第230話
「今から三年前の話です。あたしは聖女になる為の儀式として喰魔の血を飲んだのです」
「話から察するにその喰魔の血とやらは、エレボニアン教団が保有する魔宝武具なのか?」
「はい。喰魔の血は神具級の魔宝武具です」
「・・・フラムもそうだったけど、やっぱり聖女は教団から魔宝武具を貰えるのか? それも全部神具級だと?」
「はい。六大神の各教団は自分達の聖女の為に、神具級の魔宝武具を保有しています」
「そうかい。しかし液体の魔宝武具なんて、随分と変わっているよな・・・それでお前はその喰魔の血を飲んで、制御に失敗したんだよな?」
「はい。厳密な話ですが喰魔の血は魔性粘液みたいに状態なんです。それを飲み込む形になります。所有者が自らの意志で破棄したり、死んだりしたら身体から排出されてまた魔性粘液みたいに状態に戻ります・・・話を戻しますが、あたしは喰魔の血を飲んだら暴走してしまったんです。そんなあたしを抑えようと、父と母と兄と妹が近寄ったのです。それで・・・・・・」
「・・・そうか。ではその四人はどうなった?」
「父達を殺した後、闇雲に放った攻撃が兄と兄の妻だった義理の姉とその娘に当たりました」
「成程。それでか」
「家族の死体を見て、漸くあたしは冷静になりました。そして喰魔の血の制御に成功したのです」
「しかし、お前は家族を殺した罪悪感が拭い切れず、未だにこの大監獄に残っているんだろう?」
「そう、です。あたしの所為でお父さんもお母さんもシアエガ兄さんもアルト義姉さんもラフィーも、そしてまだ物心付いたばかりシィーアもあたしが・・・・・・」
クラウディアは言っている最中で、身体を震わせた。
信康はクラウディアの様子を察して、急いで動こうとしたが遅かった。
「U、Uaaaaaaaaaa!!」
三年前の惨劇を思い出してしまったのか、再び暴走しそうになるクラウディア。赤い炎の棘の赤い棘付きの触手の拘束を解こうと藻搔き出した。
「っち、魔法が解けたか」
今迄大人しくしていたので大丈夫だと思って安心して気を抜いた所為なのか、それとも自分が犯した罪を思い出して暴走し出したのかは分からない。
しかし断言出来る事が、一つだけある。それはクラウディアのこの暴走を止めないと、信康の身が危ないと言う事に変わりない。
幸いにもまだ、赤い炎の棘の赤い棘付きの触手の拘束は解かれていない。なのでクラウディアには、このまま無理矢理にでも大人しくさせるしかない。
そう思い、信康はどうしたものかと考えた。
「・・・・・・暴走状態ならいけるか?」
そう呟いた信康はクラウディアの顔を無理矢理振り向かせて口付けをした。
「んっ!?」
いきなり信康に口付けをされて、目を白黒させたクラウディア。
「ちゃんと面倒を見てやるよ。お前さえ良ければ、それこそ一生な」
「ふん」
クラウディアは信康の告白を聞いて、顔を赤くしながら顔を背けた。




