第56話 全員揃った
まあ、サムタスの反応は一旦置いといてだ。
残りのパーティーメンバーも探さなきゃな。
「お前らのパーティーって、何人組なんだ?」
俺は二人に対し、そう問いかけた。
「三人っす!」
なるほど、じゃあ回復する必要があるのはあと一人だな。
「じゃあ、最後の一人を探すぞ。ここからどんどん上の階層を目指すから、身体のパーツっぽいものを見つけたら渡してくれ」
そんな指示を出してから、俺達は目を皿のようにしながら上を目指していった。
最初に身体のパーツらしきものが見つかったのは、サムタスを治療した階と「船なき海賊団」と戦った階のほぼ中間の位置だった。
パーツが落ちていた場所は、川でいうところの死水域みたいな、構造的に水が淀む場所だったので……これも他の二人同様、どんぶらこと流れてきた身体のパーツである可能性は高い。
見つかったパーツは、おそらく形状的に半月板と思われる軟骨が一個のみ。
難易度的には親指と大して変わらないので、早速治療してみよう。
サムタスにかけたのと同じ魔法をかけると……半月板からみるみるうちに人体が再生していった。
「う、うわわわわ……何だこれ……」
「何だこれもなにも、お前もこんな感じで再生したんだぞ」
「なんでルブリオ、そんな冷静そうなんだ! 一回見ただけで慣れるようなもんじゃないだろ……」
「いや何というか……ここまで自然の摂理とかけ離れたものを見せられると感覚が麻痺してしまうというか……」
などと後ろで話している間にも、その人体の完全な再生が完了した。
再生したのは、眼鏡をかけた黒髪の女性だった。
「ん……これはどういう状況でござるか?」
「「ミュウ!」」
その女性(ミュウという名らしい)を見て、サムタスとルブリオの表情が明るくなる。
名前も知っていることだし、三人目のパーティーメンバーと見て間違いなさそうだな。
「ん……サムタスにルブリオ?」
「覚えていたか!」
「記憶も無事だったんだな!」
再生後の状態も問題ないようだ。
「二人とも、どういう状況か説明してくれぬか?」
「俺達は『脱獄者の楽園』に襲われてたんだよ……。ルブリオは生首だけ、俺に至っては親指一本しか残ってない木っ端微塵っぷりだった。でも……たまたまライゼル様が通りかかったおかげで、俺達全員そんな状態から完全に治療してもらえたんだ」
「ミュウ、お前も半月板一枚からの完全回復だぞ」
「今は冗談を言う時ではないでござるよ。まさかそんな芸t――」
二人がミュウにこれまでの経緯を説明すると、ミュウはまずそれを冗談だと一蹴しようとした。
が、その途中……俺と目が合うと、彼女は言葉に詰まった。
「って……ら、ライゼル様!?」
なぜだ。サムタスと違ってこの子に関しては完全初対面なのに、なぜ顔を見ただけで俺が分かる。
「俺が分かるのか?」
「あ、え、その……ライゼル様については、サムタスが描いた肖像画とそっくりだから一発で分かったでござるよ。そんなことより、半月板から人を全治って……」
サムタス、まさかの絵心あったのか。
試しに「収納視」という魔法を発動してみると、サムタスの収納魔法に確かに俺の似顔絵っぽい絵が入っていた。
「……なかなか上手い絵だな」
「ちょ、ライゼル様、勝手に収納魔法覗かないでくださいよ! まず覗けること自体異常ですけど、それは一旦置いといて!」
うん。流石に普段はこんなことしないぞ。
しかしまあそれにしても、確かにサムタスの絵のクオリティなら、初見の人が人相だけで俺に気づけるのも無理はないな……。
「ライゼル様、半月板から人を全治なんて、一体どんな魔法を使えばそんな常軌を逸した芸当が可能でござるか?」
「量子魔法陣という、立体魔法陣より更に情報量を詰め込める魔法陣を使った」
「立体魔法陣の上……。技術もさることながら、まず発想の時点で奇才でござるな……」
さて、とりあえずこれでルブリオのパーティーメンバーについては全員揃ったんだ。
このままダンジョンに居続けてもらうのもアレだし……一旦、ギルドに全員で転移してこの三人を送り届けるか。
「脱獄者の楽園」の増援はまだ当分来ないので、他にやれることもないし。
「じゃ、ギルドに転移していいか?」
「はい!」
「お願いします」
「もちろんでござるよ」
三人の合意も取れたので、俺は転移魔法を発動した。
次の瞬間には、俺達はギルド長室に着いていた。




