闇夜の屋敷へ侵入してみた
箱庭内でみんなが寝静まった頃、俺は一人起き上がった。2時間くらいは寝ただろうか。
今からリランの妹を助けにいかなければいけない。
俺が箱庭からでると、空には星が輝いているが月は運よく隠れている。
「久しぶりに単独行動だな」
なかなか久しぶりな気がする。あのダンジョンで置いて行かれてから一人で行動することがなかったのでなかなか新鮮な感じがする。
いざ、チャドの屋敷へと思ったところで箱庭からパトラがでてくる。
「パパー私も行くー!」
「パトラ、今から行くのは遊びじゃないんだよ」
「知ってるよーだけど、リランの妹を助けに行くんでしょ? パパは子供の相手は苦手だからねー私がやってあげるー」
「それで心配で出てきてくれたのか? でも大丈夫だぞ」
パトラは俺の口に人差し指を1本突き出す。
「パパは一人で頑張りすぎですー。もっと周りに頼った方がいいってシャノンも言っていたですよー」
別に一人で頑張っているつもりはなかったが、どうやら仲間に心配をかけていたらしい。
「わかった。まぁパトラなら小柄で目立つわけでもないし連れて行っても問題ないか。そのかわり気を付けて行こうな」
「はーい」
なんとも気の抜けた返事だが、パトラはかなりしっかりしている。
「それじゃあ行くか」
パトラは俺の身体をよじ登り、当たり前のように肩車をする。
俺たちはそのまま闇夜に紛れてチャドの家に向かった。
チャドの家のまわりには数人の兵士が見回りをしている。昼間見た時と警備は変わっていないようだ。
「パパー任せてー」
パトラはそういうと、闇夜に紛れたまま近くまで近づき、一瞬のうちに兵士の一人を糸でグルグル巻きにして高い壁の上に吊るしてしまう。
たしかに昼間ならバレる可能性があるが、夜ならあの高さは見つかることも少ないだろう。そして、そのまま周りにいた兵士5人をあっという間に吊るしあげた。
「パパー行こー」
そしてそのまま正面から乗り込んでいく、途中で番犬として飼われているのか、ホワイトコヨーテという獰猛な魔物もうなりながら近づいてきた。騒がれる前に眠らせるしかない。
「お座り!」
パトラがそう小さく言うとホワイトコヨーテの群れは尻尾を隠しながらお座りしてしまう。もはや生き物としての格が違うのだ。
「わんちゃんたち、バイバイー」
パトラがそう言うとそのまま庭のどこかへ消えていってしまった。
たしかに自分一人でくるよりも、かなり楽だった。
「パパどこから入るの?」
「正面から入るよ」
俺はそのまま正面の扉の前にいき、剣で無理矢理開けようとするとパトラが、「パパーちょっと待って」そういうと、俺の頭の上にのぼると、そのまま2階の扉へ飛び乗り鍵の開いている窓から侵入してしまった。
なんでもできるんだな。子供の成長は早いというが。
先に一人で侵入はさすがに心配になってくる。信じて待つか、それとも、ここを先に開けるか? そう考えているとすぐにパトラが内側から鍵を開けてくれた。
「どうぞー」
パトラが仰々しく頭を下げながら室内へと案内をしてくれる。
外側の警備をしっかりしていたため、正面から忍び込まれるとは思っていなかったようで中の警備はかなり甘いようだ。
「パトラすごいな」
「子供は身軽ですからねー」
昼間、この家をぐるっと周りを確認したところほとんどの部屋に窓があった。
わざわざ窓がある部屋に違法奴隷をおいておくとは思えない。
いるとしたら地下や隠し部屋とかだろう。
もう運びだされていなければいいけど。
正面の扉を開け中に入ると夜だが、うっすらと灯りがついている。
完全に寝静まってはいるが、見回りの人がいるかもしれないため、慎重に進んで行く。
自分の呼吸の音がやけに大きく聞こえる。
魔物を発見するスキルを使って人がどのあたりにいるのかを確認しようとしたところ、どうやら壁に特別な魔法がかけられているようだった。
外から覗かれたときようの対策だろう。
ここからは内部の図面がわからない以上、一つずつ開けて確認していくしかない。
そう思い、扉を開けようとしたところで、パトラが俺の手を止める。
パトラはそのまま扉の正面に立ち目を瞑る。パトラの頭の触角のようなものが動き、何かを感じとっているようだ。
そのまま首を振ると、次の扉へと向かい、またそこでも首を振る。
それを何回か繰り返してから、パトラが扉に手を伸ばす。そこは地下への入口になっていた。パトラ優秀すぎるだろ。なんていうスキルなのか教えて欲しい。
「パパーここすごく嫌な感じがする」
「パトラ無理にはこなくても大丈夫だぞ。箱庭に戻っていてもいいからね」
「ううん。一緒に行く」
パトラは俺の手を強く握ってくる。いよいよ救出だ。




