氷雪の姫
しかしすぐに甘い考えは捨てることになった。崩れた瓦礫がマグマとなって火砕流のように襲ってきた。
ラッキーがさらに加速し、あっというまに洞窟からでて急回転して洞窟を見る。
勢いあまって村長と騎士の男が森の中に飛んでいったが、きっと大丈夫だろう。
あとは自力で生き残ってもらうしかない。
「イバン、おりてマルグレットと一緒に村の方へ避難するんだ」
「ううん。僕も戦うよ。おばあちゃんに逃げないって約束したんだ」
イバンが両手を前に突き出すと、もの凄い吹雪がマグマが流れる洞窟を襲う。
相当な魔力量があると思っていたが、これほどの魔力を持っていたなんて。
一瞬溶岩が冷え固められ、赤い溶岩が黒い石へと変わるが、その奥からドラゴンが炎を吐きながらよたよたとでてくる。
『あいつら……いい度胸してるな。グルルルルワァーーーーーー』
ドラゴンが苦しみながら雄たけびと共に、口から炎の弾を吐きだすが、俺たちを狙っているようには見えなかった。俺たちとは別に何かと戦っているようにも見える。
『ロック危ない!』
流れ弾が俺たちの方にも飛んでくる。ラッキーが風魔法で防御しようとするが、炎が風魔法に巻き付き、火災旋風となって襲ってきた。ラッキーの風魔法が推し戻される。
「ラッキー逃げろ!」
ラッキーが魔力で負けるなんて。かろうじて直撃は避けるが少し前髪が焦げ、鼻の中に熱風が入り喉が焼けるように熱くなってきた。まずい。
「イバン、回復薬を飲むんだ。マルグレットにも飲ませろ」
「えっ、はい」
自分でも回復薬を飲む。熱風で喉がやれると気道が閉塞して呼吸が止まってしまうことがある。気道熱傷の特徴だ。鼻の中が焦げ臭い。
「ラッキーは大丈夫か?」
『ロックー相性が悪い。プライドが折れそうだ』
「大丈夫だよ、ラッキー。ただここで戦うのは得策じゃない。村から離れないと巻き込む危険がある」
ドラゴンの炎は火災旋風となり、森の中を進んで行く。途中で上空へと消えていったが、その途中までの森は一瞬で焼け野原になり燃え広がっていく。これが村の方へ向かったらと考えると恐ろしすぎる。
「イバン、君が戦いたいのはわかるが、これ以上はダメだ。守り切れない」
『イバン降りろ。ここからは大人が対応する』
「僕も戦いたい。違う! 僕は戦わなきゃいけないんだ。力があればいいの? それなら……ロックさん、僕に力を貸してください。おばあちゃんを守りたいんです。僕を仲間に……」
「そうは言ってもイバンは人間だから無理……」
そう言いかけた時、また頭の中に声が響いてきた。
【氷雪の姫が仲間になりたがっています。仲間にしますか?】
「イバン、おま……君は女の子の魔物だったのか?」
「ごめんなさい。僕の本当の名前はエミル。今は亡き氷雪の一族の生き残りなんだ。わけあってこの村では生きにくく、本当の名前を隠して生きてきたんです。お兄ちゃんお願いします。僕に力をかしてください」
【氷雪の姫が仲間になりたがっています。仲間にしますか?】
俺の頭の中に同じメッセージが流れてきてた。




