グリズ惨敗。見せ場特になしのため割愛。
浜辺でのBBQの翌日、メイとマデリーンはまだ戻ってきていなかったが、グリズとの約束を守るため水上での訓練をすることになった。
当初グリズは人魚たちを相手に無謀にも水の中での戦闘訓練を希望してきた。だが、水中での勝負は人魚たちの圧勝で間違いないので、まずは水上での訓練にしてもらった。瞬殺されてしまってはあまりにグリズの部下たちが可哀そうだ。
半魚人が街を襲うというのが未然に防がれた以上、もう訓練は必要ないのではないかとも思ったが、今回のイベントのメインは人魚たちと人の交流を目的とすることになった。
今まで人魚や半魚人は人間と交流をする時は隠れて交流をしていたが、今後は積極的にかかわっていくことに決めたようだ。
人魚は同じように言葉を話すのにもかかわらず、亜人ではなく魔物扱いされていたというのがある。人魚からしても、人間にどう思われていようがたいした問題ではないと思っていたが、今回のことのように無駄なトラブルに巻き込まれないためにも、しっかりと交流することが大切だということになったのだ。
交流をして顔の見える関係を作っておけば、今回のような事件に巻き込まれた時に対策も取りやすくなる。
それに今回のことでグリズは、商売人として人魚がとった魚をブランド魚として売り出すことを考えついたらしい。
「人魚印の新鮮魚なんて言って売り出したら、絶対に売れると思わないか? それに街で必要だと思った時にピンポイントでとってきてもらえるのも助かる。まぁ沖では半魚人が魚を確保して港に運ぶのは人魚って言うのは秘密だけどな」
なんてことをグリズは話していたが、さすが商売人の息子ってところだろう。
今回のことで半魚人と人魚の関係は一時的には悪くなったものの、最終的には協力関係が築けたので、今後は安全面でも協力できるはずだ。
訓練のいいだしっぺだったメイを午前中いっぱい待っていたが、帰ってくる様子はなかったので、きっとどこかで道草でもしているに違いない。
その面倒を見させられているマデリーンの気苦労はしばらく続きそうだ。さすがに自分たちのテリトリーの近海の海で迷子ってことはないと思いたい。
グリズは、人魚たちとの交流を街の人たちにも宣伝をしてくれた。まだ人魚や半魚人に恐怖を感じている人もいるが、仲良くやっていけることをアピールするらしい。
開催までの時間がそれほどなかったのに浜辺に露店なども並べてちょっとしたお祭りのようにしてしまったのは、さすが商売人だ。
開催場所は海岸から近い海での勝負となった。
グリズは自信満々だった。
「俺に大見えを切った人魚がいないのは残念だけど、この場で俺たちの力を見せてやろうじゃないないか。訓練とはいえ負けるんじゃないぞ」
「「「「「オォー!!」」」」」
「グリズ様の仰せのままに。お前らさっそく準備をしろ」
「はっ!」
グリズの部下たちもやる気十分って感じだった。
訓練の仕方としては、海上で魔物に襲われたという設定になった。
船の上から攻撃をするグリズたちと、水中から攻撃をする人魚たちで、グリズたちは制限時間内に船から落とされたら負けということになった。
実際に訓練が始まり、木剣を持ったグリズの部下たちは人魚や半魚人を船の上に上がらせないようにと一生懸命剣を振るうが、水上から攻撃しているのにもかかわらず、かすることもできず次々と海の中へ落とされていった。
勝負はなんの見せ場もなく、見るも無残な感じでグリズたちの惨敗だった。
しかも、半魚人と人魚たちは魔法すら使っていないので、力の差は歴然だった。
唯一、ワンダーウルフ白狼だけは、半魚人といい勝負をしていたが、だからと言って勝てる勝負ではなかった。途中でまわりから人がいなくなり犬かきをして脱出を試みたが、あっという間に半魚人に追い詰められ海岸へ打ち上げられていた。
「なぜだ……こんなにもうちの兵士たちは弱かったのか」
負けた直後グリズはかなり放心状態になっていた。俺は一応フォローをしておく。
「まぁ、フィールドの相性もあるからな。仕方がないよ」
「ロック……とは言っても俺もそれなりに訓練された兵士を雇っているつもりなんだぞ」
「訓練をされた兵士だからといって、足場の踏ん張りがきかない水の上に慣れているかはまた別問題だからな。自分の得意なフィールドに持ち込むっていうのも大切だと思うぞ」
「そういうものか。いや……逆に考えればこれだけ優秀な奴らと組めるということは……海上は俺たちが支配できるってことなんじゃないか」
「まぁそれはそうだけど、人魚たちも最強ってわけじゃないからな」
「何を言ってるんだ? これだけ強ければ……なぁお前たち半魚人なら海を制覇できるんじゃないのか?」
「いや、俺たちよりもロックさんたちの方が強いですよ」
半魚人たちは普通に首を横に振りそう答える。
「ロックたちは人外だとは思っているが、水中でもなのか?」
「人外とは失礼だな」
「ロックさんたちが海を割ったのはあれは本当に笑えなかったわね」
「フィールドの相性とかってさっき言っていたけど、どの口が言うのよ! って思いましたもの」
予想外に俺への風当たりが悪くなっていた。
そんなことを言われても困る。しかもやったのはラッキーとドモルテであって俺ではない。
「まぁ今日はいい訓練になったってことでいいんじゃないのか?」
流れが悪くなったときはさっさと終わらせてしまうに限る。
「いや、このままロックの力を見ないで終わるわけにはいかないだろ。なぁ? お前らもそう思うだろ?」
グリズに声をかけられた部下たちが、すごく嫌そうな顔をしながら、獣のような雄たけびをあげている。シャノンとパトラの戦うのを見ていたはずだし、ドモルテの魔法も見たはずなんだけどな。
部下たちは上司の命令にイヤだなんて言えないんだろうな。可哀そうに。
「グリズたちと勝負をするってことなのか?」
「もちろんだ。ただ……」
グリズはラッキーの方を見る。
「ラッキーは不参加にして欲しいってことだな。わかった。あとは?」
「あとは大丈夫だ」
「わかった。うちのメンバーでやりたい人」
そう声をかけてまっさきに手をあげたのはガーゴイルくんとオレンジアントEだった。やる気がるのはいいことだ。ただ、勝負になるのか?とちょっと心配になってくる。
グリズ「ちょっと待ってくれ! なんでカットされてるんだよ」
ロック「全員がほぼ一撃で海に落とされていたらカットするしかにだろ」
グリズ「あれは俺の部下が男で人魚に見とれていただけなんだよ。もう一回人魚たちとやらせろ」
ロック「わかった。ハンデとして半魚人だけな」
グリズ ORZ
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