第11話:おっぱいアイマスク
「ふおおお」
出て来たのはふろふき大根とサバの味噌煮。それからツヤツヤの白御飯。
「うーん。美味い」
今日の調理担当はホムラだった。すでに俺の味覚がおばあちゃん相応であることは伝えてあるので、かしまし娘の料理もそれに準拠している。いや別にハンバーガーとかも嫌いじゃないんだけど、どっちかってーと「米!」「味噌!」「醤油!」なんだよな。
「美味しい~」
で、小比類巻さんも食卓にお邪魔してホムラの料理を食べていた。
「ホムラ料理上手いね」
「えへへ。ありがと」
「あーしがやるとどんなものでもダークマターになっちゃうからさ。こういうの作れる女子って憧れる~」
そうか。小比類巻さんはメシマズなのか。これは覚えておこう。そういえば小比類巻さんの料理シーンとかゲームに出てこなかったな。小比類巻さんルートの主人公は大変な思いをしたことでしょう。そうしてウマウマと食べて、食べ終わり、コヲリが皿洗いをしてくれて、その間俺は筋トレをしていた。とりあえず腹筋と腕立て伏せ。どちらも千回こなす。昔の俺は鍛えても筋肉なんて付かなかったけど、今の俺は鍛えれば鍛えるほど筋肉が応えてくれる。だから筋トレが苦じゃなかった。
「アクヤくん腹筋バキ割れじゃん。触っていい?」
「構わんが」
「ふわー。ガッチガチ。これは……ちょっと」
「何かマズいか」
「あーしのメスの部分が疼く」
「それはすまない」
「あ、いいのいいの。どうせ今夜はあーしと、でしょ?」
まぁそれはそうなんだが。
「親御さんには連絡したのか?」
「一応。友達の家に泊まるって」
「じゃあ泊っていけよ」
「放り出されても困るしねー」
あっはっはーと笑っているが、それから神妙な顔になる小比類巻さん。
「先に風呂入ってくる」
俺は筋トレの汗を流すために風呂に入ることにした。毎日のようにかしまし娘が風呂を洗ってくれるので、俺は湯沸かしのボタンを押すだけでいい。そうして入浴してしっかり温まり、筋トレの汗を流して極楽夢気分。
「ふい」
金色の髪をタオルで拭いながら、シャツとパンツを着て小比類巻さんに風呂を勧める。普通こういう時は女子が先なのだが、そこに考えが至った時には既に入浴していたのでノーカンで。
「じゃ、じゃあいただきます」
そうしてオズオズと小比類巻さんは風呂に入って。そのままシャワーの音が聞こえてくる。俺は眠気を覚えてベッドで横になる。そうするとホカホカの湯気を纏って小比類巻さんが現れて艶やかなパジャマ姿だった。
「ん。ちょっと色気ないよね」
「すでに十分ある気がする」
ブラをしているのだろうがHカップのおっぱいは伊達ではない。学校制服でも見てもデカかったのに薄い布地ではさらに強調されている。
「その……あーし……パパ活はしてきたんだけどさ」
「あ、うん」
「実はまだ処女なんだ。だ、だから、その、優しくしてください……」
月十二万円で身体を交わす関係。そのように俺と小比類巻さん。
「小比類巻さん」
「むー」
俺が呼ぶと彼女は不満げになった。どうかしたか?
「マキノ」
「?」
「マキノって呼んで?」
「じゃあマキノ。ここに座って」
俺はベッドの縁をポンポンと叩く。ドキドキしながらだろう。そこに座ったマキノを抱きしめて、俺はそのままの勢いで横倒れになる。
「きゃ、大胆っていうか。まぁ初めての相手がアクヤかぁ。それも悪くないかな」
「じゃ、お休み~」
俺はマキノを抱きしめたまま睡眠宣言。
「え? しないの!?」
「しません」
「でもそれだと勿体ないよ? あーしの身体下品かな。やっぱし」
「いや。おっぱいは大きくても問題ない」
「じゃあ何で……」
「俺がお前の処女を守るために買ったのに、その処女を守らなくてどうする」
「でもお金貰っちゃったし」
既に手付で三万円支払っている。
「俺は一緒に寝てくれるだけで満足」
「なるほどね。カホルたちが残念がっているわけだ。一緒に寝るだけで手を出して無いんでしょ? アクヤ」
「よくわかったな」
「確かにこれは紳士だわー」
そう言って、もぞもぞとベッドの上で奇妙に動いて、それから彼女は俺の頭部を抱きしめる。カホルと同じHカップのおっぱいが俺の頭部を包んでいた。
「ほわー。あったかい」
「おっぱいアイマスクだよ。アクヤに快眠を差し上げます」
「柔らかいけど、ちょっと固いな?」
「ブラジャーしてるからね。ノーブラが良かった?」
「形が崩れても困るし」
「だよねー。だからあーしも常に気を張ってるんだよ?」
「でもこれは……いいなぁ。今度カホルにもしてもらおう」
「こら。今はあーしのおっぱいを堪能しろし」
「とっても暖かくて、いい気持ちです」
「あ、あのさ」
「何でっしゃろ?」
「あーしのおっぱいなら、いつでも揉んでいいからね? そりゃ学校で、とかだったら困るけど。この部屋にいる時とか……なら」
「じゃあ楽しみにさせてもらう」
「うん。えへへ。あーし処女なのに男におっぱい捧げちゃったぜ」
「俺でよかったのか?」
「むしろ幸運かな。アクヤってオスを見つけられて」
「そっかー。あー。しかし。このおっぱいアイマスクはダメになる……」
「このHカップが全部アクヤのモノだぞ?」
俺はグリグリと顔をねじ込んで、おっぱいの谷間に沈んでいく。左右から挟まれている感じの乳圧が俺の至福の時間を提供してくれるのだ。
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【マキノ視点】
「ホントに寝ちゃった」
あーしの胸の中で寝息が聞こえてくる。静かで規則的な息遣いだ。カホルたちが「アクヤ様は夜は紳士ですよ」と言った意味が分かった。そりゃこれは紳士だわ。あーしのドスケベボディを前にして欲情しないんだから。せっかくお金貰ったんだから、いくらでも抱いてくれていいのに。あーし、そんなに魅力無い?ちょっと複雑な気持ちになりながらアクヤの頭をかき抱く。そして呟いてみる。
「アクヤ様……」
なんちゃって。




