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グリズとの交渉

編集中のものが投稿されてしました。

修正してあります。

「ちょっと待て、水中での戦闘訓練がやりたいのか? それなら人魚よりもいいのを知ってるぞ」


 水中での戦闘訓練をしたいだけなら半魚人でもサンでも派遣することはできる。


「なんだと? こんなモフモフを知っているくらいだから、人魚より面白い魔物か?」

「面白いかどうかわからないけど、1匹の人魚を落札して戦わせるよりしっかりと訓練はできると思うぞ」


「それはいい提案だな。だけど、お前になんのメリットがあるんだ? あいにく優しいだけの奴ってのは信用できなくてな。何が狙いだ?」


 グリズの狙いが人魚よりも水中での訓練だというなら俺が協力することで目的を達成させることができる。俺たちに協力させることができれば人魚救出もだいぶ楽になる。


「まず、質問に質問を返して悪いんだがなんで水中の戦闘訓練がしたいんだ? 水中での訓練ができれば人魚である必要はないのか?」

「あぁ、まぁ人魚が珍しいから欲しいっていうのはあるけどな。でも、絶対に人魚じゃなきゃダメかって言われればそういうわけじゃない。実はな……」

 

 グリズが何かを言いかけたところでマーキスが止めにはいる。

「グリズ様、その件はまだここで言うのは」

  

 先ほど、グリズが口を滑らせたことでマーキスも警戒をしているようだった。

 グリズも辺りを見回し警戒しているようなそぶりをみせる。


 あいかわらず住民たちは俺たちには興味がなさそうだが、どこで誰が聞いてるのかわからない。マーキスの様子を見る限り先ほど口を滑らせたことよりまずい話のようだ。


「そうだな。ここでずっと立ち話もなんだからな。お前……ロックこのあと時間あるか? せっかくだから家に招待してやろう」

「時間はあるが……」


 俺がラッキーやメイの方を見る。

 商人の家だから大きいとは思うがラッキーは箱庭に入っていてもらった方がいいだろうか。

 俺の視線に気が付いたグリズが質問するより先に答える。


「大丈夫だ。俺の家ならモフモフも入ることができる。そうと決まれば早速行くぞ。さすがにモフモフを馬車には乗せられないから俺たちの後ろからついて来てくれ」

「わかった」


 俺たちはラッキーに乗りグリズの後ろからついて行く。

「ロック、あの人信用できるの?」

「信用はしてないよ。だけど、敵対しなければ明後日メイのお母さんを落札させるのをもっと簡単に落札することができるかも知れないからね」


「わかった。だけど、もし戦う時には私も戦うからね」

「彼らとは戦闘にはならないよ。ラッキーの威圧感であれだけやられたあとだからね」


 マーキスは俺のことを嫌いなようだが、他の手下は少なくともラッキーと戦いたいとは思っていないはずだ。


 グリズの馬車はそのまま街の中央の方へ向かっていき、その中で一番大きな家の前で一度止まった。マーキスが馬車から降りてきて苦虫をつぶしたような顔で俺に話しかけてくる。

 ここまで明らかな態度をしてこられると苦笑してしまう。


「そこの強欲貧乏人、モフモフはさすがに家の中には入れないから庭で待っていてもらうことになる。このまま玄関までモフモフに乗ってついて来てそこで降りろ」

「わかった」


 俺たちは悪趣味な装飾のほどこされた門をくぐり、庭の中を進む。

 庭には色々な花や木、銅像、石像、とにかく趣味が悪いものが沢山並べられていて統一感がまったくなかった。


「なかなか人間の趣味は理解ができないな」

「ラッキー大丈夫だよ。この趣味は俺にも理解できない」


 ラッキーに乗り進んで行くと、家の近くまで来たところでワンダーウルフ白狼と呼ばれる珍しい狼が俺たちの前にやってきた。


「ラッキー攻撃するなよ」

「もちろん。わかっている。こんなところでもめ事はしないからな」


 ワンダーウルフ白狼はかなり希少な魔物でそのキレイな毛皮から乱獲され個体数が減少し、今ではあまり森の中でも見かけることがなくなった魔物だったはずだ。

 

