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信康放浪記  作者: 雪国竜
第二章

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第255話

火炎雷弾(ファイヤ・ボルト)


 オリガは椅子に座ったままで、魔法を唱える。


 詠唱破棄していながら、大きな炎の球が浮かび電気が走る。


 そして火炎雷弾(ファイヤ・ボルト)が二つ、それぞれ信康とフィリアに向かって来る。


「へぇ。流石にやるな」


「ふんっ」


 信康とフィリアは冷静に、それぞれの得物を振るう。すると飛んで来た火炎雷弾(ファイヤ・ボルト)を切り払った。二人に斬られた火炎雷弾(ファイヤ・ボルト)は、そのままバチバチと音を立てながら消滅した。


「ちっ・・・フィリア将軍はともかく、東洋人。貴様、何処からその得物を持って来た?」


 オリガは自分の魔法が簡単に斬り払われた事に苛立ちを覚えながら、信康と信康が持っている鬼鎧の魔剣オーガアーマーズ・ソードを睨み付けた。


「ふっ。馬鹿正直に言うと思うか?」


 信康はオリガの苛立った表情を見て機嫌を良さそうにしつつ、馬鹿にした様子で回答を拒否した。そんな信康の態度を見て、オリガは再び舌打ちをする。


「ちっ。ならば仕方が無い。私も本気を出すとしよう」


 オリガは椅子から立ち上がると、全身に魔力を纏わせる。そして足元に、魔法陣を出現させた。


「出でよ。我と血の盟約を交わせし者共よ。今こそ盟約に従い、我が元に来たれ―――竜牙兵召喚サモン・ドラゴントゥースウォーリアー


 オリガは召喚魔法を詠唱し、竜牙兵ドラゴントゥース・ウォーリアーと呼ばれる武装した骸骨兵士を十体召喚した。


「召喚魔法か。そう言えば俺が屋内闘技場(コロシアム)で戦う羽目になった猛毒獅子(マンティコア)も、召喚魔法で召喚していたな」


「・・・まさかその程度の数で、私達に勝てると思っていないだろうな?」


 信康が懐かしそうに回想しながらそう言うと、フィリアは挑発の心算でオリガにそう言った。


「それこそまさかだ。其処の東洋人はともかく、当時の名将として名を馳せた貴女を相手にこの程度の質量で対抗出来るなんて思わない・・・故に、こうするのだ」


 オリガはそう言うと、両手を合わせて三角の形を作る。


「血の盟約者共よ。我が魔力を喰らい、己が力とせよ―――存在進化(バージョン・アップ)


 オリガが詠唱すると三角の中心に黒色の魔力が集まり、竜牙兵ドラゴントゥース・ウォーリアー達はたちまちオリガの魔力で闇に包まれて竜牙兵達の姿が見えなくなった。


 そして竜牙兵ドラゴントゥース・ウォーリアー達を覆っていた黒色の魔力が晴れると、当初は剣と円盾しか持っていなかった姿が打って変わって変貌していた。


 オリガが召喚した竜牙兵ドラゴントゥース・ウォーリアー達は、黒色の角付きの兜と全身板金鎧フルプレート・アーマーを装着し更に黒い外套で覆っていた。


 黒穴の空洞と化していた眼窩には、赤い炎を妖しく揺らめいている。推測するに瞳の役割を、果たしていると思われた。


 しかし装備以上に竜牙兵ドラゴントゥース・ウォーリアー達に、大きく変化した部分があった。


 最初は通常の人型生物通り腕が二本だったのだが、現在は背中から更に二本新たに腕が生えて合計で四本の多腕になっていた。


 手に持っていた得物も、増加していた。最初から所持していた剣と円盾はそのままだが、背中の右腕には斧槍(ハルバード)を所持し、背中の左腕にはボロボロの杖を所持していた。


「如何かな? 将軍。これが竜牙兵の上位互換、闇の竜牙騎士ダーク・ドラゴントゥースナイツだ」


 オリガは自慢気に闇の竜牙騎士ダーク・ドラゴントゥースナイツをフィリアに、その豊満な胸を張りながら紹介した。


「召喚した魔物を自分の魔力で、存在進化(バージョン・アップ)させるとは・・・」


存在進化(バージョン・アップ)って、難しい魔法だと俺も知り合いの魔女族(ウィッチ)から聞いた事があるな」


 信康とフィリアは、オリガがやって見せた事に驚いていた。


 何故ならオリガが詠唱した存在進化(バージョン・アップ)と言う魔法は、召喚魔法の中でも上位に位置する魔法だったからだ。


「あいつ、何て言ってたかな?・・・確か中途半端な魔力だと魔物は進化出来なくて、仮に成功しても強くなった魔物が狂暴になって暴走する可能性があるとか無いとか」


「良く知っているな、ノブヤス。その認識で、大凡は正しい。オリガがああしてあの闇の竜牙騎士ダーク・ドラゴントゥースナイツとやらを乱れ無く統率しているのを見れば、存在進化(バージョン・アップ)を使い熟しているのが良く分かる」


