海底での戦い
『フハハハ! 私たちの合同魔法を見よ!』
「さぁロックよ! 今のうちに半魚人たちを蹂躙するのだ」
「おっおう」
ドモルテは女性バージョンからリッチへと姿を変え魔法を唱えていた。
別に今さらだけど、もし捕まってた人魚がこの景色を見たら、大人しく助けられてくれるのか不安になってくる。
先頭切って助けに来たのがフェンリルとリッチだったら、大人しく助けてもらいたいかと言われると……なんとも微妙なところだ。
「人魚たちは半魚人のように2足で歩けたりするのか?」
「ちょっとお待ちください。陸の上でも呼吸はできるんですが、陸地で魔法を使うのが初めてなので、少しお時間頂ければと思います」
「海水に戻れば魔法を使いやすいってことか?」
「そうですね」
「じゃあガーゴイルくん悪いけど人魚たちを全員海の中へ入れてあげて。歩けるようになった人魚から洞窟の方へ来てもらうってことで」
「わかりました。お任せください」
ガーゴイルくんは1人ずつお姫様抱っこで運んでいく。
その姿はどこかの騎士のように凛々しい姿をしていた。
あとはガーゴイルくんにお任せして、俺たちは急いで洞窟の中を散策する。
もうすでにラッキーは半魚人を見つけると甘噛みして捕まえ、サンのいる場所へ放り投げるという作業を始めていた。
サンはそれを丁寧に触手で縛り上げて行く。
連携具合が半端ない。
『ロック、私水の中でもやっぱり最強みたい』
「こらラッキー私がいるのを忘れるなよ」
『もちろん』
水中の中での戦闘を想定していたが、陸地となった海底では半魚人も武器を持ったタダの一般兵と同じで動きに繊細さはない。むしろ泥に足をとられて上手く走れてすらいなかった。
「パパー大量だよー」
小竜騎士組も穴からでてきた半魚人を捕まえてはサンの元へ投げ捨てていく。
空中からの攻撃は半魚人も予想していなかったのか。
空に浮かび上がった瞬間にがくりと動かなくなる奴が多かった。
しばらく半魚人狩りをしていると親玉らしき半魚人が穴の中からはい出てきた。
手には噂の赤黒い玉を持っている。
「やれやれ、まさか人間に使われ、今度は人間に襲われるとは思わなかったよ。だが、俺だって、ただやられるわけにはいかない。半魚人たちよ。持てるすべての力を解放し敵を殲滅せよ! もうやられるだけの人生とはおさらばだ!」
半魚人たちの目が赤く光り、いっきに獰猛さが増す。
「みんなお遊びは終わりだ。死なないように気をつけて対応するんだぞ!」
「パパーわかったよー」
「わかりました」
「任せてください」
俺の掛け声と同時に仲間たちの顔に真剣味が増す。
そして……洞窟の中から子供の半魚人たちが沢山でてきた。
手にはモリではなく、サンゴや小石が握られている。
「ん?」
子供たちが一生懸命小石やサンゴを投げてくる。
「おいっお前らの親はどこに行った」
子供たちが一斉にサンの方を指差す。
サンのまわりには目を赤くさせ暴れている親たちの姿がある。
だが、そう簡単にはサンの触手が切れそうにない。
「余裕ぶって遅く出てきたら、他の仲間はみんな捕まってたみたいだな。人魚たちをどうした? 人魚を返せばこのまま見逃してやらないこともないぞ」
「はんっ! もう遅いわ! 人魚の半分以上は人間に売り払ってやったからな。だが俺だって何もせずに負けるわけにはいかないんだよ」
縛りつけていた半魚人たちの目から赤い光が消え、今度は赤黒い玉へと魔力が集まっていく。
「ハハハッ! 見ろ! この玉の力さえあれば私は海の支配者になれるのだ」
赤黒い玉に魔力が集まり、男へと魔力が集まりだした時、男の手から玉が奪われる。
「パパーとったよー」
パトラの竜騎士があっさりと奪っていく。
大事なものはちゃんと持ってないとな。
「良くやった! そのままドモルテに渡してくれ」
「はいよーパパに褒められたー!」
パトラの乗ったワイバーンはそのままドモルテに玉を渡そうとするが、上手くつかめていなかったのか、ドモルテの目の前に落下する。
玉はバリンという嫌な音がして岩場へと叩きつけられた。
遠目に見ても少しヒビが入っているように見える。
いやそう見えるだけかも知れない。
見てはいけないやつだな。
辺りが一面静寂に包まれる。
きっとここは海底だから静かなんだな。
海のきれいさにみんな目を奪われているんだ。
誰一人何も言わない。
ドモルテに至っては一連のことを、私は水を抑えるのに必死でわかりませんでしたと、言わんばかりに空を見つめている。
『ぷっ』
1人……1匹この静寂に耐え切れずに噴き出していたのがいる。
いやーだってさ。
親玉の半魚人は両手足を地面につき、頭をガクッとさげている。
そこへ別のオレンジアントの竜騎士が飛んできて、そのままサンの前まで運んで行った。
えっこの空気どうしたらいいの?
ラッキー「今日も大活躍したな」
シャノン「私の出番が最近ないです」
シエル(しばらく出番なさそうなんだけど)
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