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信康放浪記  作者: 雪国竜
第二章

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第242話

 近衛師団傘下部隊の一つである、傭兵部隊の兵舎。


 其処にある兵舎の会議室の一室で、ある集団が集まっていた。


「これがザボニーが行なっているだろう、数々の不正の証拠か。まさかこれだけあるとはなぁ」


 ヘルムートが集められた、山となっている書類に視線を奪われながら唸っていた。


 信康が諜報員容疑で逮捕されてエルドラズ島大監獄に投獄されてから、あっという間に年が越えて既に新年も過ぎてしまって間も無く春を迎えようとしていた。


 その間に傭兵部隊の隊員達は、信康の冤罪を晴らそうと東奔西走していた。


 厳密に言えば信康が指揮していた麾下の第四小隊の小隊員達が、自分の時間を返上してまで信康の為に尽力していた。


 尤も第四小隊も全小隊員では無く実際に動いたのは、ルノワを筆頭に捜査や斥候に長けている小隊員達だけだ。


 ルノワ達以外の小隊員は、信康が帰還した時に今まで以上に役に立てる様に練度向上の為に日々訓練に励んでいる。そしてそのルノワ達の為に、信康と親しくしているプヨ王国軍内外を問わず複数の協力者達(・・・・)も呼応するみたいに動いていた。


 ザボニーとその関係者に悟られない様に水面下で捜査を続けた成果が現在、傭兵部隊の兵舎の会議室にある書類の山であった。


 ザボニーが行った着服や捏造や汚職を含む、諸々の犯罪行為の証拠が全てこの書類に書かれていた。


「随分とやらかしてくれています。お陰で証拠には困りませんでしたが、捜査する事が多くて大変でした」


「全くだな。御苦労だったな・・・しかしザボニーと関わった関係者が、平民層からは富豪に商会関係者。貴族層だと大物貴族の官僚や役人、そして軍高官ばかりだ。しかしこれ等の証拠が捏造だと言われん様に、更に裏付け捜査をする必要がある。この量を考えると、先が思いやられるな・・・」


 信康の代理で会議に出席しているルノワがそう言うと、同じく代理として出席しているケンプファが黙って首肯した。


 それからルノワの溜息と共に口にした愚痴を聞いて、ロペールも同意するみたいに黙って首肯した。


「・・・その話はまだ後で良かろう・・・これだけの証拠を入手出来たのも、傭兵部隊の尽力だけでなく貴女方(・・・)の御協力あってこそだ。遅くなったが、心より御礼申し上げる」


 ロペールはそう言うと、席から立ち上がって礼を述べた。


 ロペールが礼を述べると、ヘルムートも頭を下げて感謝の意を示した。ロペール達が感謝を述べたのは、ルノワ達以外の協力者達だった。


「いえ、我が商会がした事など大した事はありませんよ。ただザボニー氏が懇意にしている商会や商業関係者を、調べて纏めて来ただけですからね。何より私の娘がノブヤス君の事を心配しているので、彼に着せられた冤罪が晴らせるものならと微力であってもお力添えしたかっただけですよ」


 そう言って微笑を浮かべたのはプヨ王国でも五指に入る大商会である、ドローレス商会の会頭を務めるハンバードだった。


「それを言うならば、我が警備部隊も大した事はしとらんぞ。全く儂にもっと力と権限があれば、今からでもあのザボニー不届き者の屋敷に乗り込んでこの手で検挙してやるんじゃがなっ!」


 ハンバードの謙虚な発言を聞いて憤慨した様子を見せながら、荒ぶる態度をしていたのは王都アンシの治安維持を担う警備部隊総隊長のビュッコックだった。


「あら? そう御自分を卑下なさる事はありませんわよ。ノブヤスを救う為に立ち上がっているのですから、堂々と胸を張って下さいな」


 そう言ってビュッコック達を励ましたのは、ルベリロイド子爵家嫡子のマリーザだった。


「・・・ですがわたくしが一番、ノブヤスを助ける為に力を尽くした。そうわたくしは自負しておりますわ」


 マリーザはそう言って、少しばかり両頬を赤く染めてから堂々とその豊かな胸を張った。


 ルベリロイド子爵邸を訪問して来たルノワから信康が冤罪で逮捕された事を知って以来、マリーザは信康を救出する為に実家の権力や人脈、財力を惜しみ無く駆使して動いていた。


 されど信康の救出を大義名分に学業を疎かにする事無く、プヨ王立総合学園では変わらず成績を上位に維持していた。


 そんなマリーザを、隣で控えているダリアは誇らし気にその豊満な胸を張っていた。


 余談だがこのダリアもマリーザの執事として敬愛する主人の顔に泥を塗らぬ様に執事業の傍らで勉学に励んでおり、その努力のお陰でプヨ王立総合学園の上位成績者の一人になっている。


