第299話
プヨ歴V二十七年六月十七日。朝。
信康は昨日渡した書類を受け取る為に、ブルスティ達の下へ向かっていた。
「昨日は適当に空いている部屋に押し込んだが、大丈夫だっただろうか?」
今更ながら、そう思う信康。
そして信康はブルスティ達が居る部屋の前まで来た。
礼儀として信康は扉を叩いた。
「へい、誰でしょうか?」
「信康だが、今良いか?」
「中隊長ですか? 直ぐに開けますぜっ」
ブルスティが扉を開けた。
「ノブヤス中隊長、おはようございます」
「おはようさん。早速で悪いが、書類はもう書いたのか?」
「へい。確かに入隊希望者、全員の分が用意しましたぜ」
ブルスティは部屋に信康を通した。
部屋の中にはブルスティの妻であるエリナに、一緒に行動していた小鬼族達も居た。
「よし、丁度良い。お前等、書類を寄越せ」
信康がそう言うと、ブルスティが代表して書類を信康に手渡した。信康が書類を確認すると確かにブルスティや小鬼族達だけでなく、室内には居ない他の森人族や豚鬼族に小鬼族達の分の書類もあった。
信康は小鬼族達の書類を見るなり、目が僅かに見開かせていた。
「お前等、皆十歳なんだな」
「繁殖力が強い事と成長が速いのが、小鬼族の特徴ですからね。そうだよな、アーウノ?」
「ハイ、ソノ通リデス」
ブルスティにそう聞かれた小鬼族の一人である、アーウノが答えると他の小鬼族達も次々と頷いた。
「一応言っておくが、庇いきれない揉め事を起こすなよ?」
「揉め事ですか? どんな?」
「そうだな。女の傭兵を強姦とか?」
「ぶはっはは、ノブヤス中隊長。流石にこれから世話になる部隊の方々に迷惑を掛ける程、溜まってはいませんよ」
ブルスティがそう笑い飛ばすと、アーウノ達も同意とばかりに頷く。
「そうか。なら、良い」
信康がそう言って、部屋を出て行こうとしたら。
「ああ、そうだ。お前の奥さんのエリナの件も、ついでにヘルムート総隊長に確認しておく。もし駄目だったら、この兵舎の食堂で住み込みで働ける様にしてやるから」
「ありがとうごぜえます」
ブルスティが頭を下げたのを見て、信康は手をヒラヒラと振りながら部屋を後にした。
ブルスティ達の部屋を出た信康は直ぐにヘルムートの部屋に行った。
部屋の前に着き、ノックをしたが返答はなかった。
居るのかどうか確認の為に、ドアノブを回したら扉は施錠されておらず開いたので部屋の中を見た。
部屋には誰も居なかった。
机の上には書類も無かったので、机の上に置いた。
そして信康はヘルムートの部屋を出て、食堂へと向かった。
今の時間は午前中で朝食時であった。
なので食堂には食事をしている隊員がちらほら散見している。
信康は食堂を見渡した。
その中に見慣れた赤髪の美女を見つけた。
「おお、丁度良かった。ヴェルーガ」
「ハイハイ。って何だ、ノブヤスか。何か用?」
「ああ、ちょっと頼みがあるんだ?」
「頼み? どんな?」
信康はブルスティ達の事を簡単に教えた。
「ふむふむ。つまり、そのブルスティさんの奥さんに食堂の仕事をさせて欲しいってこと?」
「そうだ。そうしたら、ブルスとも頻繁に会えるし、この食堂で働いている者には住み込みとして専用の部屋を与えられるだろ? 暮らすのも便利だと思ってな」
「ああ、そう言えばそうだね。あたしは使ってないけど」
「お前は娘が居るから、無理だろう」
信康がそう指摘すると、確かにそうだとヴェルーガは笑った。
「もし駄目だったら、その時はよろしく頼む」
「任せてっ。お姉さんに任せなさいっ」
ヴェルーガは胸を叩いた。
その際、胸がブルンと揺れた。
信康はガッツリとその胸が揺れるのを見た。
「じゃあ、後は任せ」
「ああ、居た居た。食堂に居たのね」
「ノブヤス副隊長。探しましたよ」
そんな声が聞こえたので信康が振り返ると、其処にはライナとサンドラの二人が居た。