 白狼は俺たちに興味があるのか一定の距離をとりながら俺たちを先導するように歩いていく。

 時折、こちらを振り返り俺たちを見てくる。


「何がしたいんだ?」

「さぁ? ただ、ラッキーに敵対するつもりはないようだけどな」


 それからしばらく歩きやっと家の入口についた。

 街の中心にこれだけ大きな家を建てられるだけの財力がある人間にオークションで勝負を挑んでも資金力で勝負するのは難しかっただろう。


「ラッキーここで待っていてくれ」

「あいよ。気をつけてな。何かあれば家を壊してでも助けに行くからな」

「あぁ大丈夫だ。メイ行くぞ」


 家の入口までいくとフリフリのメイド服に身を包んだ可愛いメイドさんが出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。どうぞこちらへ」


 俺たちはグリズの家の中に入る。家の中にも統一感のない装飾品が多数並べられていた。よくわからない民族の木の像などもある。


 入ってすぐに大きな広間があり、その奥の部屋へと案内される。 

 中に入るとすでにグリズが席に座って待っていた。


「まぁ、適当に座ってくれ」

 部屋の中には外同様に独特のセンスの物が沢山置かれていた。

 その中でも特に目を引いたのが壁一面に大きな悪魔のような恐ろしい魔物の絵か飾られていた。メイは珍しいのか、壁にかけられた悪魔のような魔物の絵を興味深そうに見ていた。


「それで……水中訓練の話だったな」


 グリズの家の使用人が俺たちに前にお茶を置いていく。

 匂いだけで高級なものだとわかるくらい、いい茶葉を使っている。


 俺は軽く頭を下げ、お茶を一口飲み。質問を始める。

「あぁ、なんで水中訓練をやりたいんだ?」

「俺が人魚を買いたいと言ったのはもうわかっていると思うが、その理由が今後この街に半魚人が街を襲うという話があるんだ」


「半魚人が街を襲う?」

「あぁ、この街から沖合にでたところに半魚人の集落があるらしいんだが、その半魚人がこの街を狙っているという情報がはいった」


 俺とメイは顔を見合わせてしまう。

 半魚人が街を襲う? そんなことをするはずはない。 

 だが……奴隷商人が人魚を高く売るためにその情報を流したとすれば……ありえないことではない。


「俺はこの街で生まれ育ってそれなりに知り合いもいれば、好きな奴もいる。まぁ情報を持って来た奴が奴隷商人だからな。それがどこまで本当なのかわかりはしないが、それでもまったく嘘だと決めつけることはできない。奴には過去にも災害を言い当てたことがあるからな」


「その半魚人の情報を持って来たのはどんな奴なんだ?」


「あぁそれはこの大陸で奴隷商をやっているチャドという男だ」

 チャド……たしかドラクルが捕まっていたのがそんな商人だったはずだ。


「いろいろこの街に貢献しているという男か?」

「そうだ。俺のことは知らなくてもあいつのことは知っているんだな」

 グリズは少し自嘲気味に笑い続ける。


「俺はすべてを手に入れたい。好きな女も、好きな魔物も、金も、地位も、名誉もだ。だけど、多くの奴が俺のことをただのボンボンの後継ぎとしてしか見ていない。それどころかバカにしている奴が沢山いる。でも正直それで構わない。ようは途中経過じゃないんだ。未来に必要なことであれば馬鹿の演技もしてやる。大切なのは結果だからな。だけど、この街が無くなるというのはまた話が別だ。この街がなくなったらどんなものを手に入れたとしても無意味だ」


「なら、滅火のダンジョンへ行っている暇はないんじゃないのか?」


「あぁ、もちろんだ。だがチャドという男には疑わしい点が沢山ある。今まで人の街を襲ってこなかった半魚人がいきなり街を襲うなんて考えられるか? 何か裏があるはずなんだ。そのためにも……俺もできるだけ戦力を集めておくしかない。できれば、街に入る前に半魚人たちを撃退したいんだ」