「まぁ其処のお嬢様の為に、私はこき使われたのだけれどね」


 そう言いながら煙管で煙草を吸い、一息吐いて煙草の煙を吐いて会議室の匂いを煙草臭くする女性が居た。その女性とは、千夜楼を束ねる女首領のアニシュザードだった。


千夜楼(貴女方)の働きには、勿論感謝してますわ。我がルベリロイド子爵家だけでは、倍以上の時間が掛かった事でしょう。だからこそ依頼主(クライアント)であるわたくしは、貴女に相応の報酬を支払った筈ですのよ。今になって何か、異議でも唱えたいのかしら?」


「まさか。報酬に文句なんて、勿論一切無いわ・・・ただ私の予想と結末が、随分と違ったと思っただけだから」


「?」


 アニシュザードが口にした言葉を聞いて、マリーザは意味が理解出来ず首を傾げるだけだった。そんなマリーザを他所に、アニシュザードはマリーザがダリアを連れて千夜楼の本拠地に直接乗り込んで来た日を思い出しながら苦笑していた。


『千夜楼貴女方の力を、わたくしの為にお貸しなさいっ! 期待通りの成果をお持ちしてくれましたら、報酬に糸目は付けませんわよっ!』


(・・・・・・シエラ姉さんからノブヤスが投獄された事を聞いた時は、私への借りを返して貰えないまま死なれても癪だ・・・としか思っていなかった所を、このお嬢さんが取引を持ち掛けて来たのよね)


 アニシュザードは其処で回想を区切ると、チラッとマリーザに視線を移した。


(ノブヤスの冤罪を晴らすの一肌脱いで欲しいと姉さんにも頼まれたし、更に借りをもう一つ押し付けられると思っていたんだけど・・・今回はこの貴族のお嬢さんに免じて、借りの加算はしないでおいてあげるわ。お蔭でルベリロイド財閥とドローレス商会との伝手が出来たものね)


 エルドラズ島大監獄に投獄されているであろう信康を思い浮かべながら、アニシュザードは微笑んだ。


「ふん。まさか裏社会に引き籠もって普段は表に出てこない、千夜楼の女狐までもが一人の男の為に動くとはなっ」


 其処へ侮蔑の毒を含んだ発言が、会議室の中で飛んで来た。その侮蔑の毒を含んだ発言は明らかにアニシュザードに向かって飛んで来たものだが、アニシュザードは平然とした様子でその発言元に視線を向けて微笑んで見せた。


「ふふっ。そうね。元を正せば特警の貴女達が真っ当に職務を果たしていれば、誰にも迷惑は掛からなかったのだけれどねぇ・・・そうは思わない? 『氷女の懐刀』さん」


「何だとっ。それは特警我々を侮辱しているのか、貴様っ!」


 『氷女の懐刀』とアニシュザードに呼ばれた人物は激昂すると、その隣に居た人物が手を上げてそれを制止した。


「止めなさい、ルオナ」


「しかし大佐っ・・・ちっ」


 ルオナと改めて呼ばれた女性は、舌打ちしながらもその場に留まった。


 アニシュザードが茶化す様に皮肉を口にした相手は、近衛師団傘下の部隊の一つである特殊警務部隊の総隊長であるリエラと副官のルオナだったのだ。


 ルオナを制止させた後に、着席していたリエラは席から立ち上がった。


「非難は甘んじて受けるわ。幾ら上層部の命令とは言え、無実の人間を逮捕してしまったのだもの。ヘルムート中佐。あの時は申し訳ありませんでした」


 リエラはそう言うと、その場で頭を下げて謝罪の意を示した。


 すると間も無くして、椅子が動く音が聞こえた。


「リエラ大佐。それを仰るなら同じ監察官としてザボニーの如き不埒な人物を野放している事を、私も恥じなければなりません・・・ヘルムート中佐。不肖の同僚が多大な迷惑を御掛けしている事を、私からも心よりお詫び申し上げます」


 ルオナに続けてそう言って詫びを口にしたのは、先のパリストーレ平原の戦いで信康及び麾下の第四小隊の監察官を務めたカラネロリーだった。


「待ってくれ。お二人共からのお気持ちはありがたいが、謝罪など無用だ。俺もノブヤスが逮捕された時は動揺して居たし・・・そもそもリエラ大佐はノブヤスが逮捕されてから直ぐに特警独自でザボニーの捜査を始めてくれたし、カラネロリー中佐も進んで協力して頂いた。寧ろビュッコック総隊長達と同様に、礼を言わせて貰いたい」


