人魚の落札とチャドとの対決のおまけのドラクル
「シャノンそれじゃここで残ってあとのことをよろしく頼むな」
「わかりました。お任せください」
シャノンにはナユタの面倒を見てくれるように頼んでおいた。
「それじゃロック行こうか」
「あぁグリズ頼んだ」
俺は朝からグリズの家へ行き、夕方の奴隷市に参加することにした。
ドブの知り合いということで参加することもできるが、グリズと敵対はしなくなったのでグリズ一派として参加させてもらう。
「ロック、本当にやるんだな?」
「あぁグリズは怖気づいたのか?」
「そんなわけないだろ。楽しみで仕方がないんだよ」
「なら良かった」
夕方少し辺りが薄暗くなって来た頃、奴隷市は開始された。
奴隷市は合法なものから明らかに違法なものまで様々なものが並んでいる。
「ロックなにか欲しいものあるか? ついでだから金出してやるぞ」
グリズが商品一覧を見ながら声をかけてくる。
「あっ……もしできるなら、龍神族のドラクルっていう奴を落札してくれるとありがたい」
「なんだ知り合いか?」
「まぁちょっと助けてもらったというか、損な役回りを引き受けてくれたんだ」
「わかった」
俺たちの目の前で色々な奴隷が売り買いされていく。ここにいる全員を助けてやりたいが、さすがにそういうわけにはいかないようだ。
特に違法に捕まえた犯罪奴隷なども結構多く取引きされているようだった。
セリの順番的にメイの母親は一番最後だった。
それから俺たちはセリが進んで行くのをみていると、しばらくしてドラクルがセリにかけられる。
「あぁそれでは100から、はい200、300、他いないか、他いないか?」
「グリズ……」
「大丈夫だ。400」
グリズが声をかけると辺りが一瞬静かになる。200と300で争っていた奴らも一瞬で戦意をなくしたようだ。
「はい! それでは400で落札になります」
どうやらグリズの悪評の効果らしい。グリズはしつこくセリで負けないという噂から他の奴らがセリから降りたのだ。まだまだ先もあるため、それほど欲しくないところでは争わないようだ。場内からはドラクルに同情的な声が聞こえてくる。
「どうだ、ロック少しは尊敬したか?」
「いや、確かにビックリした。それにしても400って安くないのか?」
「あぁめちゃくちゃ破格だろうな。ただ扱いにくい種族だから元々人気はないのはないんだ。今回落札しようとしていた2グループも戦闘奴隷と鉱山奴隷を専門に扱うグループだからな。要は使い捨てってやつだ」
運よくドラクルは俺たちに落札してもらったが、残念ながら他の人間に落札されたのでは運命が変わってくるらしい。ただ、その二つのグループよりもグリズの方が評判は悪いらしい。
「落札した奴隷はどうすればいいんだ?」
「最後にまとめて引き取りにいく。俺たちはまだ本番があるからな」
「そうだな」
それから奴隷市はだんだんと盛り上がりを見せていく。高額の美しい女性の奴隷なども取引が行われ、そしていよいよ、メイの母親の番になった。
正面の台の上に水槽が運び込まれ、そこには封魔の首輪をされたメイの母親がいる。
「それでは最後の商品になりました。海上を泳ぐダイヤモンドと言っても過言ではありません。人魚です。それでは10万から」
「はい、20万、30万、50万に飛んだ。はい60万、他にはいないか?」
ドラクルが少し可哀想になってくる。あまりにも落札価格に差がありすぎる。
グリズは100万と声をかける。
「はい、100万がでました。他はいないか? いなければ落札になります」
前の方に座っていて今までまったく動かなかった男たちが動き始める。
黒いシックな服で身をまとい、顔は布で隠されている。
一見してどこかの貴族がお忍びでやってきたように見える。
男たちはぼそりと200万とだけつぶやく
「に……200万? 200万が提示されました」
グリズは250万と言うと、男たちも負けじと260とつぶやく。
そこからはあっという間に400万を超え、最終的に500万でグリズが競り落とした。
「おぉー久しぶりに500万超えたな」
「別室会計はさすがグリズさんだな」
500万という境界を越えたことで場内も少しざわついてくる。
「これでいいんだな」
「あぁ助かった」
俺たちの前にいた男たちはそのまま会場からでていく。
この男たちは俺が手配をした半魚人たちだった。海から引き揚げた財宝の一部を売り払い身なりを整えてからドブの紹介ということで入ってもらっていた。
「それでは本日もご来場ありがとうございました。以上で今回の市場は終了となります。お会計は順番でお呼びしますので今しばらくお待ちください」
全体でのアナウンスがあり、すぐに黒服に身体を包んだ男たちがグリズのところへやってくる。
「グリズ様、別室をご用意させて頂いております。どうぞこちらへ」
「わかった。それじゃあ金を支払いに行くか」
「行こう」
俺とグリズはそのまま別室へ案内される。そこには両手を揉みながら待ち構えているチャドの姿があった。やっと直接対面することができた。
「これは、これは、グリズ様この度は人魚の落札ありがとうございました。本日も最高額での落札、もうこの街ではグリズ様以上のお方はいませんね」
「あぁそうだな。でも、今日のようは人魚の落札だけじゃないんだ」
「はい、なんでしょうか?」
「半魚人が襲ってくるって話なんだが、あれは自作自演なんだってな? 俺は怒っているんだよ。この街は俺が生まれ育った大事な町だからな」
グリズはチャドに直球で投げかけた。
「いったい何をおっしゃっているのか?」
いよいよ戦いの火蓋が切って落とされた。
チャドはしらを切って逃げるつもりのようだが、もうそんなことはさせない。




