第229話
「はあああっ!」
信康は鬼鎧の魔剣を、クラウディアと思われる美女に振り下ろした。
しかしその攻撃は、クラウディアと思われる美女が変化させた腕で難無く防ぐ。
クラウディアと思われる美女に防がれても、信康は攻撃を続けた。
どれだけ、攻撃しても信康の攻撃はクラウディアと思われる美女の身体には当たらず、その変化した腕で防がれた。
しかし攻撃を防がれるとは言え、このクラウディアと思われる美女は人間である事に変わりない。
このまま攻め続ければ、暴れていた事も相まって先にクラウディアと思われる美女が体力不足になると予想した。
しかしクラウディアと思われる美女の体力がどれだけ続くか分からない以上、信康は一度下がり体勢を整えるか考えた。
(さて、どうしたものか・・・そう言えば、まだ試していない魔法があったな)
その事を思い出した信康は、まだ未使用の性魔法を使う事にした。
鬼鎧の魔剣でクラウディアと思われる美女の攻撃を防ぎつつ、何時でも魔法を発動出来る様に準備をする。
準備と言っても、掌に魔力を溜めるだけだ。
そうして、掌に魔力を溜める信康。やがて信康の掌には、魔法発動に十分な量の魔力が集まった。
後は発動するタイミングを計るだけなのだが、何時使うかその時を鬼鎧の魔剣でクラウディアと思われる美女の攻撃を防ぎながら待つ。
「Gaaaaaaa!!」
クラウディアと思われる美女の大振り攻撃を、前のめりになって躱す信康。
そのまま前方に転がり、体勢を整える。
しかし、クラウディアと思われる美女の追撃は無かった。
クラウディアと思われる美女の攻撃は信康に当たらなかったので、そのまま床にぶち当たり貫いた。
そしてクラウディアと思われる美女の腕は、床に刺さったまま抜けなくなった。
「G、Guuuuu!?」
クラウディアと思われる美女は、床に食い込んだ腕を抜こうと藻掻いていた。
「今だ」
信康はそう思ってまだ試していない性魔法である夢幻の炎を発動させた。
すると信康の眼前に、夢幻の炎の幻炎が生み出された。
そしてその夢幻の炎の幻炎は、信康の姿となった。
クラウディアと思われる美女は未だに床を貫いた自分の腕を抜こうと藻掻いているので、信康が夢幻の炎で生み出した幻炎を見ていない。
「よし、行け」
夢幻の炎の信康は、そのままクラウディアと思われる美女に襲い掛かる。
「ッ!?」
床に突き刺さった腕を外そうと藻掻いているクラウディアと思われる美女であったが、信康が近付いて来るのに気付き空いている腕を振り回した。
その腕は、夢幻の炎の信康に直撃した。
「・・・・・・?」
しかし当たった感触も無く更に信康の姿も掻き消えたので、クラウディアと思われる美女は首を傾げる。
その隙を見逃す信康では無かった。
「隙ありっ!」
信康は駈け出して、クラウディアと思われる美女に詰め寄る。
クラウディアと思われる美女は夢幻の炎の信康に振り回し攻撃したばかりので、直ぐには腕を戻す事が出来ない。
信康は難なくクラウディアと思われる美女の腹に、一撃を見舞う。
「G、Guuuuu」
自分の腹に攻撃を受けたクラウディアと思われる美女は、当たった所を手で押さえる。
「赤き炎の棘」
信康は赤き炎の棘を発動して、クラウディアと思われる美女を拘束した。
「Gaaaaaaaa!?」
クラウディアと思われる美女は自分に絡みつく赤き炎の棘の赤い棘付きの触手を振り払おうとしたが、片手は未だに床に貫いているので抜けずにいるのでもう片方の手だけで振り払っている。
しかし全く振り払えず、|赤き炎の棘の赤い棘付きの触手はクラウディアと思われる美女の全身に絡み付いた。
「G,Goooo」
「藻掻けば藻掻くだけ、その棘はお前の身体を縛るぜ」
赤き炎の棘の赤い棘付きの触手から抜け出ようと、クラウディアと思われる美女は身体を動かしたので信康はそう言って忠告した。
しかし、信康の忠告など耳に貸さず、クラウディアと思われる美女は身体を動かすのを止めなかった。
「面倒だな。ならこうだ。酔呪の光」
これ以上暴れられても面倒だと嫌った信康は、酔呪の光を発動させる。
それによりクラウディアと思われる美女は、漸く大人しくなった。
「ふぅ。手古摺らせやがって・・・まぁ良い。これで話が出来るのだからな」
性魔法の効果で、クラウディアと思われる美女は漸く大人しくなった。
「先ずはっきりさせたい。お前はクラウディア・ドゥ・ベルべティーンか?」
「・・・・・・はい。そうです」
信康の問い掛けに、クラウディアは答えた。
「そうか。それと」
信康は改めて、独居房の中を見た。
やはり何処を見渡しても、独居房の至る所に傷が付いている有様であった。
猛獣が暴れても、こんなに傷つく事はない。どうみても人間が範疇を越えていた。
「これは、お前がやったのか?」
信康は壁の傷に触れながら、クラウディアに訊ねる。
「・・・・・・はい。そうです」
「どうしてしたんだ?」
「・・・・・・それは、自分が許せないからです」
「許せないだぁ?・・・理由は何だ?」
「・・・・・・はい。自分の所為で大切な者を失ったからです」
「大切な者か・・・一応だが、それもお前の口から教えてくれるか?」
「・・・・・・はい。分かりました」
クラウディアは口を開いた。




