半魚人
サンに縛られた半魚人は抵抗せずに大人しくなっている。
「さて、どうしてこんなことになったのか説明してもらおうか」
全員で赤黒い玉にヒビが入ったのは見なかったことにした後、尋問をすることになった。
ドモルテの海中を割る魔法は魔石の消耗が激しいらしいので今は辞めてもらっている。
「それでまず名前は?」
「ペドロだ」
ペドロは他の半魚人よりも身体が一回り小さい。
「どうしてこんなことを?」
「俺はこの半魚人の村で除け者にされていたんだ。背中の背びれがあるだろ? 半魚人はこの背びれが大きいほど魔力が強いと言われているんだ。だから見た目で強い弱いのが一発である程度わかってしまうんだ」
ペトロの背中の背びれはほとんどないと言っても過言ではないくらい小さかった。
「村ではいじめられ、いつも除け者にされ、蔑まれていた。道を歩けば後ろから水流っていう魔法を打ち込まれたりしていたんだ。狭い村だし娯楽がないからな。大人たちも含めどこかその上下関係で村の中のバランスをとっていたんだと思う」
「それで、どうやってあの玉をお前は手に入れたんだ?」
「あれは、今から1週間くらい前だった。村が嫌で浜辺で月を眺めていると、変な女と商人がやってきたんだ。そこで人魚を連れて来てくれるなら、村人へ仕返しをする方法を教えてやろうって言ってきたんだ」
その2人がどうやら今回の事件の主犯格らしい。
きっと商人は船の上で笑っていたあの男だろう。
「その口車に乗ったんだな」
「あぁそうだ。人魚には可哀想だと思ったがな。あの万能感には勝てなかった。今まで俺のことを顎で使っていた奴が魔力で言いなりにさせられるんだぜ」
「あの玉の使い方は?」
「理屈はよくわからないが、相手が眠っている時に玉を握らせ魔力を込めると玉から相手の中に魔力が流れていくんだ。あとはもう言いなりになるから、簡単な指示には従ってくれる」
「難しい命令はできないのか?」
「何度か挑戦したけど固まって動かなくなってしまうことが多い。だからこの家に入ってくる者に噛みつけとか、押さえつけろとかはできない」
「人魚たちはどこへ運ばれたんだ?」
「詳しくは知らないが人間たちが星降りの入江と呼んでいる場所で声をかけられた。だからあの近くだと思う」
それから、人魚たちも尋問をしていたが、俺のところにドモルテが玉を持ってやってきた。
「ロック、この玉なんだけどどうも私の研究の一部が使われているようだ。魔力の波長がリディアの魔力波長に似ている。どこかで情報が漏れたのか盗まれたのかはわからないが、気をつけた方がいい。この玉を作った奴は私が生きていた頃の10歳くらいの魔力はありそうだ」
「10歳? それって強いのか?」
「失礼な。私のピークは晩年だったが10歳の頃でもうすでに街では敵がいなかったからな。それくらいの腕があるってことだ。世界レベルではないが、そこそこ腕が立つって感じだな。半魚人たちのように甘くはないだろう」
なんとも微妙な感じであるが注意をしておこう。
「わかった。それで半魚人たちを元に戻す方法はわかったのか?」
「あぁわかったが非常にやっかいなんだ」
「何が問題なんだ?」
「解除しようと思ったんだがすぐには無理そうなんだ。かなり複雑な魔力式が組み込まれているうえに、なぜかヒビが入ってしまっていて一部壊れてしまっているんだ。だからその空白をもう一度埋め直さないといけないんだ」
ドモルテはなぜかの部分を強調してくる。
俺も別にツッコミはしない。
誰が悪いというわけではないのだ。
「それはすぐにできるのか?」
「すぐには無理だ。ただ私なら時間をかければできる」
「そうか、ならここからは別行動だな。ドモルテは解除ができ次第、箱庭経由で戻って来てくれ。俺たちはこのまま人魚たちを奪還しに行くから」
「わかった。気をつけろよ」
「あぁドモルテもな。誰か補助で欲しい奴とかいるか?」
「いや大丈夫だ。ピンチになるってことはないと思うが、街の中ではどんな風になるかわからないからな」
ドモルテはあまり心配していなさそうだったが、意外と気を使っていてくれるようだ。
「魔石は多めに持っていけよ。箱庭に戻ったら次にでてくるのは俺の側になるからな」
「助かる」
半魚人たちはしばらくはそのままになってしまうということなので、縛ったまま座らせておいた。ペドロの処遇については連れて行くかどうかで意見が分かれたが、商人の顔などを判断するために連れていくことになった。
ペドロは自分で言っていた通り、玉がなければ、ほぼ魔力もなく抵抗されることもなかった。
俺たちは連れ去られた人魚たちを追いかけることにした。
ラッキー「日間ランキングみたか?」
ロック「見たよ。作者の作品がハイファンタジーで8位と9位になっていたんだろ」
ラッキー「読んでくれてる読者に感謝だな」
ロック「あぁ」
ロックとラッキーは拳をぶつけ今後の活躍を約束するのであった。
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