 信康が存在進化(バージョンアップ)の特性を口にすると、フィリアはその知識量に感嘆しながらそう答えた。


「オリガよ。その存在進化(バージョン・アップ)も、師である魔女(メイガス)から教わった魔法の一つか?」


「御明察だ。存在進化(バージョン・アップ)は我が師から教えて頂いた魔法(もの)。何度も魔物を暴走させてしまい、会得するのに苦労したわ」


 オリガは懐かしそうに回想しながら、フィリアの質問に答えた。


 そんなオリガを他所に、フィリアは横移動しながら信康に接近する。


「作戦変更だ。ノブヤス。私がオリガの闇の竜牙騎士ダーク・ドラゴントゥースナイツ共の相手をする。その間に貴方が、オリガを倒せ。一人(・・)で出来そうか?」


 フィリアはそう信康に、オリガを倒す方法を提案して来た。しかしフィリアは信康に近付いておきながら、その声量からオリガに丸聞こえであった。


「抜かせ。お前は俺の子守でもしている心算か? 俺一人(・・)でも問題無いわ」


 信康が不敵な笑みを浮かべながらそう言うと、フィリアも小さく微笑を浮かべた。


「では、任せるとしよう」


 フィリアはそう言った後、自分が現在居る位置から一歩前に出た。


 そして左腕を付き出して左手の掌を向けると、その先から魔法陣が出現した。


 フィリアの魔法陣が赤色だったのに対して、フィリアの魔法陣は黒色だった。


「来たれ。我と血の盟約を交わせし者共よ。今こそ盟約に従い、我が元に来たれ―――不死の騎士団召喚サモン・イモータルリタナイツ


 フィリアはオリガと同じ詠唱をして召喚魔法を唱えると、全身黒尽くめの黒騎士が八体出現した。


 黒騎士達は黒色のフルフェイスの兜で頭を覆い、全身を黒色の全身板金鎧フルプレート・アーマーを着用している。左腕には大盾を装備していた。


 その所為で黒騎士達がどの様な内面をしているか不明だが、唯一露出している目のある部分からは青い炎が揺らめいていた。


「総員っ! 抜剣っ!!」


 フィリアがそう号令を掛けると、黒騎士達は腰に携えていた長剣を抜剣した。


「掛かれっ!」


 フィリアが続けて号令を下すと、フィリアと共に黒騎士達は鉄靴を鳴らしながら駆け出した。


 フィリア達が狙うのは当然、オリガが召喚した闇の竜牙騎士ダーク・ドラゴントゥースナイツ達だ。


「迎え撃てっ!」


 オリガが闇の竜牙騎士ダーク・ドラゴントゥースナイツ達に命じると、闇の竜牙騎士ダーク・ドラゴントゥースナイツ達もフィリア達を迎え撃つべく駆け出した。


 途端に室内は、激しい剣戟音が響き始める。


 フィリアが召喚した黒騎士達は八体なので、フィリアは一人で闇の竜牙騎士ダーク・ドラゴントゥースナイツを二体相手にすると思われた。


 オリガは闇の竜牙騎士ダーク・ドラゴントゥースナイツ達を支援や援護する事無く、信康と向き合った。


「さて、これで一人抑えた・・・待たせて悪かった。しかし寿命が僅かばかり延びたのだから、良しとして貰おう」


「寿命が延びていたのは、俺じゃなくてお前だと思うがな?」


 オリガの挑発に対して、信康はそう言って挑発し返した。


「ふっ。私の実力の一端を見ておきながら、まだそんな憎まれ口を叩けるとはな。その胆力は誉めてやろう。だがな・・・」


 オリガは言いたい事を言い終わると、最初に詠唱していた火炎雷弾(ファイヤ・ボルト)を自分の周囲に十個浮かばせた。


「さぁ、防いで見せろ。貴様に出来ればの話だがな」


 オリガはそう言うと順番に火炎雷弾(ファイヤ・ボルト)を、信康目掛けて放って来た。


「嘗めるなよ」


 しかし信康は焦る事無く、飛んで来た十個ある全ての火炎雷弾(ファイヤ・ボルト)鬼鎧の魔剣オーガアーマーズ・ソードで斬り払った。


「中々やるな。安心したぞ。直ぐに終わっては詰まらんと、心配していたのだ」


「そりゃどうも」


 オリガは嬉しそうにそう言うと、魅惑的な笑みを浮かべた。


 信康はその笑顔に惑わされる事無く、鬼鎧の魔剣オーガアーマーズ・ソードを構えた。


 フィリア達と闇の竜牙騎士ダーク・ドラゴントゥースナイツ達の戦いを他所に、信康とオリガの戦いも始まった。

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