怪しい店に潜入してみた。
まずは人魚たちがどこへ連れていかれたのかを確認する必要がある。
ここに連れてこられた人魚は人の姿になれない人魚だ。
移動するにしてもかなりの大きさの水槽が必要になる。
俺は馬車の轍を確認すると、沢山の轍があったがその中でも特に深いものがあった。
これが水槽の人魚を運んだ可能性が一番高い。
「マデリーン悪いんだけど、一度人魚の村に戻って財宝を持って来てもらいたい。人魚がオークションにかけられたら、最悪金で買い取る必要もあるからな」
「わかった。それでどうやって待ち合わせしたらいい?」
「あぁそうだな。ガーゴイルくん何度も悪いが頼んでいいか?」
「もちろんですよ。お任せください」
こういう時のガーゴイルくんは本当に頼りになる。
「俺は人魚を追うから。他の人魚はいったんサンの場所まで戻っていてくれ。大人数は目立って仕方がないからな」
「でも、探すなら人手が多い方がいいんじゃないですか?」
「それも、そうなんだが、あそこの倉庫の中でかなり危険な研究がされていたんだ。正直バラバラになられたら守れる自信がない。ここは大人しくしておいてもらえると助かる」
「私は嫌よ。絶対に探しにいく。その責任が私にはあるもの」
最近静かにしていたので、存在を忘れかけていたがメイが人魚たちの集団から前にでて直訴してくる。
サンがいれば黙らせられるが……。
「メイ様、ロックさんが困られていますのでおやめください」
「なによマデリーン。ずいぶん私に生意気な口をきくようになったじゃない」
「いえ、そういうわけではありませんが」
マデリーンはメイに逆らえないのか一瞬で引いてしまう。
立場的にはメイの方が上ってことなのだろう。
「メイはどういう立場なんだ?」
「人間の世界でいうところのお姫様と言った感じです」
「こんなわがまま姫だと下の者は大変だな」
「なんですって! 私だって一生懸命やっているのよ! ロックを連れてきたのだって私だし、戦闘にだって参加したし、囮だってやったわ。私は絶対にお母様を助けにいくの」
メイは今までの感情を爆発させるかのように大声をあげる。
メイ自身いろいろ空回りはしていたが、まだまだ子供なのかも知れない。
その中で彼女なりには頑張ってきていたのだろう。
「今捕まっているのは……王妃ってことなのか?」
「王妃と言いますか女王様です」
自分の家族だけが助けられない。
その辛さはメイにしかわからないが……だからといってさっきみたいに仲間を危険にさらすことはできない。
「わかった。メイだけは連れて行ってやるが、前回のように俺の言うことが聞けないなら連れてはいけない。お前の気持はわかるが、仲間を無駄に危険にさらす奴を俺は許さないし、その時点で救出は諦める。その約束ができるか?」
「わかったわよ。今度はちゃんと言うことを聞くわよ。さっきはごめんなさい」
メイは少しは反省をしているのか俺の方を見ながら頭を下げてきた。
とんでもない行動をするが、こう素直に謝られると俺もそれ以上追及ができなくなってしまう。
「よし、じゃあ俺とメイ、それにラッキーは一緒に行こう。後の者はガーゴイルくんの指示にしたがって一旦サンと合流してくれ。ラッキー頼む」
『あいよ』
ラッキーにメイと乗り、ラッキーが轍の匂いをかいで馬車の行った先を探す。
メイの親が連れて行かれたのはどうやら、街の中心部のようだ。
大きな広い通りをラッキーに乗り進んでいく。
この街は外国との取引が多いのか露店には変わった野菜や、珍しい調味料が沢山置いてあった。
事件が解決したらゆっくりと買い物でも楽しみたい。
露店を眺めていると、白くて可愛いワンピースの服が並んでいるお店があった。
シャノンが着たらすごく似合いそうだ。
そんなことを考えているが、別に遊んでいるわけではない。
本当はラッキーに急いでもらいたいが、街の中心部に入ってからは人も多く、なかなか急いで歩くのが難しいのだ。
『ロック、見つけたぞ。あそこ人魚が連れて行かれた店だ』
ラッキーが見つけたお店は表通りから一本入った場所にあった。
特に看板などもないが、店の中から動物の鳴き声のようなものが聞こえ、どこか先ほどの倉庫を思い出させるような場所だった。
店の外からは中が見えないようになっているが、ここに何かしら手がかりはありそうだ。
「ちょっとここで待っていてくれ。俺が探してくる」
「私も……はい。待ってます」
「偉いぞ。メイ。突撃するだけがいいわけじゃないからな。必要な時に役に立ってもらうから、ここでラッキーと待っててくれ。ラッキー頼んだぞ」
『あいよ』
俺は店の扉に手をかけ、軽く引いてみた。
鍵はかかっていないのかすんなりと抵抗なく扉が開く。
扉が開らかれた瞬間、むわっと鼻を刺す異臭がする。
ここも倉庫と同じで手入れはあまりされていないようだ。
俺が入ろうとすると中から声が聞こえてくる。
「いらっしゃい。あれ? お客さん初めての人だよね? ここが何の店かわかっているの?」
男はかなり太り気味の体型で、髪の毛がぼさぼさとしており、だぼついた服を着ている。
身体も洗っていないのか、酷い臭いだ。
「ここで特別な魔物を買えると噂で聞いたんだけど、本当か?」
「あらーお兄さん運がいいよ。ここには変わった魔物沢山いるからね。だけど、店長から紹介じゃないとダメって言われたんだけどいいかな? お兄さん話わかる人?」
話?
いったい何を言っているのかわからない。
しばし無言の時間がながれる。
男は指でさりげなく親指と人差し指をくっつけ俺にアピールをしてくる。
なるほど、そういうことか。
俺は財布からお金をだし、男に渡す。
「俺は話のわかる男だよ」
「ありがとう。さっしが良くて助かるよ。それじゃあ奥へ来て」
俺は男について行き奥の部屋へ入った。
そこには魔術師風の女が俺に背を向け座っており鳥の魔物の羽をむしっていた。
「あら、臭いわ。臭い。あの女の魔力をまとった人間がくるなんて。ちゃんと紹介は確認したの?」
振り返り、俺の方を見た女の目は爬虫類のように鋭く、そして暗闇の中でやけに金色の色が目立っていた。
メイ「じゃんけんぽん。あっち向いてホイ
ラッキー「あぁまた負けた。何でだろう」
メイ(ラッキーはさっきからパーしかだしてないけど教えてあげない)
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