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気遣い

 『宝物庫か?』と疑うほど豪華な部屋で眠りについた私は、ふと目を覚ます。

時の流れがないため、天気は寝る前と同じ快晴だった。

窓から差し込む陽の光は眩しいものの、日向ぼっこをしているようで心地いい。

『こうやって、ゆっくり眠るのも久しぶりだな』としみじみ思う中、コンコンッと部屋の扉をノックされる。


「は、はい!どうぞ」


 慌てて身を起こした私は、乱れた髪や服のシワを直した。

ふわふわとした意識から一気に覚醒し、私は急いでベッドを降りる────と同時に部屋の扉が開いた。


「やあ、メイヴィス。よく眠れたかい?」


 そう言って、扉の向こうから現れたのは────他の誰でもない旦那様だった。

『入るね』と一声かけてから足を踏み入れる彼に、私は軽く会釈する。


「はい、おかげさまでぐっすり眠れました」


「なら、良かったよ」


 僅かに表情を和らげる旦那様は、室内の中央にあるテーブルまで歩み寄った。

慣れた様子で椅子を後ろに引くと、私に座るよう促す。

お姫様のような扱いに、私は戸惑ったものの……旦那様の気遣いを無下にする訳にはいかず、言われるがまま腰を下ろした。

初めてのエスコートに頬を赤くする中、旦那様は向かい側の席に腰を下ろす。


「生活に不便はないかい?」


「は、はい。特にありません。城の皆さんには、本当に良くしていただいるので」


 本心を口にする私は、あれこれ世話を焼いてくれる天使達を思い出す。


「慣れないことばかりで戸惑うことはありますが、下界に居た頃よりずっと快適です」


「そっか。それなら、別にいいんだ。でも、困ったことがあれば、いつでも言ってね」


「はい、ありがとうございます」


 慈愛に満ち溢れた黄金の瞳を前に、私はコクリと頷いた。

『優しい神様ね』と密かに感動する中────またもや、部屋の扉をノックされた。

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