第17話 魔王、立体魔法陣のコツを掴む
言い忘れてたけどタイトル調整しました。
これでPVだいたい2割増しになったので無駄に長文である必要なかったという( ・∇・)
それから、一か月が経過した。
俺の成長予測はだいたい当たっていて……今のメルシャは、簡単な立体魔法陣くらいなら組める程度の基礎力がついている。
というわけで、今日からは実際に、新たな魔法陣を教えていくことにする。
そのために、俺たちはまた貸し切りにしてもらった闘技場にやって来ていた。
新たな魔法陣を教えるとはいえ……いきなり立体魔法陣から教えるわけではない。
まず最初に教えるのは、平面の魔法陣に毛が生えたような、謂わば平面の魔法陣と立体魔法陣の中間とも言えるような魔法陣だ。
「じゃあ今日から、実際に新しい魔法陣を習得していこう。一個魔法をやって見せるから、魔法陣に注目しててくれ。まずやってもらいたいのは……こういうやつだ」
そう言いつつ、俺が使って見せたのは……簡易結界の劣化版とも言えるような魔法。
どう劣化版なのかと言うと、使っている魔法陣が多層魔法陣——平面の魔法陣を十層ほど重ね合わせた魔法陣を使って発動する魔法だ。
当然、その性能は2Dの簡易結界と3Dの簡易結界の中間ほどとなる。
「うおっ? これは……魔法陣が重ね合わさっておるのか?」
「そうだ。しばらく展開しておくから、よく観察してくれ。そして……十分観察できて、自分でも展開できそうだと思ったらやってみろ」
なぜ、立体魔法陣の前段階としてこの魔法陣を習得させようとしているのか。
その理由は二つある。
一つ目は、単純に構築難易度が平面の魔法陣と立体魔法陣の中間程度だからだ。
なんてったって、構築の労力は平面の魔法陣を用いた魔法を多重展開するのと変わらないからな。
いや、それぞれの平面の魔法陣同士が魔法的に結びついている必要があることも考慮すれば、ただの魔法の同時展開より難易度は上と言えるだろう。
これを習得した上で、魔素排出装置を用いた訓練をすれば、今まで以上に基礎力の上昇スピードが早くなる。
その分、複雑な立体魔法陣が組めるようになる日も近くなるというわけだ。
二つ目の理由は……多層魔法陣を扱うことで、立体魔法陣を構築する感覚がある程度掴めるようになるからだ。
そもそも立体魔法陣とは、平面の魔法陣を積分したものに過ぎない。
簡単に言えば、「平面の魔法陣を大量に重ね合わせたもの」とも言える。
断面図の魔法陣を無限個重ね合わせ、くっつけたものと言って差し支えないわけだ。
つまり、多層魔法陣を覚え、その層をどんどん増やしていく練習をすれば……いつかは立体魔法陣に到達する。
そういった意味でも、多層魔法陣は立体魔法陣の卵みたいなものなのだ。
「……できたぞ!」
メルシャはしばらく俺の魔法陣を観察した後……魔法の構築を試し、一度で同じ結界魔法を展開することに成功した。
流石に十層くらいの多層魔法陣では、苦労することはないようだ。
「いい調子だ。……ちょっと強度を試してみるか」
そう言って俺は、試しにその結界に向けて「プラズマキャノン」を放った。
「わっ! 何を……って、あれ?」
唐突な攻撃魔法に慌てるメルシャとは裏腹に……多層魔法陣結界は、「プラズマキャノン」を完璧に防ぐ。
「い、今の威力の『プラズマキャノン』が、普通に防げた……?」
「当然だ。多層魔法陣でも、平面の魔法陣を用いた魔法よりはだいぶ格上だからな。……少しは凄さが実感できたか?」
「魔法の凄さは実感できたが、こんな結界を構築しているのが自分だという方がまだ、実感が湧かないな……」
メルシャはそう言いつつ、さっきのがマグレでないことを確認するが如く、何度も多層魔法陣結界を展開する。
「……あくまで目標は立体魔法陣だからな。十層ができたら、次はもう少し層の多いのをいくぞ」
そう言って俺は、今度は二十層の多層魔法陣を用いて発動する魔法を使ってみせた。
それをメルシャは、さっきの結界でもやっていたように具に観察し始める。
新たな魔法陣を見せ、観察させ、実際に自分で発動してもらう。
俺たちはその練習を、丸一日繰り返した。
日が暮れる頃には、メルシャは千層の多層魔法陣を用いた魔法が使えるようになった。
ここまで来れば、もはや構築難易度は初歩的な立体魔法陣と変わらない。
明日からは、「午前中は新たな魔法陣の習得、午後は魔素濃度を下げた部屋内での多層魔法陣練習」みたいなスケジュールでやるか。
魔素濃度の方も、これまでは濃度90%カットだったのを、99%カットに変えるとしよう。
それくらい厳しくしても、今のメルシャならついてこられるはずだ。
などと俺はぼんやりとカリキュラムを考えた。




