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「――大晦日に家族旅行ですか。パパさんは大変ですなぁ」

「――大晦日に家族旅行ですか。パパさんは大変ですなぁ」


 機械帝国の首都・ウィンストンタウン。

 その関所にて、パスポートを見せる。

 入国の時もそうだったが、首都でも確認されるとは。


「休みが今日しか取れなくてね、おかげで1日中運転だよ」


 関所の役人にそう答える。

 楽しい家族旅行を装っているのに無言というのも、不自然に過ぎるからな。

 しかし無駄に話し込むとボロが出そうだ。


「帝国は初めて? ナノマシンを入れればこんな無駄な時間を取らなくて済むよ」

「あー、その話は聞いたんだけど、どうにも踏ん切りがつかなくてね」

「そっか、皇国の人からすると慣れない話だもんね」


 この首都に入るための道路、検問されている車とそうでない車がいる。

 いったいどういう線引きなのかと思っていたが、なるほど。

 体内ナノマシンで選別しているという訳か。無駄のない話だ。


「でも、うちに旅行に来てくれる人たち、3回目くらいには大体ナノマシン入れていくんだ。本当に便利だからね。皇国に帰っても色々と考えを手伝ってくれるから助かるんだって。パパさんのメガネよりよほど使いやすいデバイスさ」


 随分とごり押ししてくるな……パスポートの内容を確認する間の時間つぶしか?

 何かの機械に通しているのは分かるが。


「ねぇ、パパ~。まだ行かないの? わたし、座りつかれちゃったよ~」


 後部座席から猫撫で声を上げるシルフィ。

 と言っても、今はその特徴的な髪も耳も隠していて、まるで人間の少女だ。

 長い黒髪が特徴的な、10代前半の少女にしか見えない。


「こら、シモーヌ。関所の人を困らせちゃダメだろ?」


 そして俺の娘という変装をしている。

 ……いや、冷静になるとどういうことだよ、と思うんだが、意外とこの変装が効きに効いて首都まで無事に入って来れられているのだ。


「おっと、悪かったね。

 これ以上パパさんを困らせるとせっかくの家族サービスが台無しだ。

 それじゃあ、帝国首都を楽しんで。他の国にはない、素晴らしい景色だから」


 返却された偽造パスポートを受け取る。

 帝国に近い人間の国でシルフィが造っていた偽造品だ。

 今の今まで一度も看破されていないあたり、彼女の力が分かるというもの。


「――年越しにうちを選んでくれてありがとうね。

 それじゃ、よいお年を~」


 気さくな役人に手を振られながら、アクセルを踏み込む。

 ……自動車の操作方法を仕込まれていて助かった。

 この中で一番運転手に相応しい俺でなければ怪しまれる場面も多かっただろう。


「……なんか、悪い気分になるな。あんなに人の良さそうな奴に応対されると」

「ふふっ、お人好しですね。アナタ?」


 助手席に座るクロエ先生が、独特のイントネーションで俺に声をかけてくる。

 まるで本当に俺の奥さんみたいな声色で。


「やめてくださいよ、先生……」

「ダメですよ。そんな昔の呼び方、私たちは夫婦じゃありませんか。

 シモーヌなんて今年で15歳だというのに、まだ初々しいんだから」


 いや、この設定無理がないか? クロエ先生、18歳くらいなのに。

 パスポート上ではかなり歳上に設定したし、それなりの変装はしているが。


「なに照れてんだよ、親父。なぁ? 姉貴」

「リズ、パパって呼びなさいって言っているでしょう?」

「はーい、お姉ちゃん」


 ……こいつら、なんでこんな徹底しているんだ。

 リタもまるでシルフィの本当の妹かのように甘えに行っている。

 ちょっと口の悪い妹を演じ切ってやがる。


「――リタ、もう良いぞ。ここは盗聴されていない」

「ひゅー、相変わらずよく分かるね。シルフィ」

「古巣だからな。私以上の魔術師がいれば話は別だが、この国には居まい」


 機械技術の限界は知っている、という訳か。流石はシルフィだ。


「それでよ、シルフィ。どうすんだ? これから」

「――なぁに、まずは年末年始を楽しめばいい。

 年明けのお祭り時期が終われば、皇帝による年始の挨拶がある」


 最初にも言っていたことだ。

 そこでまず機械皇帝の位置を掴み、作戦を練ると。

 魔法でも何でも使って印をつけるところから始まりだと。


「本当にそれまで動かないつもりか?」

「……さて、どうだろうな。だが、少なくともお前は動くな。パパ?」

「なぁ、ちょっとそれやめてくれないか。ぞわぞわする」


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