 ヘルムートはそう言って、謝罪するリエラとカラネロリーに礼を述べて頭を下げた。


「謝罪し合うのは、其処までにしよう。此処に集まった我々は、無実の仲間を解放する為に集まった同志なのだからな」


リエラ達に割り込む様にロペールがそう言うと、会議室に居る何人かが頷く様に首肯した。


「尤も、全員(・・)が此処に居る訳では無いがな・・・あの方や他の者達(・・・・・・・・)にも、大いに力になって貰った」


 ロペールはそう言った後に、ある紙を取り出して会議室の机の上に置いた。それは王都アンシで販売されている、一冊の新聞であった。


『プヨ歴V二十六年九月二日午前。近衛師団傘下の傭兵部隊の兵舎でこの日、ノブヤス中尉(十代後半?)がカロキヤに属する諜報員の容疑で逮捕され、同じく近衛師団傘下の特殊警務部隊によって連行された。そして諜報員容疑で死刑判決を受けて、エルドラズ島大監獄に投獄された。これだけならば通常の事件に過ぎないのだが、今回は大いに違った。


 このノブヤス中尉の逮捕を受けて所属先の傭兵部隊は勿論、第三騎士団を除く全騎士団及び鋼鉄槍兵団。王都アンシの治安維持を担う警備部隊から猛烈な抗議が殺到したのである。更にアレウォールス教団を筆頭とした六大神の各教団も、ノブヤス中尉の逮捕を非難。そして第四王女アリスフィール殿下も『我がプヨの英雄が覚えの無い罪で投獄された事に、心を痛めております』と表明。


 ノブヤス中尉逮捕に踏み切ったプヨ王国軍上層部は、蜂の巣を突いたが如く極度の混乱状態に陥っているそうだ。


 此処で騒動の渦中に居るノブヤス中尉に、焦点を当てたいと思う。


 弊社の調査によるとノブヤス中尉は、今年の四月にプヨ王国へ入国して来た東洋人の傭兵だと言う。若輩ながらも頭が相当に切れるらしくその頭脳明晰さは、城郭都市アグレブを奪取したカロキヤ軍の更なる侵略を阻止した先のパリストーレ平原の会戦において遺憾無く発揮された。それは起死回生の計略を献策して、カロキヤ軍の総大将を討ち取る働きに貢献をしたと言うのだ。これは弊社の綿密な調査の結果及び、鋼鉄槍兵団兵団長のアルディラ・フォル・レダイム兵団長からの証言により判明している。


 更にカロキヤに雇用された欧州三強と名高い大傭兵団である真紅騎士団クリムゾン・ナイツの中核を担う、一騎当千の実力者揃いと言われている十三騎将と呼ばれる幹部も一騎打ちで討ち取る程の実力を持つと言う。そして先月に同じくパリストーレ平原で行われたカロキヤ軍との戦争においても、カロキヤ軍に大打撃を与える献策を行いまた自らの手でカロキヤ軍総大将と副将を討ち取ったそうだ。


 この赫々たる戦績を見せ付けられてはノブヤス中尉をカロキヤの諜報員と疑うのは、明らかに荒唐無稽と言わざるを得なかった。もしノブヤス中尉がカロキヤの諜報員だと言うなら、カロキヤとの戦争で消極的な姿勢は見せる筈だろう。この時点で諜報員容疑を抱く事すら無理がある。


 此処で話が一つ変わるが、プヨ王国の歴史を百年以上前まで遡ると歴史に少しでも精通している人は、このノブヤス中尉の騒動からある二つの事件が連想出来るだろう。


 その事件とは、嘗てのプヨ王国軍で起こった悲劇的な事件だ。


 先ず一つ目の事件は当時プヨの大将軍だったオネスン・フォル・シリヴァスが、時の権力者に疎まれた事で戦場で暗殺された事件だ。そしてもう一つはオネスンの愛弟子で第三騎士団団長だったフィリア・フォン・ロレキリーシズギャンが、同じく時の権力者達に疎まれて身に覚えの無い敗戦の戦犯として処刑された事件だ。


 弊社としては歴史を繰り返す様な愚行は犯さない事を祈りつつ、この新進気鋭の若き英雄の今後の道筋も追い続けたいと思う』


「流石に新聞屋(ブンヤ)に情報を流したのは、やり過ぎだと思ったがなぁ・・・少し早計だったんじゃないのか。ルノワ」


 ヘルムートがそう言って悪態を吐くと、同意する様に苦笑しながら軍属の人間は同意していた。


「必要事項だと判断しました。各関係者が非難してから新聞社に情報を漏洩リークしたので、内容そのものは間違っていませんよ」


 一方で新聞社に信康逮捕を含む情報を漏洩させたルノワは、平然とした様子で一切悪びれる事無く開き直っていた。


「あのなぁ・・・それにしたって「失礼しますっ!」・・・っ。何だっ! 会議中だぞっ!!」


 ヘルムートが更に話そうとした瞬間、会議室の扉が開いて一人の男性が入室して来た。その男性は会議室の扉前で見張り役をしていた隊員だったので、ヘルムートは会議に乱入して来たこの隊員を反射的に怒鳴り付けた。


