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人魚が溶けた水の中(★☆)
物心ついたときから
ずっと一緒に生きている
泡になったあのときから
姿形はもう無いけれど
ずっとずっと私の住処
彼女は儚い人魚姫
人魚が溶けた水の中
陸に馴染んだことがない
流行りの服に
流行りの化粧
人間らしくつくってみても
私が居るのは水の中
心の住処
離れられない場所
人魚が溶けた水の中
陸の言葉が話せない
あの人に近付きたいのがきっかけで
陸の言葉の勉強を
鼻歌まじりにペンを執っても
悲恋の音色は染み付いていて
私は物語を綴り始めた
哀しいものばかりだった
人魚が溶けた水の中
微睡み
揺蕩い
夢の中
あまり起きていたことがない
地に足はつかぬまま
悲恋の音色は子守唄
海はゆりかご
私の住処
空にはスピカ
処女宮が
清らかであれと無理を言う
人魚が溶けた水の中
夜が明けるのを待っている
終わらない夜
愛おしいけれど
日の目を見せたい
悲恋の歌に
私の綴った物語に
住処はずっと海の中
憧れ焦がれる陸の人
届けと願いペンを執る
悲恋の中から希望を伝えることが
いつしか私の生き甲斐となった




