「――素晴らしかったよ、ジョン。お前たちの輝きは」
「――素晴らしかったよ、ジョン。お前たちの輝きは」
無事に金剛花火を打ち上げ、全ての工程が終了した。
祝祭における仕事を終えた花火師たちと、祝杯を上げるため、移動していたそんな時だ。少し遅れて歩いていた俺に、見知らぬ男が声をかけてきたのは。
「……お前は、」
彼の相手をすることで、自分が完全に仲間たちから取り残されることが分かる。
眼前の男は、そうなるように話しかけてきたのだということも理解する。
だから、俺は、加速思考を発動した――
ドワーフの国では珍しい人間の姿をした男。
金色の髪、金色の瞳、その表情はどこか切なげで同時に楽しそうでもある。
……ああ、そうだ。こいつは“人間の姿”をしているだけだ。
「アウル、なのか?」
こちらの言葉を聞いて口元を釣り上げる金色の男。
「よく分かったな。お前は俺のこの姿、見たことがなかっただろうに」
「……いや、そろそろ、また遊びに来るころかなって」
「ふふっ、覚えていたか。殊勝な男だな、シルフィにはもったいない」
ドラッヘンベルクは、山の中に掘り出された都市。
だから階段だらけだった。
あいつは上、俺は下であることに、自らの不利を自覚する。
「――ジョン。お前はあの輝きに何を見た?」
「1人の偉大な男の執念、それとただ純粋な美しさ」
笑みを浮かべるアウル。竜の姿の時よりずっと表情が掴みやすい。
そして、奴は指を鳴らし、その背後に巨大な鏡が現れる。
「ッ――――?」
鏡は俺の姿を写し、俺の装備をアウルの身体へと反射させる。
……なんだ、いったい何が起きている?
「なるほど、これが帝国の新兵器か。名前は?」
今まで纏っていた衣服とは違う、俺が着込んでいる隠密コートとまるで同じ装備に変わったアウルが、黄金の光線銃剣を握りながら問いかけてくる。
……俺の装備を完全にコピーしたということか、色こそは黄金だが。
「インテグレイト――」
「ふむ、“統合するもの”か。彼奴等、再び戦争を仕掛けるつもりかな」
そう笑ったアウルがビームブレードを起動し、自らの指を切断する。
そして殺傷設定を変更して、残る指で刃に触れた。
「なるほど。生体を認識し切断するか否かを判断しているのか。
独特の機能だな。面白い武器だ」
言いながら、切り落とした指をつまみ上げ、繋ぎ直す。
完全に焼き切れていたはずなのに、ものの数秒で繋がるのだから人間ではない。
「……ジョン、お前、どうしてあの時、切断できる出力にしなかった?」
「あれはゲームだった。非殺傷設定を解除するのには相応しくない。そう思った」
「ふふっ、そうか。それで確実な勝ち筋をひとつ見逃したか――」
責めるような口調だが、それでも彼は優しげに微笑んでいた。
「なるほど、お前は勇者らしい。どこかあの男のような甘さを抱えている」
アウルの瞳の奥、俺の知らない勇者・ジョージの影を見る。
「人間としては好きだ。お前のような矜持を、倫理観を持つ男は。
だが、このままお前を行かせれば、あの日と同じ失敗をしてしまうだろう」
黄金色のビームブレードが輝く。アウルは、刃を抜いた。
「……非殺傷設定だ。ジョン、俺に証明してくれないか?
お前がシルフィの力になれるのか、否かを」
振り抜かれた刃を、こちらのインテグレイトで受け止める。
剣聖との戦いの記憶が活きた。
「良いぜ、また遊ぶって約束だったしな――ここにシルフィはいない」
「くくっ、良いね。そういう態度は好きだよ、ジョン」
身を屈め、アウルの刃を逃す。
同時に退きながらインテグレイトの弾丸を放つ。
「ふむ、それがこの武器の使い方か」
こちらの弾丸を避けながら、アウルも同じように射撃を行う。
流石は熟練の戦士、順応が速い。
しかし、光線を避けるということは、竜人形態のような頑強さはないのか。
「ッ――地の利を捨てるか。アウル!」
「ふん、斬り合いたいという欲の方が大事なのさ」
あえて階段を飛び降り、俺と同じ高さに来たアウルが、その刃を振るう。
俺の知識には無いような構えから繰り出される斬撃。
剣聖との戦闘経験がほとんど役に立たない。動作が始まるまで軌道が読めない。
「ふむ、よく対応できるな。
帝国の人間は知らないような攻撃をしているはずなのに」
そう言ったアウルが再び構えを変える。
今度は、構えから振り下ろすまでの動きが最小限のものだ。
ッ……剣聖よりも速いわけではない。だが、この技巧、加速思考でも。
「“見て”から対応しているな? ジョン。なんとなくカラクリが見えてきたぞ」
瞬間、背後からアウルが俺の肩を掴んだ。
加速思考を発動して理解する。
あいつ、左手を虚空に突っ込んで、俺の背後から出しているのだ。
「ッ、魔法使いめ――!!」
こちらの重心を落とすことで、アウルの左手を引きずり込む。
そして、奴の体勢を崩し、インテグレイトを連射する。
「――っ、種明かしに躍起になり過ぎたか」
俺の肩を掴んでいたアウルの手が離れる。
非殺傷設定のインテグレイトが効いたのだ。奴の身体は麻痺した。
「俺の勝ちだな? アウル」
「……ああ、認めよう。お前の力を。しかしなんなんだ、その力は。
まるで、時を止めた魔術師のような。いや、その割には自由が効いていない」
そこまで見抜いてくるか。流石は悠久の時を生きる竜。
身に着けている剣技の多さもそうだが、凄まじい洞察力だ。
「――加速思考だ。脳の機能を増幅させて、思考だけを加速する」