 俺は半魚人たちはすでに解散していることを言うかどうかを迷った。

 ここで伝えておけばグリズは心配する必要はない。

 だが、それを説明するのには人魚たちの話をしなければいけない。


 俺が一瞬悩んでいるとメイが口を開く。


「私は今度出品される人魚が欲しい。そのためにここにいるロックに手助けをお願いしたの。だからロックは必ずなんとかしてくれると思っている。そのことにあなたが協力してくれればより簡単になるわ」


「小娘、何をほざいているんだ? 今は仕事の話をしているんだ。お前がでる時間ではない」


「いいえ、私にはあなたが望んでいるものを与えることができるわ。もし協力してくれるなら必要になるかはわからないけど、水中での戦闘訓練やこの街に最大限の水の加護を与えてあげてもいい」


「何を馬鹿なことを……」

 マーキスは相手にするのもバカバカしいと手を振り話を終わらせようとする。


「私はたしかに小娘よ。でもそれなりに力だってあるのよ。ただのロックのお荷物じゃないわ」


 メイは立ちあがるといきなり魔法を唱えだした。

「やめろメイ!」


「何をする! グリズ様おさがりください。こんな怪しい奴らをやっぱり屋敷に入れるべきでは……」

「いや、面白いじゃないか」


 メイは部屋の中に巨大な水のボールを作り上げると、それを小さな無数の球体にし部屋の装飾品などの隙間に傷一つつけずに操作をする。そして、また大きな球体にすると一瞬で消してしまった。


「わかる? 私は水に愛されているの。もちろん水中戦だって得意よ。半魚人にだろうと負けるつもりはない。だからその人魚を落札して私にくれない? 私にくれれば恩を返すわよ」


「何をふざけている! この部屋の中で魔法なんて使いやがって! グリズ様今すぐこいつらを兵士につきだしてしまいましょう!」


「クッッッッッ! 面白いぞ! やっぱりお前らは最高だった! 俺の直感は当たっていた。いいだろう。人魚なんてくれてやる。だけど、半魚人に勝てるのかどうかは試させてもらうぞ」


「いいいわよ。ただ、私ひとりじゃなくて友達の力も借りるけどいいわよね?」

「好きにしろ。じゃあそうだな……。まずは水の上で俺の私兵相手に力を見せてみろ。それ次第では人魚の購入資金もだしてやる」


「ありがとう。それはありがたいわ」

「あぁ。マーキス、白狼とその他水中で戦える奴らを急いで選出しろ。そしてこの生意気な小娘に世間の厳しさを見せてやれ」


「わかりました。この非常識な奴らにグリズ様の力を見せてやりましょう。ただのメタボのダメな二代目じゃないってことを教えてやりますよ」


「マーキス……そんな風に思っていたのか。給料減額だな」

「いえ、そんなつもりは……つい……普段思っていることがでてしまいまして」

「そのことについては後で詳しく話そうか」


 気まずい空気が流れるがメイが話を続ける。


「あっでも、水中訓練の得意な友達も呼んでおくから人魚を落札してからよ。そしたらいくらでも戦ってあげるわ」

「なんだ怖気づいたのか?」


「私たちがあなたレベルで怖気づく必要があるわけないじゃない。私の力はさっき見せた通りよ。友達は私よりもさらに強いから安心して。しかも、水中での戦いにも慣れているわ。あなたたちもしっかり訓練したいんでしょ? 人魚を落札したあと海上で勝負よ。もし、私たちの実力が足りないっていう時にはロックさんがお金は支払うわ。それよりも、あの奴隷商人の売っている奴隷は違法に捕まえてきているのは知っているの?」


「なんだそれ。まぁうさんくさい奴ではあるがな。違法奴隷ってことか?」

「当たり前でしょ! 人魚なんて違法奴隷以外であるわけないじゃない。どうやったら人魚が人の奴隷になんてなるのよ」


「あっ? 人魚は分類が魔物だからな。違法奴隷にはならないぞ」

「はぁ? それどういうことよ!」

  