「すみませんっ! しかし兵舎の表にとと、とんでもない方が来られててっ!」


「何だとっ!? こんな大事な時に、一体何処のどい・・・つ・・・」


 ヘルムートは再び隊員を怒鳴り付けようとしたが、開いたままの扉に視線を向けて思わず硬直してしまった。


「ア、アリスフィール王女殿下っ!?」


「御機嫌よう。御邪魔するわよ」


 ヘルムートの眼前に居たのは、プヨ王族第四王女のアリスフィールだった。アリスフィールの背後には、侍女のリリィも控えていた。


「アリスフィール殿下だとっ!?」


 ヘルムートは両眼を見開いて第四王女のアリスフィールが傭兵部隊の兵舎に来訪している事に、驚愕して硬直していた。


 そしてロペール達もアリスフィールの存在を知って、慌てて席から起立した。


「あー待って待って。別に跪かなくても良いわよ。私も忍びで来ているんだから、そうやって畏まられても困るわ」


 アリスフィールが面倒そうにそう言うと、ロペール達は互いに顔を見合わせてから言われた通りにした。尤もアリスフィールを前にして、誰一人として着席する人物は居なかった。


「ではお言葉に甘えますが・・・殿下。一体、どの様な御用があって傭兵部隊に?」


 ロペールが代表して、全員が思っているであろうその疑問を尋ねた。


 するとリエラ達は気になるのか、アリスフィールが何を言うのか注視していた。


「ええ。ノブヤスを解放する為に動いている人達が傭兵部隊の兵舎に集まっているって聞いたから、急いで王宮を抜け出して来たのよ」


「そ、そうなのですか・・・っ」


 ロペール達はアリスフィールの話を聞いて、プヨ王宮は今頃アリスフィールが居なくなった事で大騒ぎになっているのだろうなと思った。


 そんなロペール達を他所に、アリスフィールは着用しているスカートの両端を掴み一礼しつつこう口にし始めた。


「皆さん。私の大切な友人たるノブヤスを助ける為に、今日まで尽力してくれた事を心より感謝します。ありがとう」


『!?』


 アリスフィールから感謝されたロペール達は、大きな衝撃を受けた。


 プヨ王国に仕えるロペール達にとって、プヨ王族から感謝されるのは非常に大きな意味合いがあるからだ。


「・・・っ」


 そしてそれはプヨ王国への帰属意識が薄い、傭兵部隊の諸将も例外では無かった。


 ロペール達程の衝撃は受けていなかったがそれでも衝撃を受けていたし、元々がプヨ人であるリカルドとヒルダレイアは感激していた。特にリカルドは思わず、熱を生んで熱くなる胸を片手で押さえた。


「・・・殿下御自らの御言葉、勿体無く思います。しかし我々は、当然の事をしたまでですから」


「寧ろこの様な醜態を晒している現状を、私達は大いに恥いている次第であります。お騒がせして申し訳ございません」


 ヘルムートは謙遜しながらそう言うと、リエラは申し訳なさそうにアリスフィールに頭を下げた。するとルオナとカラネロリーもリエラに続けて、アリスフィールに頭を下げた。


「貴女達が悪い訳では無いでしょう? それに私などに謝っている暇があるなら、ノブヤスを解放してこの騒動を引き起こしたザボニー元凶の逮捕に全力を尽くしなさい。良いわね?」


「・・・御意。全力を尽くす事を、この場で固くお約束致します。アリスフィール殿下」


 リエラはそう言って、アリスフィールに敬礼した。


 そんなリエラを見て、会議室に居る軍属全員が続けてアリスフィールに敬礼した。一方で非軍属であるハンバードとマリーザとダリアとアニシュザードの四人は敬礼せず、アリスフィールに頭を下げて一礼をしていた。


「では引き続き、よろしくお願いするわ」


「勿論です・・・しかし、本当にノブヤスとは知己の間柄なのですね」


 ヘルムートは信康とアリスフィールの関係性について、大いに驚嘆した様子を見せていた。それはロペール達も同様であった。


「ええ。王宮を抜け出した日に、偶然ノブヤスと出会ったの。それ以来私が王宮を抜け出す度に、護衛も兼ねて付き合ってくれたわ。因みにこの首飾り(ペンダント)なんだけど、ノブヤスがその場で買って私にくれたのよ」


