第2話:三人の性奴隷
父親の無茶というかイリーガルな提案に、「はぁ」とか「まぁ」とか相槌を打って、一応は納得した風を装って会話が終わり。そのまま高級車でマンションまで帰る。九王アクヤの性奴隷として父親から見繕われたヒロインと顔合わせが明日、とのことで。マンションに帰った俺は掃除と洗濯に明け暮れた。このままで客を出迎えるわけにもいかず。ゲームは散乱しているが、これはまぁいいだろう。とりあえず部屋にロボット掃除機を手配して、急ぎで掃除機もかけて、脱ぎ散らかして溜まっている洗濯物は洗濯機に投入。洗剤を入れて洗い終わると天日干し。食器も片づけて、部屋全体に消臭剤を撒く。これで最低限の出迎えの準備は出来ただろう。やはりゲーム世界であるためか九王になっている俺は近所の地図も把握しており、業務用マーケットまで困惑することもなく歩いていた。通っている学校の位置も分かる。私立アルケイデス学園。うん。まぁネーミングはね。ゲーム内の学校だから。そうして客を出迎える準備を終えると、今日は風呂に入って寝る。歯磨きも忘れずに。そのまま熟睡して、それから次の日。
「ふ。ふ。ふ」
俺はそば粉をこねてソバを打っていた。ゲーム知識によれば、これから俺の性奴隷になる女の子がやってくる。夢が広がるのだが、それはそれとして。マンションの隣に部屋を受け持ってお隣さんになるのだ。そうして打ったソバをグリグリと広げて、細く切っていく。手打ちのソバが出来たのはいいことだとして。湯がくのはヒロインが来てからだ。ドキドキしながらその時を待つと、ピンポーンとインターフォンが鳴る。来た。心臓が早鐘を打つ。マジでドキドキで心不全にならないか心配だが、それはともあれ。
「はーい」
お客さんなので扉を開けて、そこにいたのは果たして。
「おおう」
三人の美少女だった。ゲームでは二次元のデジタルイラストだったが、リアルで見ると尊いという言葉ですら追いつかない。神美少女だった。
「今日からお世話になります。花崎カホルと申します」
「同じく。二條コヲリと申します」
「二條ホムラと申します」
「あ、ども」
もちろん美少女三人組に自己紹介されても俺としては童貞乙で戸惑うことしかできないのだが。ラブハートのヒロインは四人。今は春休みで、晴れて二年生に進学したら転校生の小比類巻マキノが現れるが、それ以外の三人、花崎カホルと二條コヲリと二條ホムラはゲーム開始前にすでに九王アクヤの性奴隷になっているという展開だ。
花崎カホルはゲームヒロインらしくドピンクの髪色の美少女で、まさにエロゲーヒロイン。学校制服を着ており、そのブレザーの胸が苦しそうだ。たしか公式設定はHカップ。爆乳と呼ばれる見事なものをお持ちだ。もちろん瞳は大きく小顔で、身長は相応にはあるが俺よりは低い。これで成績が良くて気が利いて誰にもニコニコしている才媛だ。高嶺のバラとも呼ばれる学園のアイドルで、可愛らしくてバインボインというパーフェクト超人。助けてサムソンティーチャー。
二條コヲリと二條ホムラは双子の姉妹。というか顔は同じなのだが、コヲリは名が氷を示すように水色の髪で、ホムラは名前の通りの炎のような赤髪。これで見分けるのはメタ的には簡単なのだが、たまに間違えられるという設定だ。とはいえ二條コヲリはDカップで、二條ホムラはAカップなので、裸になればわからないじゃない。ただホムラはコンプレックスから胸にパッドを付けているという設定で、髪色以外で見分けるのは不可能だ。二條双子も美少女というか超美少女で、花崎カホルほどではないが学内にファンがいる姉妹。その三人のS級美少女を支配して良い様に扱っているのが九王アクヤという人でなしなのだが。
「えと、よろしくお願いいたします?」
何故疑問形になったのかが俺には疑問だが。童貞を拗らせすぎて、美少女三人を前にどもってしまうのはしょうがないことだろう。
「つたない身ですが、アクヤ様を喜ばせるために頑張りますので、どうかご温情を」
「……私も……頑張ります」
「あたしもアクヤ様につくしますので、どうかご温情を賜りたく」
そっか。花崎カホルも二條姉妹も俺の性奴隷になることに納得しているのか。
花崎カホルは親の会社が九王グループから出資を受けるために娘を俺に差し出した。二條姉妹は親の借金が膨大すぎて、返済の目途が立たず……利子だけでも無くすために娘が揃って身売りした。そんな三人を俺が性欲で好きにしていいというのだからここはヘブンか。
「あ、じゃあ上がってください。歓迎の用意は出来てるので」
「「「ッッッ」」」
引きつった顔になる三人。あかん。勘違いさせている。たしか奴隷として人権を売った彼女たちが、主人に「歓迎の準備を……」とか言われると、悪い方向に想像するだろう。
「アクヤ様……ッ!」
赤い髪の美少女、二條ホムラが俺に覚悟を決めて言ってくる。
「アクヤ様の性欲はあたしが全部受け止めます! どんなプレイにも応えます! だからお姉ちゃんは……」
「……ッ……ダメですよ……ホムラちゃん。……私たちはアクヤ様の愛玩奴隷ですから。……アクヤ様は求められたらどこだろうと拒んではいけないんです。……私たちに人権はもう無いのですから」
「でも! それだとお姉ちゃんが!」
「……アクヤ様。……妹が失礼を申しました。……如何様にも処罰なさってください」
「え、ええと……じゃあ今度ね」
ガチで俺の奴隷になる覚悟ガンギマリで、俺が逆に何と申したものか。
「とりあえず上がって」
そうしてダイニングに上がってもらって。そこで俺は打っていたソバの作業に戻る。
「アクヤ様。その……それは?」
「ソバ」
「「「…………」」」
一瞬で何を言ってるんだコイツは、みたいな空気になった。というか視線がそう言っている。
「その。花崎さんも二條さんたちも隣に引っ越してくるんですよね?」
「あ、はい」
と代表して花崎さん。
「なのでソバは必須かと」
「あの。引っ越しソバは引っ越してくる側が持ってくるものですよ?」
「え? そうなの?」
それは知らなかった。うーん。世界は謎に満ちている。せっかくソバを打ったのに、本来俺は貰う側か。困ったなぁ。俺が後頭部を掻いていると。
「ぷっ」
誰かが吹き出した。と思ったら、ヒロインが三人とも顔を背けて笑いをこらえていた。俺の不理解を笑って、けれどさすがにご主人様を爆笑するわけにはいかないってところか。
「し、失礼、ふふ、誠に申し訳なく、くふふ」
花崎さんが一番笑っていた。
「え、じゃあ食べない? ソバ」
「あの。もしかしてアクヤ様が打たれたのですか?」
「こういうのは手作りがいいかなって。まさか引っ越しソバを受け取る側とは思わなかったけど。もう持ってきてる? ソバ」
「いえ。その。奴隷になるので。引っ越しと言うよりハーレムとか大奥のつもりで移住してきたので……」
「そっか。よかった」
「はい。可愛がってください」
「ソバが無駄にならなくてよかった。あ、今湯がくから待ってて。テーブルにでも座ってていいから」
「えーと。アクヤ様がソバを湯がくと?」
「うん。まぁ」
「いけません。アクヤ様は私たちのご主人様です。雑用は奴隷に任せてください」
奴隷。いい響きだ。俺に奴隷が出来るだなんて。
「じゃ、じゃあ、最初の命令。ソバを湯がいて? あ、ざるソバで」




