第325話
信康達は準備を終えたので、プヨ王宮へと向かった。
ケル地区の中心部。
其処に、プヨ王宮がある。
信康達は、そのプヨ王宮の外観を眺めた。
「おお。こんなに近くで見るのは、流石に初めてだな」
「そうだね。しかし此処まで間近で見れるなんて、子供の頃は思ってもいなかったよ」
信康とリカルドはプヨ王宮を見上げながら、プヨ王宮の大きさと荘厳さに圧倒されていた。
傍から見ると田舎から出て来たばかりの、おのぼりさんにしか見えない。
「こら、お前等。何時までも外観を見てないで、早く王宮内に入るぞ」
「はいはい」
「分かりました」
信康はもうちょっと城の外観を見ていたかったのか些か不満げな声で、リカルドは身なりを正しながら答えた。
ヘルムートは二人を連れて、プヨ王宮の出入口である宮門と呼ばれる門の前まで来た。
プヨ王宮の宮門の前には、近衛師団の団員が立っていた。
団員達はやってくるヘルムート達を見るなり、胡散臭そうな目で見ている。
「王宮儀典局からの書状により、カルナップ・ヘルムート以下二名、参上致しました」
そう言って、持ってきた書状を団員に渡すヘルムート。
その書状を手に取って中身を目に通す団員達。
「・・・・・・確認した。ただいまより宮門を開けるので、暫しお待ち下さい」
団員がそう言って、隣に居る同僚に宮門を開ける合図を送った。
少しすると、ギギギッという音を立てて宮門が開いた。人が並んで入れる位に隙間だけ、宮門が開けられた。
(防衛機能維持の為にも、小さい扉とか作る訳には行かないからなぁ。一々こうして開けないといけないのだから、本当に面倒だな)
信康は内心でそう悪態を吐きつつも、信康達はプヨ王宮内へと入って行った。
暫くすると侍従が一人やって来て、信康達は待合室の一室まで通された。
その待合室は賓客用みたいで普通の待合室とは違い、椅子とテーブルだけでは無く豪華な調度品が並べられていた。
重厚だが温かみがある木製の棚。壁には豪華な装飾品が並べられていた。
「な、なんか、場違いな所に来たな」
リカルドは椅子に座らず、部屋の中をウロウロしていた。
それはまるで、牢の中に入れられた獣みたいだ。
「リカルド、少しは落ち着いたらどうなんだ?」
信康は平然と椅子に座り、腕を組んでジッとしていた。
「そうだな。少しは落ち着いたらどうだ?」
ヘルムートも椅子に座りジッとしているように見えたが、この部屋は落ち着けないのか膝を揺すっていた。
信康はそれを見て、苦笑したが指摘はしなかった。
コンコン。
待合室の扉から、ノック音が聞こえて来た。
そのノック音を聞いて、リカルドは飛び上がらんばかりに驚いた。
信康達はそれを見て笑った。
「どうぞ」
信康が部屋に入る様に促すと、入って来たのは一人の侍女であった。
「失礼します。こちらにノブヤス様という方が居られる筈ですが?」
「俺だが」
侍女が目で探していたので、信康が自分を指差した。
「ある御方が御呼びです。付いて頂けますか?」
「そのある御方とは?」
「言わねば分かりませんか?」
侍女はそう言うと、信康は苦笑した。
「承知致した。直ぐに伺おう」
信康はヘルムート達に一言言ってから、待合室を退室した。
「案内を頼むぞ」
「えぇ、こちらへ」
侍女が手で付いて来る様に合図して来たので、信康はその後に付いて行った。