 アリスフィールはそう言うと、自慢気に桃色の金剛石が煌めく首飾りをロペール達に見せ付けた。


『・・・』


 ロペールの桃色の金剛石の首飾りの入手経路を知って、驚愕せざるを得なかった。


 まさか一介の傭兵に過ぎない信康がアリスフィールにその様な贈物品を献上しているとは思わず、部外者であるリエラ達は驚愕していた。


 一方で全容を知らないとは言え信康が莫大な資産を所持している事をロペール達ではあるが、それでもその資金力を知ると驚愕せざるを得なかった。


 アリスフィールが身に着けている桃色の金剛石の首飾りだが、鎖部分は純金製の太目の鎖で造られていた。更にその中心には、七カラット近くある桃色の金剛石が凛々と煌めいていた。


 この桃色の金剛石の首飾りは推定でも白金貨七十枚以上の価値があるとされ、直ぐに新聞でも金貨七千枚以上と表現された形で取り上げられて大いに王都アンシを賑わせたのである。


 実父であるヴォノス王や姉達にも入手経路を問い詰められたらしいのだが、アリスフィールは『普段から親しくしている、とある御方からの贈呈品プレゼント』とだけ答え国庫には一切手に付けていない事を明言した。これはプヨ王国の財務大臣も、はっきりと明言している。


 このアリスフィールの明言は更に王都アンシを賑わせる事になり、アリスフィールには懇意にしている男性が居るのではと推測合戦が行われる程であった。


「あの頃は騒々しかったわね。御蔭で私も暫く王宮を抜け出すのを、自重しなければならなかったのだから」


「あの、殿下。恐れながら申し上げまするが・・・王宮を抜け出すのは、常に自重して下され。御身がそうなさる度に近衛師団の儂等は殿下の捜索で駆り出されて、てんやわんやの事態になるのですからな」


 ビュッコックは困った様子を見せながら、アリスフィールに苦言を呈した。ビュッコックの発言を聞いて、ロペール達も一斉にうんうんと首肯して頷いていた。


「おほほほ、其処は、申し訳なく思っているわよ。だから()は、こうして自重しているじゃない。と言っても私が大人しくしているのもノブヤスも居ない所為で、一人で王都アンシを歩き回っても味気無いし退屈過ぎてつまらないんだもの」


『・・・』


 アリスフィールの発言を聞いて信康が戻って来たらまたプヨ王宮を抜け出す心算なのかと、会議室に居る全員が思ったが敢えて指摘する者は一人も居なかった。


 厳密に言えばもしアリスフィールにそう明言されようものならどんな反応をすれば良いか困るので、誰にも指摘出来なかったと表現するのが正しい反応だった。


 ロペールとリエラとビュッコックとカラネロリーとルオナとヘルムートの六人は揃いも揃って、急ぎ両手で両耳を塞いで『あーあー何も聞こえない聞いていない』と言って聞いていない事にして現実逃避していた。


 アリスフィールはそれから、会議室に居る全員に一人一人に声を掛け始めた。アリスフィールは先ず軍属のロペール達に声を掛け、その貢献を労った。それから非軍属の、ハンバード達に続けて声を掛け始める。


「こうして会うのは、初めてかしらね? 何時も王家がお世話になっているわ、ハンバード会頭」


「王室御用達の商人として、当然でございます。殿下」


 ドローレス商会はプヨ王室御用達の商会の一つなのでアリスフィールとは懇意にしていたが、こうして直接声を掛けて貰えるのはやはり嬉しかったらしくハンバードは関係強化の観点からも非常に喜んでいた。


 更に信康との関係性を知ったと同時に、これは商売の伝手になりそうだと思っていた。


「マリーザと言ったかしら? 貴女の御爺様なら、王宮で会った事があるわ。彼に似て貴女も、中々のやり手みたいね」


「殿下。お褒め頂き、恐悦至極に御座いますわ。それと殿下さえ良ければ、わたくしの事はマリィと御呼び下さいませ」


 アリスフィールに声を掛けられたマリーザは、冷静にそう言うと優雅にカーテシーを披露した。尤も王族であるアリスフィールを前にして、内心では緊張していたのか必死で足が震えているのを誤魔化していた。


「貴女が千夜楼のアニシュザード? 裏社会の関係者・・・それも重鎮にこうして会うのは、流石に初めてね」


「うふふっ。殿下の初めてになれて、大変光栄でございます」


 アリスフィールがアニシュザードに声を掛けると、アニシュザードはマリーザよりも余裕の表情で挨拶をした。


「それにしても意外ですわ。殿下が私みたいな裏社会の関係者にもこうして、分け隔て無くお声を掛けて下さるのですから」


「別に千夜楼は、あからさまにプヨの法を犯している訳では無いのでしょう? 寧ろ裏社会の秩序維持に貢献してくれて、私としては感謝しか無いわね。それと私は御父様や姉様達と違って、まだ政治に携われていないけれど・・・小娘に過ぎない私でも綺麗事や正しさだけで世の中が回ると思う程、頭の中は御花畑じゃないわよ」


