表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/112

異臭

「っ……!!くそ……くそっ!!こんな奴にメイヴィスを渡して堪るものか!!」


 すっかり頭に血が昇ってしまったトリスタン王子は、血走った目でこちらを見つめる。

嫉妬に狂いそうになりながら、彼はこちらへ手を伸ばした────が、届かない。

鉄格子に阻まれて、行動を制限されているため、色々と限界があった。


 馬鹿な人……どんなに手を伸ばしても、どんなに私を欲しても、どんなに愛情を注いでも、両想いになる日は来ないというのに……。

真実の愛だなんだと騒いで、愚かな真似をしなければ、それなりに楽しい人生を送れた筈よ……まあ、今となってはただの夢物語に過ぎないけど。


「おい!こっちに来い、メイヴィス!今、私が目を覚ましてや……」


「────目を覚ますのは君の方だよ、バカ王子。いい加減、失恋した事実を受け入れなよ」


 トリスタン王子の言葉をわざと遮り、旦那様は勝ち誇ったように笑う。

『メイヴィスに愛されているのは、この僕だ』と主張し、顎を反らした。

トリスタン王子は目を吊り上げ、『ふざけるな!』と怒鳴り散らす。


「ふふふっ。その威勢の良さだけは、褒めてあげるよ。でも────メイヴィスを死に追いやった罪は、きちんと償ってもらう」


 スッと笑みを引っ込めた旦那様は指先に神聖力を集め、パチンッと指を鳴らした。

すると────トリスタン王子は突然、後ろに倒れる。

ビクビクと痙攣しながら、彼はどこか苦しそうな表情を浮かべた。


 ビックリした……。

とりあえず、致命傷になりそうな傷はなさそうだけど……旦那様は一体、何をしたのかしら?


「旦那様、トリスタン王子は何故倒れ……えっ?何!?この臭い……!」


 突然出現した異臭に眉を顰め、私は手で鼻を押さえる。

そして、臭いの発生源を探すため、キョロキョロと辺りを見回した。

すると────下半身を濡らすトリスタン王子の姿が目に入る。

状況から見て、彼の尿が異臭の原因だろう。


「旦那様、まさか……」


「いや、違うからね?僕は別にお漏らしさせようとした訳じゃないよ。そこは勘違いしないで」


 疑いの目を向ける私に対し、旦那様は慌てて弁解を口にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