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人魚の村

 ただのモフモフ好きな人魚と、丁寧なリバイアサンなのかと思っていたが、どうやらそれだけではないらしい。何か理由があるようだった。


 メイを中心に話を進めようと思ったが、話が進まなかったのでメイはラッキーを触らせる替わりに少し黙ってて欲しいと伝えたところ、涎をたらしながら喜んだのでラッキーには犠牲になってもらった。


 ごめんなラッキー。


 出会って初めてラッキーの顔が、ものすごく引きつっていたが、触るだけなら大丈夫だろう。

 もし、少しでも嫌なことされたら海へ向けて吹き飛ばしていいからと伝えておいた。


『ロックー、本当に吹き飛ばしていいんだな?』

「もちろんだ。ラッキーが一番だからな。ちょっと嫌だろうけど我慢してくれ」


 フェンリルをここまで恐怖させるのは陸の上でなかなかいない。

 ある意味メイはなかなか強敵のようだ。


 ラッキーにメイを任せて、俺たちはサンと話をする。

 ダメ人魚とは違ってサンは非常に冷静で有能だった。


「この度は、私たちのような見ず知らずの者にお時間を作って頂きありがとうございます」

 そう前置きをしたところで、次のような話を始めた。


 最初の出来事はおよそ3日前に遡る。

 海の中にも、いくつも村や町があり、サンとメイたちはその中の一つで幸せに暮らしていたそうだ。


 サンは人魚ではなかったが、その村に小さな頃から縁があり、守り神的な立場だったらしい。

 それのおかげで、ここ数百年人魚の村を襲ってくる奴らはまったくいなかった。

 

 メイは非常に変わっている子で、小さな時に陸で見たモフモフに憧れる、ちょっと行動がいきすぎる女の子なのだが、あれが人魚族を代表する姿ではないと力強く言われてしまった。


 人魚の中でもメイは特別に変わっているらしい。


 他の人魚はいたって落ち着いている種族だという。

 人間と同じで変わった子もいれば、そうじゃない子もいるのと同じということだろう。

 

 話を戻し、3日前にいきなり近隣に住んでいる半魚人の村の奴らが襲ってきたそうだ。

 人魚と半魚人は似ているようだが、全然違う種族で、半魚人は全身を鱗に覆われており、人魚が人の姿に似ているとすれば、半魚人は魚やイカなどの系統が強くでて人型をしているとのことだった。


 それまで2つの村は敵対などしたこともなく、たまに物々交換をするくらいの交流はあったが、基本的には独立していたそうだ。


 それがいきなり武器を持ち襲い掛かってきたせいで、人魚たちも抵抗はしたが、ほぼ戦いにならず制圧されてしまったらしい。


 サンはもちろん戦いはしたが、今まで戦闘とは無縁だったこともあり、力及ばず人魚を守りきれなかったそうだ。


 ただ、サンが言うにはその時の半魚人の動きから違和感を感じたとのことだ。

 半魚人はメイほどではなくても、フレンドリーで酒好きな悪い種族ではなかったらしい。

 それに、どちらかというと団体行動が得意な種族ではなかったが、今回は統率のとれた動きをしてきたそうだ。


 どちらかというと少しヤンチャなことをする奴らが多いが、いきなり問答無用で襲ってくる種族ではない。


 でも、襲ってきた奴らは無言で村に忍び寄り、いきなり村の中で人魚たちを捕獲しだしたそうだ。

 最初は、善戦していた人魚もいたが、半魚人の統率のとれた動きに屈して結局逃げるしかなかった。


 サンも、もちろん、人魚のために戦ったが次第に追い詰められ、最後にメイの家族からメイを連れて逃げるようにと言われ、メイを引きずるようにして逃げだすことしかできなかった。


 人魚たちも散り散りになって逃げたので、まだどこかに逃げた人魚もいるかもしれないが、今はわからないらしい。


 メイはラッキーを見るまでずっとふさぎ込んでいたが、地上へでたことと、小さい頃から憧れていたモフモフ、それに仲間を探して家族を奪還するといったストレスから少し、頭の中で何かが振りきれてしまったのではと言うことだ。


 もしかしたら素かも知れないとボソッと言っていたのは聞かなかったことにした。


「それで、その半魚人たちを退治するのを俺たちに手伝って欲しいってわけだな?」


「そうです。半魚人たちはそれほど、強くないんですけど数が多くて。多勢に無勢で私だけでは勝ち目がありません。相手側のリーダーらしき男が赤黒い玉を持っていて、それが光るたびに半魚人の行動が変わっていたので、それを奪えればと思うんですが、私の身体だとそれも難しくて」


 リバイアサンは蛇のような身体で水中を高速で泳いだりするのには向いていそうだが、手で何かを作業したりするのには難しそうだった。髭のような触手のようなものはあるが、近接で何かを奪うことや器用に戦うには向かなさそうだ。


「そうは言ってもな。うちで水中で戦えるのは?」

 ドモルテとガーゴイルくんが手をあげるが、それ以外に水中で戦える者はいない。

 ちょっと戦力的に難しそうな感じだ。


「戦うにしても俺たちも水中では息ができないからな」

「それなら問題はありません。人間が水中でも戦うようのエア草は大量にあるので」


 サンは自分の身体にくっついていた、透明な丸い草を触手を使って器用に外すと、俺の頭にかぶせてくる。


「これは?」

「エア草です。これがあれば水中で息ができるようになりますのでやってみてください」


 俺は言われるがまま、海の中に顔を沈めると海の中でも呼吸ができる。

「すごいな。こんな草があるのか」

「はい。これは人魚の村で採れる特別な草なので、あまり人族には知られていないと思います。気が付いたら私の身体にも生えていたんですが、役に立って良かったです」


「これって余分にもらえたりするのか?」

「今は戦いに使いたいのであまり、余分にはないですが人魚の村を奪還できれば大丈夫かと……」


 今まで見たことのない草なので、これがあれば色々なことができそうだ。

 箱庭に植えて増やしてもいい。


「パパー! 可哀想だから助けてあげよー」


 パトラは助けてあげるのに前向きのようだ。

 他のメンバーも戦うことに反対する人はいなかった。


「パトラは優しいな」

「このエア草はどれくらいもつんだ?」


「普通に使えば余裕で1時間くらいは使えます。人魚の村へ行くにしても海上は私が運びますので、戦闘にはこの戦力ならそれほどかからないので大丈夫かと」


 最悪、もしダメでも従魔たちには箱庭に入ってもらい、俺だけ逃げればいいだろう。

 サンと俺たちが話していると、メイが海上にふっ飛ばされていった。

 ラッキーをどうやら怒らせたようだ。


 いったいなにをやったんだか。

メイ「私が人魚代表よ」

サン「やめてあげてくれ。人魚のイメージが」

メイ「仕方がないわね。じゃあ可愛い人魚が見たいって人は下の☆を入れてくれれば」


本日も読んで頂きありがとうございます。

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ラッキー「どこの本屋にも置いてあってよかったな」 ロック「ラッキー実はそれは……」 ラッキー「うっ売れ残りってことなのか?」 ロック「今は自粛中だ! きっとコロナが終われば……いやネットで今すぐ注文しよう!」 ご自宅での暇つぶしにぜひネット通販などからお買い求め頂ければと思います。 このままだと……ラッキーの肉球によってはじける可能性が。  テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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