 メイがいきなり飛びかかろうとしたので一端静止させる。ここでの今はそこが問題ではない。

「メイっ! 今大切なのはそこじゃないだろ」

「うっ……」


「人魚は亜人ではなく魔物って扱いなんだな。でも、竜神族とかはどうなるんだ?」

「竜神族は亜人扱いになっているからな。もし勝手に捕まえてきているなら完全に違法奴隷だが……それを証明するのが難しいだろうな」


 チャドの違法性を証明するのはなかなか難しいようだ。


「グリズ様、それはそれで、滅火のダンジョンはいかがなさいますか?」

「あっこっちの方が面白そうだろう。まずは明後日のこの女の失敗するのを見届ける。その間に滅火のダンジョンに潜る準備と情報を仕入れておけ」

「わかりました」


 マーキスはいそいそと部屋からでていった。

 きっともろもろのことの準備をしに行ったのだろう。


「それで、もし水中戦で俺に満足させられなかったらどうするんだ?」

「そしたら、ラッキーちゃんを触らせてあげるわ!」

「おぉそれはいいな。あのモフモフ触りたかったんだ」


 メイは勝手にラッキーを触らせる権利を言い出した。

 それに意外と乗り気なグリズも怖い。


「メイそんなことを言ってるとラッキーに怒られるぞ」

「大丈夫よ。だって私とサンがこの人たちの部下に水中戦で負けるわけないもの」


「まぁ、メイはあとでラッキーを勝手に賭けの対象としたということで怒ってもらえばいいとして、それで半魚人がこの街を襲うというのはどれだけ信憑性があるんだ?」


「個人的にはかなりの高いレベルだと思っている。俺は腐っても商会の後継ぎだから色々な情報がまわってくるんだが、前にもチャドが予言した街でワンダーウルフ白狼に襲われるっていう事件が実際に起こっているんだ。しかもその原因がまったくわかっていない。ワンダーウルフ白狼は非常に頭がいい魔物だから人間をむやみに襲うなんてことは考えられないんだけどな」


「さっき庭にいたワンダーウルフ白狼は?」

「あれはその街の近くにいた生き残りだ。あのままだと殺されていただろうから俺が保護した」


 ドブはグリズを性格が最悪だと言っていたが、最初に聞いていたのとだいぶ感じが違う。


「グリズは今までも奴隷商人から亜人や魔物を買ったことがあるんだろ? 今までのはどうしただ?」


「俺のこと知らないと言ったわりに良く知っているな。今までのはうちの兵士の訓練の相手をさせたり、個人的に作っている保護区に放したりしているぞ。もちろん訓練の相手をさせるっていってもケガさせないように気を付けているけどな」


「そんなのを作っているのか?」

「魔物を保護していくのは大事だからな。だからロックの灰色狼も売ってくれ。あんなでかい灰色狼なんて見たことないからな」


「それ、ラッキーの前で言うなよ。ラッキーはフェンリルだからな」


 どうやらグリズは勘違いしていたらしい。

 だから会った時に相場の10倍なんて言っていたのか。

 フェンリルに価値なんてそうそう値段をつけられるわけはない。


「フェンリル……そんなわけないだろ。それこそ伝説級の魔獣じゃないか。それが人に懐いているなんて……絶対に……俺も欲しい。なぁロック譲ってくれ」


「絶対に譲らない。だからそれを捕まえに行くんだろ?」


「そうだった。フェンリルならロックがあれだけの金額を請求したのもわかる気がする。それに普通に灰色狼は話すはずがないか」


 いつのまにかグリズは俺の名前を呼ぶようになり妙に納得していた。


「話を戻すが、チャドを違法奴隷を扱っていると捕まえることはできないんだな?」

「それは無理だな。あいつはなんだかんだ上手く民衆の心理を掴んでいる」


「もし半魚人が街を襲った場合どれくらいの被害がでる予想だったんだ?」

「それはなんとも言えないが、だが魔物が襲って来ただけで街のイメージの低下は間違いなくおこるだろうな。それで撃退できればいいが。できれなければこの街に悪評がたてばしばらくは立て直すのに時間はかかる。その半魚人がどれくらいの規模で襲撃してくるのかにもよるが」


