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優しい二人

ポトポトと水たまりを作る私。

シュウちゃんから借りたタオルも既にもうビチョビチョで

私は保健室に連れていかれタオルでもみくちゃにされながら拭かれた。

「とんでもなくびしょ濡れねー。体冷えると風邪引くから…なんか暖かい飲み物でも作って来てやるから大人しくしてなさい」

保健室の先生にそう言われ、私は今大人しく待機中です。


着替えの服も持っていない私はシュウちゃんの換えのジャージをとりあえず借りてグッショリ水分を吸った制服を脱いだ。

大きくてブカブカのジャージに着替えて、申し訳ない気持ちでいっぱいの私にシュウちゃんは「やっぱり美晴には大きすぎだね」なんて言って笑っていた。


何も言わないシュウちゃん。

だけどもう…全てバレてしまっているんだなぁー…って思う。

無理に聞かないでくれる優しさが心に染みて…今にも涙がこぼれそうです。


そんなしんみりした空気の中

ドダーーーン!!!と保健室のドアを力一杯開けて中に入って来たのはサトちゃんで

アイロンとアイロン台を脇に抱えて入って来て、躊躇もなくそれらを捨てると私に思いっきり抱きついてきた。


「あっあのアイロン…壊れっ」

「ほんっとうにバカなんだから!もう知らないんだからね!美晴なんて風邪引いちゃえばいいのよ!…美晴のバカー!」


サトちゃんは私にそう言いながらもギュウギュウと抱きしめてくれて…

私の頭をげんこつでコツンと叩くと「コレでとりあえずはチャラにしてあげるわ」

そう言って笑ってくれた。


「ごめんね美晴?サトコに言った。」

そう言ったのはシュウちゃんで、困った顔をして放り捨ててあるアイロンを拾いながら私の隣まで来てくれた。


シュウちゃんは私の前に立ち優しく私の頭を撫でると

「俺たちが一緒にいるから…だから美晴、一人で抱えこまないで。わかった?」


優しく笑いながら私を見つめるシュウちゃん。

そして私を抱きしめて離さないでいてくれるサトちゃん。


そんな二人の思いが私の中に流れてきて


私の目が熱くなった。



びしょ濡れの制服はアイロンで水気を無理矢理とばして保健室に預けてきた。

先生が「しょうがないから何とかしといてやる」との事。

午前中は仕方ないから借りたジャージで過ごしなさいとも言われ、私はシュウちゃんから借りた大きいジャージのまま教室に戻るはめになった。


教室に着くと私の机は綺麗に拭かれて元通りに置いてあり、サトちゃんやシュウちゃんへの言葉に表せない気持ちでいっぱいになった。


「あの…えっと……ごめんな――」


隣にぴったりと寄り添ってくれている二人に謝ろうとしたら


「謝ったら怒るからね?美晴は謝らなきゃならないよーな事してないでしょ?」

「そうだよ。むしろ俺たちが謝りたいぐらいなんだから。だからゴメンナサイは禁止。」


はて?何でお二人が謝りたいのでしょう?


不思議な顔のまま二人を見ると、少し悔しそうな顔のサトちゃんが


「ほんと。謝りたいのはあたしの方。なんとなく…気がついてたのにさ…美晴からSOSが来るまで見守ろうとか…バカかあたしはって話だよね」


「俺も…まさかこんな直接的な事されてると思ってなかった。せいぜいなんか嫌味言われてる程度かな…って。サトコと俺が側に居れば少しはマシになるかなって…ごめんな美晴。一緒のクラスなのに気がついてやれなかった。」


あぁ…二人とも本当に優しいです。

弱虫で、本当の事を言う勇気が無かったのは私です。

私が最初から勇気を出して相談していれば……いいえ、こんな事をしている犯人に立ち向かって居ればよかっただけのことなのです。そうすれば二人にこんな辛そうな顔させないですんだのに…


情けなくて…二人の優しさが心に染みて…とうとう我慢していた涙腺が決壊した。…涙が止まらなくなった私を二人は静かに見守っていてくれた。


泣きじゃくる私とソレをなだめるシュウちゃんとサトちゃん。

そんな異様な光景に登校してきたクラスメイト達が注目するなか――


シンっと急にクラスが静かになった。


一瞬にして張り詰めた空気――

涙を拭きながら顔を上げたそこには、リオ君の険しい顔があった。


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