっ!・・・ノブヤスに聞きたい事があるんですけど、良いですかっ!?」


 マリアは何故か興奮状態で、信康に何か訊き出そうとしていた。信康は困惑しつつも、マリアに了承の返事をした。


「お、おう。良く分からんが、俺に答えられる事なら何でも答えるぞ」


「ではお聞きしたいんですけど・・・・・・アリーちゃんが言うオニイチャンさんは、ノブヤスさんの事ですよね?!」


 信康はマリアが言っている事を聞いて、少し驚いた様子を見せた。


「アリー? オニイチャン?・・・マリアって、アリーの友達だったりするのか?」


「はいっ! 親友だと思っていますっ。私、プヨ王立総合学園の初等部三年生でして・・・一年生の時から、アリーちゃんとは仲良くしているんです」


 マリアは自慢気にアリーナとの交友関係を話すと、信康も自然と笑みを浮かべた。


「そうか。だったら今後とも、アリーと仲良くしてやってくれ・・・因みに聞くが、アリーって良く俺の話をしたりするのか?」


「はいっ。と言うかノブヤスさんの話ばっかりしてます。『強くて格好良くて、とっても頼りになる素敵なオニイチャン』ってこの前も言ってましたよ」


「・・・・・・」


 アリーナが口にしている信康の評価を聞いて、信康は思わず照れそうになった。


「えっと・・・何か、悪いな。俺の話なんか聞かされても、やっぱり迷惑だろう?」


「いえっ、そんな事無いですっ!・・・と言うかノブヤスさんと仲良しだって事が、寧ろ羨ましがられている位で・・・少なくとも初等部の方では、ノブヤスさんの活躍を聞いて憧れている子は一杯居ますよ」


「・・・・・・」


 思わぬ場所でそう評価されている事を知って、信康は僅かばかり照れる様子を見せた。


「ふん。あんた、モッテモテじゃない。本当に何時か刺されるわよ」


「そうなったらそうなったらだ。それにそうならないようにしている心算だ」


「嘘吐け、そんな事していないだろう!」


 ヘルムートが指摘して来たので、信康は話を誤魔化す事にした。


「それはそれとして、お前等は誰の服を買いに来たんだ?」


 信康がルティシア達に訊ねると、アンヌエットが答えた。


「そんなの、マリアの服に決まっているでしょう。見てよ」


 アンヌエットがそう言うので、信康達はマリアの服を見る。


 長女の姉に似たような白を基調とした子供服。下はダボダボの七分丈の黒のパンツを穿いていた。


「う~ん。これは」


「昔、娘が小さかった頃、こんな格好をしていたな」


 リカルドはどう言葉にしようか迷い、ヘルムートはマリアの格好を見てシェリルズの昔の姿を思い出していた。


「・・・改めて見ると、男の子みたいな格好だな」


 信康は率直に言った。


「ええ、そうでしょうか?」


「そうよっ!!」


 ルティシアが変でしょうと言うと、アンヌエットがその通りとばかりに頷く。


「こんな男の子が着る様な恰好をして、歩き回ってみなさいよ。本当に男の子と間違われるかもしれないでしょう!! 少なくとも女の子扱いはされないわよっ!!」


「ですけどマリアはそう言う服が好みなんですから、此処はそう言う服を買った方が良いと思いますけど」


「あたしも別に個人のファッションについて。とやかく言いたくないのよ。だけど一着だけでもちゃんとした、女の子みたいな服を持ちなさいよ。じゃなかったら、女の子扱いされないわよ」


「むぅ。私も女の子ですから、流石に女の子扱いされたいです」


「だったらっ」


 アンヌエットはルティシアとマリアが持っている服をビシッと指差した。


「そんな男が着るような服は却下よ。選び直し!!」


 アンヌエットが力強く言うと、二人はしょんぼりとしながら持ってきた服を戻しに行った。


 そんな微笑ましい姉妹の光景を見て、信康は笑いだした。


「はは、何だ。仲良くしているじゃないか。てっきり、姉妹仲は悪いのかと心配したぞ」


「別にそんな事ないわよ。ただ、二人共、普段からあたしに必要以上に構うから鬱陶しいだけよ」


「そうか。それは良かったな」


 信康は微笑みながらアンヌエットの頭を撫でようとしたが、それを察知したのかアンヌエットは信康の手を振り払った。


「ふんっ」


 アンヌエットは顔をプイっと背けた。


 そんな態度を取るアンヌエットに、信康は肩を竦めるしかなかった。


「きゃあああああああっ!?」


 すると其処へ店舗外から、絹を裂く様な女性の悲鳴が聞こえて来た。

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