グリズの恋と新しい村への出発。
「それで、その好きな人とはどういった経緯で知り合ったんですか?」
目の前でグリズはシャノンたち女性陣に追い込まれていた。
グリズの横にいた俺は女性陣に場所を譲り渡す。
グリズがまるで裏切り者でも見るような目で見て来ていたが、こんなところで話をするのが悪い。
みんなと仲良くなって恋バナができるようになったようで何よりだ。
まぁグリズの恋バナに需要があるかどうかは別問題だが。
俺はグリズが準備した紅茶を飲みながら、グリズの部下たちが撤収作業に入るのを見ていた。
グリズの恋バナのおかげで?訓練は休憩のはずがそのまま終了になってしまった。
追い込みすぎもよくないからな……もうあれでは遅いかもしれないが。
目の前でグリズの部下たちがゆっくりとゾンビのように歩いていく。決してふざけているわけではないだろうが数日は動けなくなりそうな疲弊具合だ。
それにしても雪結石か。
たしか、雪の多い地域のごく一部でしかとれない魔石だった気がする。
白色にエメラルドが混ざっていてとても綺麗な色だった覚えがある。
装飾品としても使える上に、寒さ耐性もついているため、冬場になると冷え性に困っている女性からの需要が多く、ほとんどか一般市場には出回らないって話だった。
一度カラがどこでその噂を聞きつけたのか、雪結石を欲しいと言い出し調べたことがあるが、その当時も寒冷地でしか取れないと言われたことであっさり無茶ブリしてきたっけ。
「寒さ対策のためにわざわざ寒いところへ行く意味がわからないわ。ロックどっかで探してきて」
結局見つからず、外に行くと時には寒さ対策の補助魔法を使っていたのはいい思い出だ。
「なるほど、その女性は貴族の女性でその女性へプレゼントをしたいってことですね」
「叶わぬ恋ほど燃えるものですね」
「いいでしょう。私たちが力になりましょう」
『雪山楽しそうだな』
雪結石がとれるのがコロン村だったかどうかは覚えていないが、雪山と言えば温泉が近くにあることが多い。
雪景色を見ながら温泉に入りにいくのもいいな。
それに……。
「寒い地域に行くってことは……寒冷地仕様の服が必要ね!」
「可愛い服買いに行きましょ!」
「これって経費になるわよね? グリズさん?」
「もちろんだ! 俺を誰だと思っているんだ」
グリズは大見えを切っていたが、どこか近くの街で雪結石を探した方が安上がりにはなりそうだ。
「ロック、それじゃあ買い出しに行くぞ」
どうやら話がまとまったらしい。
「待て、待て。まずコロン村まではどれくらいかかるんだ?」
「だいたい馬車でまっすぐ行って夏場なら5日って距離だな。今の時期だとその倍くらいはかかるだろうがロックの仲間なら問題はないはずだ」
「行くのはいいが……帰ってこれるのか?」
雪で閉ざされた村まで支援物資を届けに行くのはいいが、春まで帰れませんではさすがに困る。
「それは大丈夫だ。一度雪をどうにかできれば対策はあるんだ」
「なら大丈夫か。みんな……」
俺が声をかけ終わる前に目を輝かせながら返事をされてしまった。
「行きます!」
「行きましょう!
「雪合戦!」
「行くです!」
『雪祭りだー』
なんか色々思いはあるらしいが、パトラたちは雪も見たことがないからな。
全員でグリズの恋を応援しながら雪の村へ行くことになった。
「それじゃあまずは食料や装備とかの買い出しからだな」
「任せておけ!」
それぞれが欲しいものをグリズに購入してもらっていたが、準備段階でグリズの顔が雪よりもまっ白くなっていた。破産しなければいいけど。
翌日、俺たちはグリズたちと共にコロン村を目指すことになったのだが、グリズの部下が寝込んだまま動けなくなったため結局3日後の出発となった。
目指すはコロン村。
そこで俺たちはまた変わった出会いをすることになるとは思いもよらなかった。




