102 四者会談 弐 (改訂-5)
【四者会談 弐】をお送りします。
宜しくお願いします。
窓の外から、木漏れ日が暖かく、
皇帝執務室を照らしている。
ゴドラタン皇帝は、手に取った紅茶カップに口をつけて、ヒロトの眼を見返す。
「意味がよくわからんな。何を根拠に? 」
グラウス皇帝は、静かにカップを置いてヒロトにたずね返す。
「戦線を後退させて、遅滞戦略を取るだけなら、それは唯の消耗戦です。盾で防ぐのは、もう片手に剣が有ればこそ」
「貴公は戦をわかっているな……ならば貴公も同じ様に、ロード・グランデの急襲を考えているのだろう? 」
「その通りです。陛下がナポレオン・ボナパルトの記憶をお持ちならば、無駄な事はなさらないと考えました。陛下の思考を辿ると、この答えに到達します」
「正しくは、魂を受け継いでいるのだよ。この世界に召喚された者は、必ずいつかは元の世界に戻る。それはクレオパトラ殿も、我もそうだ。千年経とうと、二千年経とうとも、元いたその時に戻される」
(まさに浦島太郎だな……)
「で! 我がロード・グランデを急襲するとして、どうするのだ? 」
「その急襲に、我らをお加え下さい。その方が成功の確率が上がります」
「ふむ……だが、我は他人や他国の指示は受けん。指揮権を我に移譲するならば、考えんでもない」
「構いません。世界を正す為、指揮権をお渡しします」
ナポレオン・ボナパルトの指揮で戦に負けるなら、誰が指揮しても負けるだろう。俺の指揮がボナパルトよりも上だとは思えない……
「クレオパトラ陛下、構いませんね? 」
「ああ、この戦に関しては其方に一任している。その其方が良いならば、我に文句は無い」
「私は反対です! 召喚者などを運ばなくとも、予言は達成されます! 」
ナターシャは声を荒げて反対する。
「予言? 」
「我がボナパルト家に伝わる予言の書がある。この予言の書と、我がナポレオン・ボナパルトの記憶のおかげで、ゴドラタン帝国の繁栄がある。その予言の書に、ロード・グランデ大迷宮の攻略手順まで記されているのだ」
(……誰の予言だ?……)
「クレオパトラ陛下が、この場に来られた以上、この話しは各王家との政治的な話しだ。余はこの話しを受けようと思う。ナターシャ、良いな? 」
「……陛下がそこまで仰るなら……」
「ヒロト! 其方はどの様に急襲するかも把握しているのだな? 」
「おおよそは把握しています」
ゴドラタン帝国が発掘している何かを、ヒロトは魔眼で見ていた。正確には魔眼と連動しているシステムと言うべきだが……
ヒロトがこの世界に召喚された際に、MMORPGファイヤーグランドラインのシステムも全てこの世界で使用する事が出来た。
魔力を蓄積し、増幅する《フォトン・バッテリー》、戦略・戦術管制システムや、魔導演算を行うAI《量子電脳アップルシード》、そしてヒロトの魔眼と連動し、偵察、攻撃を行う衛星軌道上に浮かぶサテライトシステム《戦闘衛星アルテミス》、ファイヤーグランドラインの3種の神器と呼ばれた特殊レアアイテムだ。
「発掘中の古代の遺物……空飛ぶ船ですね? 」
「発掘戦艦の事まで、知っているの? 」
ナターシャは信じられないといった顔だ。発掘中の古代の遺物は、魔力遮断を多重に行なっている。使い魔などは近寄る事は出来ない。人の噂は広がっているが、それが空飛ぶ船だなどとまでは、誰も知らない筈だった。
「そうだ、その空飛ぶ船《航空戦艦アヴァロン》で、敵首魁の首を取りに行く! 」
超古代アリストラス文明の遺産。古代の戦争で文明が破壊されたが、その生き残りが地中深くに残っていた。
船の発掘状況は、七十五パーセントまで進んでいる。艤装は同時並行で進めているので、あと一ヶ月で、船に火が入る。
「今宵は、夕食に招待しよう。ゆるりと休んでから帰られよ」
◆◇◆
「黒豹騎士団は一旦下がれ、ライアット公国軍第二騎士団と入れ替える! 」
マーリンは休む事の無い敵の攻撃によく対応していた。晴明と交代でなんとか凌ぐ事ができる。
軍を入れかえる際にはビリーの連隊の力が大いに役に立つ。
「銃士隊がおらなんだら、支えきれ無かったな……」
ヒロトの先読みの鋭さ、軍の編成、兵站など、全ての采配に舌を巻く。
「マーリン……今日はヒロト……戻らないの? 」
ジャンヌが食事を運んで来てくれた。
「ああ、多分今宵はゴドラタン皇帝と食事をして、明日の帰りじゃろ? 」
戦術モニターを見ながら、ジャンヌが持って来てくれた鳥もも肉を頬張る。
「……そうか、じゃあクレオパトラ陛下と、ヒロトは明日戻るんだね……」
ピク!……
マーリンの右の眉毛が上がる……
「ほほ〜っ!! クレオパトラ陛下もご一緒かえ? 」
「そうよ。クレオパトラ陛下が強引に式神鳥《日輪》に跨って、ヒロトにくっついて行ったんだって! 」
「ほほ〜っ!! ままあ、政治的な交渉じゃからな! 」
(…….ししし心配じゃ……クレオパトラは若い男に節操が無いとか……)
【四者会談 弐】をお送りしました。
マーリンが想像するように、ヒロトは喰われてしまうのか?
(映画 天空の城ラピュタを観ながら)
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