「それは失礼致しました。末の姫君であらせられるアリスフィール殿下がこれだけ聡明でしたら、プヨはこの先も安泰ですわね」


 アニシュザードは素直にアリスフィールの聡明さと理解力に感嘆していた。そしてプヨ王族の一人であるアリスフィールと、伝手を得る事が出来た事実に大喜びしていた。


 ドローレス商会とルベリロイド子爵家に続きプヨ王家とも伝手を得られた千夜楼は、これまでよりも素早く且つ大きく勢力を拡大し他の裏組合を圧倒する事も夢ではないのだ。その未来を脳裏で描いたアニシュザードは、喜びのあまり口元が緩みっぱなしであった。


『・・・・・・』


 尤も、ロペール達は素直に喜べなかったのだ。プヨ王族が裏社会の人間と接触するのだから、正規の軍人であるロペール達は良い顔など出来る筈も無い。


 この関係がスキャンダルとして表沙汰になればアリスフィールにとって、決して小さくない傷になりかねないのだから。現にリエラとビュッコックは、最大限の警戒心を抱かせた視線でアニシュザードを見詰めていた。特にルオナに至っては視線だけで、アニシュザードを殺害しかねない程に鋭く睨み付けていた。


 アニシュザードがアリスフィール達に接触し伝手を得られた事は、千夜楼が近衛師団に大きく警戒される要因にもなった事は間違い無かった。尤もアニシュザードとしては、その様な問題点よりも利点の方が遥かに大きいと判断しているので当人としては何も問題など無いのだが。


「・・・其処の黒森人族(ダークエルフ)。貴女、ルノワって名前じゃなかった?」


 そんなロペール達の様子などアリスフィールは気付いておらず、そのまま今度はルノワに声を掛けて来た。


「っ!?・・・はっ。その通りです。アリスフィール王女殿下」


 ルノワはアリスフィールに名前を知られている事に驚きつつも、如何にか平静さを装って返答をした。


 するとルノワは、アリスフィールから思わぬ言葉を耳にする事となる。


「ノブヤスから聞いているわよ。美人で非常に頼りになる部下だそうね?」


「ノブヤス様が、私の事をその様に・・・」


 アリスフィールから信康は自分をその様に話していた事を知り、思わず胸が熱くなってしまう。それと同時に、信康が居ない寂しさを感じてシュンとしてしまった。


「丁度良いわ。貴女、私をノブヤスの部隊まで案内してよ。ついでに声を掛けて労いに行きたいから」


「はっ。私は構いませんが・・・」


 ルノワは少し困った様子を見せながら、チラッとヘルムートを見た。ルノワの視線を受けたヘルムートは、ルノワの意図を察して同じく困った様子で唸った。


「心配しなくても後で不公平とか依怙贔屓なんて言われずに済む様に、全ての部隊に声を掛けに行くわよ」


「おお、それでしたら・・・ルノワ、ケンプファ。急いで殿下を御案内しろ。くれぐれも丁重になっ!」


「「了解しました」」


 ヘルムートの命令を受けてルノワとケンプファは敬礼してから、会議室を退室してアリスフィールを第四小隊の下へ向かった。


 ロペール達は、ただ黙って会議室を去って行くアリスフィール達を見送った。


「・・・・・・ともあれ会議の方だが、これ以上話す事も無いだろう。私はこれからこれ等の証拠が握り潰されたり捏造だと言われない様に、更に裏付けしたり根回しをして来る。それ等を済ませたら、上層部・・・は駄目だな。ザボニーの息が掛かった者共が何人かいるから、陛下に直接上奏する。悪いがノブヤスの釈放は早くて一ヶ月、遅くなれば三ヶ月程度は掛かると思ってくれ」


「ロペール少将閣下。及ばずながら私達、特殊警務部隊も協力させて頂きます」


「私も」


 ロペールの推測に、リエラとカラネロリーも協力する旨を伝えた。それから先にロペール達は、次々と会議室から退室して行った。


 ハンバードも義父であるビュッコックを連れて会議室を去った後、続けて去ろうとするアニシュザードにヘルムートは声を掛けた。


「アニシュザードさん・・・だったか。今回の件もそうだが王都アンシで起こった去年の連続殺人事件では、大変世話になった。今更過ぎる話だが、俺からも礼を言わせてくれ。あんたからの情報は、犯人逮捕に本当に役に立った。ありがとう」


 ヘルムートはそう言うと、アニシュザードに向かって頭を下げて感謝の意を示した。


「ふふふっ。私に感謝なんて、無さらなくても結構よ。あの事件は千夜楼私達にも実害が出ていたから、ノブヤスからの協力要請は渡りに船だったもの。それに・・・」


 アニシュザードは其処まで言うと、身体を前のめりにし両腕も動かして自身の豊満な胸の谷間を強調させる艶めかしい仕草を見せた。


「私に感謝をして下さるよりも千夜楼うちの娼婦娘達の客として、お金を落として下さる方が私としては遥かに嬉しいわね・・・総隊長さんの御仲間の皆さんは常連客として良くお金を落としていってくれているんだけど、良かったら総隊長さんも如何かしら? 何だったら飛びっ切りの娼婦娘達を紹介しちゃうわよ」


