海底の女王メロウ
コミカライズが決定しました。
俺たちが海岸に着くと、チャドの船はもうすでに沖へとでていったところだった。
ちょうどいいころに海岸につくことができた。
海岸からグリズがこっちを見ながら気持ち悪い笑みを浮かべて勝ち誇っているのが見える。
「そろそろだろうな」
ちょうどその時、街の方からチャドの声が聞こえてくる。
「半魚人どもよ! 時は来た! 今こそ街を襲うのだ! この街を水の下に沈めすべてを蹂躙してやれ。今まで蔑まれてきた鬱憤をはらすのだ。今こそ人間どもに復讐だ」
チャドの性格からして、俺たちが追いかけてきたところで半魚人に命令をして足どめをするだろうとなんとなく予想はしていた。
あの手のタイプは自分が圧倒的な有利な状況から相手が追い込まれるのを見るのが好きなものだ。海へ逃げてしまえばもう追い付かれることはないと思っているのだろう。
チャドの顔がどんどん醜くひどい笑い声がここまで聞こえてきそうだ。
だけど、彼の思い通りにはいかない。
半魚人が操られていた時に使っていた魔道具はドモルテに改良してもらって、街の中枢に置いてもらった。ついでに拡声する機能もつけて。
これでチャドの悪事は全員が知ることになるだろう。
それと同時に、チャドを乗せた船に半魚人と人魚たちが一斉に放水を始める。
可哀想に……。
チャドの船は徐々に海底へと沈んでいく。
「やめろ! 俺じゃなくて街を攻撃するんだ! なんでわからないんだ。この化け物どもめ!」
先ほど前の余裕の笑みはなく、遠目に慌てふためく姿が見える。
まだ自分の状況を飲み込めていないのか怒鳴り声が聞こえだいぶ混乱しているようだ。
「アハハッなんだあの姿。まるで踊っているみたいじゃないか。これでチャドも終わりだな」
「あぁ」
もはやチャドになすすべはない。
街の方からはチャドの悪態がずっと垂れ流しになっている。
「さてと、まだやり残したことがあるな。ドラクルとメイのお母さんを奴隷から解放しないといけないし、倉庫からはまだ助けられていない魔物も助け出さないといけないからな」
「えっ私はいいわよ? このままで」
メイの母親はまるでなんでもないかのように、あっけらかんと奴隷とかまったく気にしていないようだった。
「いいってことはないだろ? メイだって心配していたわけだし。奴隷になるってわかってるのか?」
「別に……? 私、海の中飽きちゃったのよ。だからほら、ロック様が拘束してくれていれば理由になるし。それに……拘束されているのもなかなかいいものよ? だから、一緒に連れていって」
「ちょっとよくわからないけど、えっとそういえば名前は……?」
助け出したのはいいが、まだ名前を聞いたなかったことを思い出した。
ずっとメイのお母さんってわけにはいかないだろう。
「メロウよ。よろしく、ロック様」
【海底の女王メロウが仲間になりたがっています。仲間にしますか?】
頭の中に例の声が響く。どうやら本当に仲間になりたいらしい。
「仲間なってもいいが……いいのか? メイはお前を助けるために色々頑張ったのに」
「いいのよ。そろそろ親離れしないといけないと思っていたし、それに……一生会えなくなるわけじゃないわ」
「わかった。よろしく」
「ロック様よろしくお願いします」
【海底の女王メロウが仲間になりました。場所、設備を1つまで選択することができます】
◆池(中)
◆川(中)
◆海(中)
◆小屋(拡大)
◆箱庭拡張
◆畑(拡大)
◆果樹 バナーナ
◆果樹 りんご
◆鉱山(中)
◆山
◆温泉
メロウを仲間にするのに、海が小さいままでは可哀想なので海を選択する。
中とはいってもかなり大きな広い海になるはずだ。
「ドラクルはあとで解放するからな」
「何回もその……俺みたいな奴を助けてもらってわるいな。ほんとすまない。俺みたいなゴミクズみたいな400を助ける価値なんてないのに。悪かったな」
「そんな気にするなよ。これからだからな」
ドラクルはいまだに自分の価値が400だったことにショックを受けているようだった。
「これがロック様の仲間になるってこと……すごい。力が湧いてくる。ちょっと箱庭の方に入ってもいいですか?」
「あぁ基本的に出入りは自由だよ。ただ箱庭の方がみんな気に入ってるみたいで出てこない奴は全然出てこないかな」
「ありがとうございます」
メロウはそのまま一度箱庭に入るとすぐにでてきた。
「すごく綺麗な海ね! 人魚の私でも感動したわ。ちょっと人魚の里へ取りに行きたいものがあるから取りに行ってきてもいいかしら? 戻る時には箱庭へって思えばいいのよね?」
「そうだよ。気を付けて行ってきてくれ」
メロウはまったくチャドに関心がないようだった。
俺たちがそんな話をしているとちょうどチャドの船が完全に沈んでいった。
今頃、あそこでは沈む船から救出された魔物やチャドたちが人魚たちに助けられているはずだ。
「それじゃロック様またあとで」
メロウが投げキッスをしてそのまま海の中に入って行くがまたすぐに海面から顔を出して大声で叫ぶ!
「あっ! ロック様、私メイは生んでいるけど今独身だから安心してくださいね」
「なんの心配だよ!」
メロウはそのまま海の中に潜るとそのまま高速で泳いでいった。
それからしばらくすると拘束された、チャドたちが人魚たちに連れられて戻ってきた。
チャドは海の上を引きずられて、かなり海水を飲んだようで苦しそうにしている。
まぁ人魚たちにもだいぶひどいことをしたからな。
あれくらいの復讐は仕方がないだろう。
チャドは俺たちの前に連れてこられるなり、喚き散らし始めた。
「お前こんな勝ち方して嬉しいのか! 絶対に訴えてやるからな」
「こんな勝ち方もなにもないだろ?」
「うるさい、うるさい、うるさーい! うちの兵士を倒したとしてもまだこの街の人の心は俺の人心掌握術の中にはまっている! お前らなんかがどんな手を使ったとしても勝てることはないんだ! それよりも、お前らに俺の沈没させた船を一生かけてでも返済してもらうからな」
「はぁ? 船は人魚が沈めたんだろ? 確か、人魚は亜人じゃなくて魔物なんだろ? 魔物が沈めた船は自己責任だったと思うけど」
「うるさい!」
そこにギルドの人間たちがやってきた。
ギルド長を始め、ギルドの受付の人などもいる。
「これで形成逆転だな。お前らよりも信用されているからな。この状況を見ればお前の行いも……」
「ずいぶん余裕ぶってるけど、まずは彼らの言い分を聞いてみたらどうだ?」
どうやら最後まで頭の中はお花畑で、ここまできても自分の思い通りになると思っていたらしい。失敗をしたときにどこで自分が間違いを認められるのかが大切になってくるらしいが、どうやら最後まで間違いは認めることはできなかったらしい。
「奴隷商人チャド、奴隷法違反、反乱罪、その他もろもろの容疑で逮捕する」
「なっお前ら俺がどれだけこの街に貢献したと思っているんだ」
受付にいた女の子は尊敬していると言っていたが顔が青ざめ、今でも信じられないといった顔をしているが、現実を受け入れるのも大切だ。
さて、あとはあっちの決着だけだな。
俺たちはもう一つの決着をつけにいく。




