お疲れ会をかねた砂浜でのBBQ~彼女は結局ふっ飛ばされた~
「ちょっと! ロックおかしいじゃない! なんで一緒に戦った戦友の私たちに何も言わないでうちのお母さんがあなたの仲間になっているのよ!」
リディアの弟子のリザを兵士に引き渡し、事件が解決してから俺たちは海岸でBBQをしながら話をすることになった。半魚人やグリズなども参加してなかなか大掛かりなものになっていた。
そこで問題になったのがメロウを仲間にしたことだった。
メイたちには早めにメロウの報告をした方がいいと思ったのだが、どうも理解を得ることができなかったらしい。
「メロウが俺たちの仲間になりたいって言うし断る理由はないだろ?」
「じゃあ私もロックの仲間になる」
「私だってなりますよ!」
メイと、マデリーンが俺たちの仲間になりたいと言い出し俺に詰め寄ってきていた。
別に仲間になりたいならそれもいいかと思っていたが、予想外なところから反対の意見があがった。
「何を言ってるのかしら、あなたたちはダメよ?」
メロウはメイとマデリーンを呟くようにさらっと拒否をした。
「なんでよ? ママを助けるためにこんなに頑張ったのよ。私たちは半魚人とも戦って、慣れない人の街の中にいって聞き込み調査をしたり、ロックに協力するためにあんなことや、こんなことまでさせられたのよ」
だいぶ誤解を招きかねない言い方だが、ここでツッコミをいれる空気ではなかったので一旦様子をみる。巻き込み事故というのはどこでも起こるものだ。
ツッコミをいれるということがいつも正しいとは限らない。
「メイにはここでしっかりと学んで欲しいの。私の後を継ぐのはあなたしかいないわ。今回の事件というのはあなたの成長に必要なことだと思うのよ。あなたは少し自由奔放に育ちすぎてしまったから、この辺りで仲間をまとめる方法の大切さも感じて欲しいの。自分がすべてをやるんじゃなく誰かに頼ることでできることは大きく変わるわ。それにマデリーンにもメイをしっかりと支えて欲しいって思っているの。わがままをいうメイを叱ったり、支えたりできるのは沢山の人魚がいる中でもあなたしかいないわ。あなたたち二人ならどんな困難も乗り越えられると思うの」
「ママ」
「女王様……」
その場にいた全員が一瞬、感動的なシーンかと思ったが、マデリーンとメイが声をあわせてはりあげた。
「「どうしても私たちをやっかい払いしたいのね!!」」
「フフッ意外とカンが鋭くなったじゃない。もう女王飽きたし今回捕まって思ったのよ。人間の街とかの方が面白いって」
「上等よ。そんな理由で女王を辞められるわけがないでしょ。マデリーン協力しなさい。お母様とは言えどこんな勝手は絶対に許しませんわ」
「いいわ! 私だって婚期をこれ以上遅らせるわけにはいきませんの。人魚の旬は意外と短いんです。それをこんなわがまま姫の相手なんてしてられませんわ」
メロウ対、メイ、マデリーンの戦いの火蓋が今落ちようとしていた。
そんな3人の争いにまったく興味がなさそうなメンバーはパトラを中心にBBQをすすめていく。お子様たちにとっては大人の事情なんてどうでもいいのだろう。
「パパー、そこの貝食べたいですー」
「はいよ。いい感じに焼けてるぞ」
「ドモルテ様、このカニすごく甘みが強くておいしいですよ」
「どれどれ、うん。この歯ごたえ。ぷりぷりしていて最高じゃないか」
パトラとララたちはのんびり海の幸を堪能している。
この海の幸は人魚たちが海の中から捕まえてきてくれたものなので、めちゃくちゃ新鮮で生きがいい。ガーゴイルくんは魚介の料理にも精通しているようで、みんなに感心されながらどんどんさばいていく。
久しぶりに外にでてきたオレンジアントたちも、わちゃわちゃと楽しそうにしていた。
人魚たちが跡継ぎ問題で揉めている間に、オレンジアントたちは魚が足りなくなるとワイバーンに乗ってそのまま自分たちで魚を捕まえにでていった。
俺もメロウを仲間にしたことから、跡継ぎ問題に話のネタがシフトしたので魚介のBBQを頂くことにする。
オレンジアントたちは食べたい魚や貝がなくなると、ワイバーンに乗って空から的確に魚を狙っていく。子竜騎士は下から見ていてもカッコいい。戦闘技術向上も必要だと思うが、本当はこういったのんびりと食料を手に入れるために力を使えるのが幸せだと思っている。
争いがない世界なんて絶対にありえないが、それでも戦うために使う力よりもみんなで食べる食料を狩ってこれる能力の方が力の使い方としては何倍もいい。
強さがなければ生き残れないが、その強さを正しく使う方法も身につけてもらいたいとつくづく思う。まわりに悪い例がいすぎたせいかもしれないが。
子竜騎士たちはさっそくとってきたものをガーゴイルくんのところへ持っていき調理をお願いしている。これぞ産地直送だ。
「ロック……いったいお前はなんなんだ?」
グリズがなにかこの世のものじゃない者を見るような目で見てくるが、なんなんだと言われても困ってしまう。なんと返答するべきか一瞬考えていると、シャノンがフォローしてくれた。
「ロックさんは……ただのお人よしです。まわりに被害ができないように考えて、考えて周りを常に助けようとしています。本当ならもっと力づくでどうにでもなるのにそれをしないんです。私のことだってもっと……ヒック……わたしゃのことだって……」
シャノンはいきなりコップを上に高々と上げたかと思うと、くるりと1回転して仰向けのまま砂浜の上に寝てしまった。
はぁ、誰だシャノンにお酒飲ませたのは?
まぁたまには羽目をはずすのもいいけど。
「ロック悪い、俺が酒もってきたからだな。でもシャノンさんが言っていることは遠からずってところだろう。ロックがお人よしなのは間違いない。これだけの戦力があればいくらでも、どんな方法でもとれるのにそれを取らないんだからな」
グリズは謝りながら俺にも酒を渡してきた。
一応受け取り軽く口だけつける。
「ただのお人よしってわけじゃないんだけどな。でも、いい意味でかかわる奴らには幸せであって欲しいって思ってはいるよ。俺に悪意を向けてこない奴には特にね」
「変わった奴だな」
「グリズにだけは言われたくはないけどな」
俺とグリズはお互いのグラスを優しくぶつけ合う。
俺たちがゆっくり話をしていると、3人の話し合いの決着がついたようだった。
最終的にはメロウが二人を地平線のかなたまで水魔法で吹っ飛ばしたから、妥協点は見つからなかったんだろうけど。
サンがメイの後を追いかけようとしていたが、メロウが手を振って行かなくていいと合図をしたことで行くのを諦めた。
メイにあってはラッキーの風魔法をくらっても元気でいたくらいだから水魔法では死にはしないだろう。
親子の最後の別れだというのに、こんなのでいいのかと思ったがメロウが、「親離れする年を逃すと大変になるからね」ということだったので納得しといた。
それに会えないわけではないからな。
そんなこともありながらもBBQは楽しく進み、人魚や半魚人と人間たちの交流の場になった。翌日、さらなる交流のためにグリズ対、人魚、半魚人の水上での訓練をすることになった。
正直グリズたちがどれくらいやるのか楽しみだ。