「チャドはなんでその情報を得たと言っているんだ?」


「チャドには雇っている魔道具使いの女がいるんだ。その女が魔物の行動を予想する魔道具を作ったらしい。それによって、魔物波動数値が極端に海で上がっているから、こっちにくるかはわからないが半魚人が暴走するっていう話なんだ。詳しくは聞いてもよくわからなかった」


 なるほど、すべては自作自演でやるってことらしい。

 そうなると……ドモルテのいる半魚人の村に指令がいくのか?

 ドモルテの持っている球体にそんな機能があるのか?


 一度ドモルテとも会って確認してみる必要がある。


「わかった。そしたら明後日の人魚のセリの時に人魚を落札してくれ。それができたら半魚人と戦うのも手伝ってやるし、海の中での戦闘訓練をつけて欲しいなら知り合いがいるから海の中での戦いも手伝ってやる」


「滅火のダンジョンにはついて来てくれないのか?」

「あそこには……いい思い出がないからな。特別な理由でもなければ潜るつもりはない。でも、少なくとも戦闘でラッキーの威圧に耐えられないようなら辞めておいた方がいいと思うぞ」


「そこまでか。街中では手加減をしたんだろ?」

「あぁ、俺たちが初めてくらった威圧はあんなものではなかった。本当に死んだと錯覚したくらいだったからな」


「そうか……かなり楽しくなりそうだな」

 グリズはかなり前向きに受け取っていた。


 それから俺たちはしばらく雑談をしたあとグリズ邸を後にした。

 ラッキーはワンダーウルフ白狼と仲良くなったと言っていた。

 さすがに俺たちには何を会話していたのかはわからないが、少なくとも白狼はこの家でヒドイ扱いを受けてはないということだ。


 グリズ邸を後にしてからは俺たちはシャノンたちと合流した。

 シャノンたちは特に新しい情報は得られなかったらしい。

 ただ、あそこの屋台のお肉はめちゃくちゃ美味しかったですとか、あっちは少し味付けが濃ければとかグルメ評論家のようになっていた。


 口の周りに魔物のタレがついていたので拭いてやったら、子供じゃないですぅと軽く怒られてしまったが。


 ただ、どの商人もチャドはいい商人だと言っていたらしい。


 俺たちは聖獣の箱庭に戻ることにした。

 マデリーンとメイは一度海に戻るということなのでメイにはサンに今後戦闘訓練を街の人間にやってもらうことになることを伝えてもらうことにした。


 グリズもリバイアサン相手なら満足のいく訓練ができるだろう。

 とりあえず、グリズと奴隷市で競うことはなくなりそうなので一安心だ。


 でも、チャドの悪事を暴くか、何か対策を考えないと結局意味がなくなってしまう。


 俺たちが箱庭に戻るとパトラやガーゴイルくんたちが料理を作って待っていてくれた。

「パパーおかえり」

「ロックさんおかえりなさい」


「ただいま。ドモルテは戻って来てるか?」

「まだ戻って来ていないですね」


 もし明日になっても戻ってこないようであれば一度様子を見に行ってこよう。

 半魚人たちの様子も気になるし。


「パパー人魚さんたち助けてあげられそう?」

「そうだな。多分大丈夫だと思うぞ。ただおおもとの奴隷商をなんとかしなくちゃいけないからね」


「そうなんだ。でもパパならなんとかするよね?」

「できる範囲で頑張るよ」


 パトラからの厚い信頼に答えたいが……。

「別に証拠がなくても奴隷商が悪い事できないようにしてしまえばいいんじゃないんですか?」

 ガーゴイルくんが料理を運びながらそう言ってくる。

 それはルールを守らなければできないことはない。


 だけど、それをしてしまったら奴隷商と同じになってしまうからな。

 まだまだやることは多そうだ。

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