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三流冒険者

 楽しく、紅桜の背中に乗って約半日。

 辺りが少し明るくなり始めた頃、コロン村が見えてきた。


 あそこを過ぎればもうすぐだ。

 上空からコロン村の方を見ると、コロン村の近くの洞窟から人がでてくるのが見えた。


「遅かったか!!」

 そこはコロン村が見渡せる、少し高台になっているアネサ村との秘密の通路だった。

 紅桜の移動速度がはやく危うく見落とすところだったが、ギーチンやアンドなどの姿が見える。


 つまり、村に何かあったということだろう。


「紅桜、アネサ村が危ない」

『任せてください』


 紅桜はひと飛びでアネサ村までいくと、村の真ん中へと降り立った。

 俺たちがいた時よりも、家がさらに壊され、一部では火をかけられているところもある。

 せっかく消火したのに台無しになっている。


「ドラゴンだ! 見つけたぞ! やっぱりこの村にいたんだ! 攻撃しろ!」

 兵士らしき男たちが集まってくると、いきなり攻撃し始めた。


 紅桜はまったく気にしていない様子で翼をパタパタと動かすだけで、攻撃を防いでいる。

 さすが規格外のドラゴンだ。


 俺たちは、紅桜から下りるとドブを全面に押し出す。

「ほら、こういうところで権力を使わないと」


「ちょっと待て! 今回の闇の衣の動きについて、話を聞きたいから攻撃をやめてくれないか。僕は詳しくは言えないが貴族会のメンバーの者だ」

「なんだお前?」


 闇の衣の連中はお互いに顔を見合いながら首をひねっている。

 あぁーあれだ。一部では有名だけど、全体的には認知されていないってやつだな。


「国家特殊諜報機関、通称Dだ。スイジュ国との戦争行為を誘発させるアネサ村への攻撃を国王は承認していない。第四王子から派遣された責任者と話がしたい」


 そこまで言うと男たちは攻撃することをやめた。最初からそっちを名乗ればいいのに。

 それにしても、ここに来るまでドブがずっと怖がっていたせいで、ドブの正体を聞いていなかったが、実はすごいやつなのかもしれない。


 停戦を呼び掛けたおかげでたいした戦闘にはならなかったが、村長の家から村長とマルグレット、それにキッドがでてきた。


「おぉードラゴンがいたじゃないか。これでこの近くの村の奴ら殺しても言い訳がたつな。おっそれに誰かと思えばロッカくんじゃないか。久しぶりだな」


 キッドは悪びれる様子もなく堂々と俺の前にでてきた。


「ロッカじゃない、ロックだ。なんでお前がここで平然としているんだ?」


「あぁ? 君のような底辺冒険者とは違うんだよ。僕はこの国の権力者と仲がいいからね。無実の罪をかぶせられそうになっても逃げきることができるんだ」


 キッドは相変わらず気持ちの悪い顔で笑顔で俺を挑発してくるが、いちいち相手になんかしない。挑発に乗ったら負けだ。


「キッドさん、ただちにアネサ村への侵略行為を止めて頂きたい。スイジュ国との戦争をしたいのは第四王子だけであり、国としてはそれを認めてはいない!」

「はぁ? 何を言ってるんだ? そんなことするわけないじゃないか。俺たちはたまたまここに国の脅威になるドラゴンとスイジュ国までの抜け道があると聞いて調査にきただけだ。やましいことは何もしていない。そうだよな。村長?」


「そうですね……ロックさん逃げるんだ!」

 村長はキッドを押しのけて、俺たちを守ろうと動くが、キッドがさらりと剣を抜き、斬りつける。


「ちっ! 役に立たないな。ドラゴン殺しを呼べ」

 なりゆきを見守っていた闇の衣の連中が一気に動き出した。パトラが村長に駆け寄って回復薬を飲ませてやる。


「キッド、もう辞めるんだ」

「馬鹿かお前は? 俺はもう無罪放免となって今は第四王子のところで働いているんだよ。お前のような三流冒険者とは違ってこの国の中枢として働いているんだ。やれ!」


「死ねー! ドラゴン!」

 男たちが紅桜に遠目から魔法で攻撃をし始め、一人の男が禍々しい魔力を放った剣を抜き紅桜に切りかかる。さすがにドラゴン殺しの魔法や剣がどれほどのものかわからないが、なんとも嫌な予感がする。


「紅桜、危なかったら適当に逃げていいぞ。みんな戦闘開始だ!」

『あっ? 大丈夫だ。あんな旧式のドラゴン殺し』


 ラッキーをはじめとして仲間たちが箱庭から飛び出してくる。

 全員に俺の補助魔法をかける。


「キッドさん! なんですか。こいつらの魔力量がやばいですよ」

「うるさい。所詮、ゴミの寄せ集めだ。圧倒的な力の差を見せつけてやれ!」


 キッドは命令しているだけで、自分はじりじりと後ずさりしている。


『ロックいいか?』

「いいぞ」


 こちらもラッキーの凶暴な魔力を解放する。さすがに戦闘に長けた連中のせいか、魔力解放だけで戦闘不能になる奴はいなかったが、それでも動きがかなり悪くなっている。


 それぞれが戦闘へと入っていき、俺の相手は……キッドは俺が近づくと、いっきに距離をとった。


「逃げるのかキッド?」

「お前みたいな三下を俺がわざわざ相手する必要はないだろ。さっさと片付けろ」


 キッドとの間に数人の男たちが割り込んでくるが、死なない程度に転がしていく。

 反撃されると面倒だからついでに骨折させ、意識も刈り取っていく。


 今日はパトラも一緒についてきているので、余裕を持って地面に沈めていくことができた。

 というか、ほぼパトラ無双だ。


「なんでお前は俺の邪魔ばかりするんだ! 俺はこの国のために動いてやっているだけだろ」

「この国のためだからといって、この村の人間が死んでいい理由にはならないだろ」


「新しい兵器のためには戦争が必要なんだよ。わかるだろ? 力をつけなければ生きていけないんだ」


「お前のように命令するだけで、命をかけない人間がいるから無駄に死んでいく人が増えるんだよ。戦争をするなら真っ先に先頭に立て。人間はお前の駒じゃない」


「あぁー相変わらずロッカくんは頭が固い。駒なんていくらでも使い捨てることができるんだよ」


「駒じゃない人間だ。それよりいいのか? その使い捨てにされた駒の人たちはあっという間にいなくなったぞ」


 ものの数十秒の間にキッド側の人間はほぼ地面にはいつくばっていた。

 うちのメンバー相手では1分持たせるのもかなり大変だろう。

幼馴染のS級パーティーから追放された聖獣使い。万能支援魔法と仲間を増やして最強へ!

ドラドラふらっと♭で連載中の漫画版1巻が1月8日に発売です!

小説版3巻とあわせてよろしくお願いします。


あっという間に手下をボコボコにされたキッド。

だけど、まだ彼には奥の手が……⁉


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん) 


パトラ「パパー露払いは任せて!」

ロック「頼んだよ。でも無理はしないでいいからね」

ドブ「なんでここにいるんだろう……」

ドブは敵に回さなくて良かったと思いながら遠い目をしていた。

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ラッキー「どこの本屋にも置いてあってよかったな」 ロック「ラッキー実はそれは……」 ラッキー「うっ売れ残りってことなのか?」 ロック「今は自粛中だ! きっとコロナが終われば……いやネットで今すぐ注文しよう!」 ご自宅での暇つぶしにぜひネット通販などからお買い求め頂ければと思います。 このままだと……ラッキーの肉球によってはじける可能性が。  テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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