「・・・魅力的な提案だが、もし俺がやったら女房に殺されちまう。だから声を掛けるのは、部下達だけにしてやってくれ」


「あら、残念。じゃあ後ろの小隊長さん達。何時もうちの娼婦娘達を指名してくれてありがとう。今後もお相手して下さると私も嬉しいわ。じゃあね♥」


 ヘルムートに断れたアニシュザードは口とは裏腹に、あまり残念そうな様子は見せずそのままリカルド達に視線を向けた。


 アニシュザードにそう声を掛けられたリカルド達は、二つの意味でドキッとした表情を浮かべた。余談だが常連客と言えるのはバーンとロイドだけであり、リカルドとカインは時折バーン達に連れられて娼館を利用しているのであった。


 しかし第三者から見れば、バーン達もリカルド達も同類である。そんなリカルド達の反応を見て、ヘルムートとヒルダレイア達女性陣は思わず溜息を吐いた。


 その間にアニシュザードは、会議室から退室した。


「・・・ふぅ。これで漸く、傭兵部隊が嘗ての日常に戻れる日も近いな」


「そ、そうですね、総隊長。これでノブヤスも、傭兵部隊に戻って来てくれますね」


 ヘルムートが漏らした言葉に、リカルドが相槌を打つ様に同意した。


「そうだがリカルド。あの証拠の山を突き付けたからと言っても、ロペールが言った様に裏付けやら諸々の手続きがある。ノブヤスが帰って来るには後、数ヶ月は掛かると思った方が良いぞ。年内なのは間違いないがな」


「そうですね。ですがこうして無事に戻って来るだけでも、自分達は喜びませんと」


「まぁ、そうだな・・・尤も、ノブヤスの奴がエルドラズで扱かれてくたばってなければ良いが」


 ヘルムートもリカルドの意見に同意したが、余計な一言を口にしてリカルド達の不安を煽る発言をしてしまう。


「ま、まぁ心配しなくても大丈夫っしょ。ノブヤスあいつも長い間、傭兵なんてしているって言ってたんだ。身体は頑丈だろうから、そう簡単にくたばったりする事もねぇだろうよ」


 バーンはそう言って全員を元気付ける為に、軽口を叩き出した。


「だな。と言うか、酷ぇ話だよな。寄りにも寄ってぶち込まれた所が、あの大監獄なんだからな」


「ああ、全くだな」


「けどあそこは看守が、女しかいないって聞いているからな。もしかしたらノブヤスの奴は今頃、看守を誑し込んで快適な生活でもしているんじゃあねえのか」


「ははははっ。かもしれんな」


 ロイドとカインもバーンに続けて、軽口を叩いて会議室を和ませようと始めた。


「ふん。馬鹿ね。と言うかあんた達、分かってないっ。何にも分かってないわっ! ノブヤス(あいつ)がそんな、生易しい事をする訳ないじゃない」


 信康と親しくなっているティファが、そんなバーン達の軽口を一笑した。


「じゃあティファは、ノブヤスがエルドラズで何をすると思うんだ?」


 ヘルムートはバーン達の軽口を一笑したティファに、ならば信康はエルドラズ島大監獄で何をすると思うのか興味本位で尋ねてみた。


「そうね。ノブヤスだったらきっと・・・誑かした看守や同じ受刑者達を使って一緒にエルドラズ乗っ取る計画でも立ててるんじゃないかしら。もしかしたらもう、エルドラズは掌握していたりしてね」


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


 ティファの言葉を聞いて、ヘルムート達は笑い飛ばす事は出来なかった。


 寧ろ冷静で慎重なれど時に大胆な策も平気で打てる信康ならば、その様な大それた計画を立案して実行に移してもおかしくなかった。


 信康は真紅騎士団(クリムゾン・ナイツ)が誇る十三騎将すら討ち取る武勇に加え、カロキヤ公国が保有する二個軍団も返り討ちにする高い知能も兼ね備える知勇兼備の傑物だ。


 そして美女を容易く誑し込む、手練手管の持ち主でもある。


 信康個人に加えてエルドラズ島大監獄で勤務する看守や投獄されている受刑者の実力次第では、エルドラズ島大監獄を乗っ取る事も不可能ではないとすら思えた。


「は、ははは・・・いやぁティファ。流石にそれは無理だろう」


 ヘルムートはそう言ってティファの予想を否定しながらも、信康ならばやりかねないと顔を引き攣らせた。


 信康の実力は未知数なので、本当に出来るかもしれないと思えるからだ。


「ヘルムート総隊長。そう頭ごなしに否定するものでもありませんよ」


 会議室に流れる何とも言えない空気の中、ライナはティファの予想する内容に同意した。


「ノブヤスの実力だけど、あの二度の大戦を経験してもまだ底が知れませんでしたわ。寧ろノブヤスはまだ、十全に本領発揮すらしていないのかもしれない。私もティファと一緒で、ノブヤスならエルドラズを制圧してもおかしくないと思うのです」


