表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/112

質問

「早とちりしてしまい、申し訳ございません……!それから、私の選択(意思)を尊重してくださり、ありがとうございます!」


 謝罪とお礼を口にした私は、ペコリと小さく頭を下げた。

気を引き締めなくてはならないのに、嬉しくてついつい頬が緩んでしまう。

口元を手で覆い隠す私は、『まだ話し合いの途中だから』と己を諌める。

そして、何とか表情を取り繕い────私は気持ちを切り替えた。


「ところで、一つ質問があるのですが……復讐とは、一体どういうことですか?」


 意図せず聞いてしまった会話を思い返し、私は単刀直入に質問を投げ掛ける。

『正直に話して欲しい』と申し出ると、旦那様は困ったように眉尻を下げた。

告白を躊躇うように視線を泳がせ、曖昧に微笑む。

でも、『きちんと話をしよう』と言い出したのは彼なので、誤魔化すことなど出来なかった。

『隠し通せない』と判断したのか、旦那様は観念したように口を開く。


「ハワードから、偽聖女扱いされたところまでは聞いていたから、天罰の意味も込めて復讐したんだ。まあ、なかなか上手くいかなかったけど……でも、それももう終わり。明日でメイヴィスの居た世界(下界)は────滅びる(・・・)から」


 神妙な面持ちで世界崩壊を語った旦那様に、迷いはなかった。

神の花嫁に手を出した人間達に天罰を下すのは、もはや決定事項なのだろう。

人間達に辿る悲惨な末路に、私は複雑な感情を抱いた。


 トリスタン王子たちの自業自得とはいえ、世界崩壊はさすがにやり過ぎなんじゃ……?

罪のない人まで巻き込むのは、正直気が進まないわ……。


 人としての在り方や価値観を捨てきれない私は、悩ましげに眉を顰めた。

自分に決定を覆すほどの権限はないが、口を出す権利くらいはあるだろう────と判断し、私は顔を上げる。


「差し出がましいお願いかもしれませんが、その……世界崩壊は、どうにかなりませんか?無関係の人には、温情を与えて欲しいんです……」


 躊躇いがちに黄金の瞳を見つめ返す私は、懇願にも似た響きでお願いした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