 ライナの意見を聞いて、ヘルムート達も思わずその意見に同意していた。


 パリストーレ平原の会戦ではカロキヤ公国軍征南軍団を半壊させる策略を献策し、真紅騎士団クリムゾン・ナイツが誇る十三騎将の一人を討ち取った。


 パリストーレ平原の戦いではカロキヤ公国軍征西軍団を壊滅させる貢献をし、団長も副団長も自らの手で討ち取っている。


 この赫々たる戦績を知れば、とても一介の傭兵が挙げた戦績とは思わないだろう。


 信康はそれだけ、凄まじい戦績を挙げていると言うのが紛れも無い事実なのだ。


「・・・・・・兎も角だっ!。俺達はノブヤスあいつが何時戻って来ても問題など一切無い様に、何時も通り傭兵としての仕事をしておくだけだっ! 会議はこれまでとするっ! 以上っ! 解散っ!!」


 ヘルムートがそう宣言すると、リカルド達はヘルムートに敬礼してから会議室を順番に退室して行った。



 近衛師団傘下の一つである傭兵部隊の兵舎で、信康解放の為の話し合いが行われていた頃。



 その時の信康はと言うと、カガミの独居房に居た。


 其処では現在、高位蛇美女エキドナの固有能力によって魔物が産み出される瞬間を目の当たりしていた。


 信康も高位蛇美女エキドナが魔物を出産する所など見た事が無いので、後学の為に見学をしていた。


「しかし魔物を産むか。単為生殖って奴だよな?」


 信康は疑問に思っていた事を、カガミに訊ねる。


「ソノ通リデス。私カラシタラ、簡単ナ事デス」


 そう言って、カガミは目を瞑った。


 やがて顔を上気させて行くと、見て分かる勢いで腹部が膨張し始めた。


「ン、ンンンンンンッ!!」


 カガミは声を上げ始めるとゆっくりとだが、白い殻に覆われた卵が股間から出て来た。


 信康はカガミの股間から出て来た、卵をゆっくりと持ち上げる。


「ほう、思ったよりも大きいな」


 その産卵されたばかりの卵の大きさは、生まれたばかりの赤ん坊に匹敵するものだった。


 信康はその卵を持ち上げていると、何処からかピシッと言う音が聞こえた。


 何処からそんな音が聞こえて来たのか気になり、信康は周りを見る。


 ピキ。ピキピキ。


 そんな音が卵から聞こえて来た。


 信康は卵を見ると、既に一部に罅割れが出来ていた。


「お、おおっ! 生まれるのに時間が掛かると思ったが、意外に早いな」


「主。卵ヲ置イテ」


 カガミにそう言われて、信康は直ぐに卵を地面に置いた。


 すると卵の罅割れが、勢いよく広がり始めた。


「殻から出て来るのも、随分と早いな」


 そう言う間にも罅割れが広がり、やがて殻の一部が内部から押し出された。


 押し出された所から、中から動いている魔物が居た。


 そしてその魔物は、自ら殻を壊して行く。やがて殻の中に居た、魔物がはっきりとその全容を見せた。


 驚いた事に殻の中に居たのは、一頭の獅子型の魔物だった。


「ほぅ?・・・これはまさかっ」


 信康は生まれた魔物の正体に気付いたのか、両目を見開いてその獅子型の魔物を見詰めていた。そんな信康を他所に、カガミは生まれたばかりの獅子型の魔物を優しく持ち上げる。


「こうして、魔物が生まれるのか」


「ハイ。ソウデス」


 そして、カガミは自分の胸の頂点にある赤い突起を、その獅子型の魔物の口に押し当てた。


 獅子型の魔物は本能的に、その赤い突起に口を付けてちゅーと吸い出した。獅子型の魔物は喉を鳴らして、カガミの母乳を飲み始める。


 信康はカガミ達の光景を見て、母が我が子に授乳しているのを見ている様な気分だった。その際に大和皇国で鬱陶しさすら覚える程の世話好きだった自身の乳母を思い出して、僅かながら懐かしさが胸中に生まれていた。


 カガミの母乳を飲み続けていた獅子型の魔物は満腹になったのか、乳を吸うのを止めて就寝に就いた。


 カガミは就寝に就いた獅子型の魔物を、ゆっくりと床に下ろした。


 その後は、暫しの雑談に興じた。

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