襲ってきた男たちを尋問したところ、意外な回答をされたんだが……
「お前らはいったいなんなんだ。こんな話聞いてないぞ!」
俺たちの目の前には両手を後ろに縛られた男たちが雪の上に座らせられていた。自滅と言えば自滅だが、ラッキーが怪我をさせた奴らも全員回復しておいてやった。
殺して埋めてしまうのが問題にならなくていいのは、いいんだけど……あまりに弱すぎて殺すのも可哀想なくらいだった。
今回襲ってきた奴らのリーダー格は、杖の男と騎士の男の二人らしい。
ただ、どちらも個性的というか……まったく意見があわず仲が悪い。
俺たちとしては仲間割れしてくれた方がいいのだが、付き合うのも疲れてくる。
「お前は黙っていろっていってるだろ。余計な情報しか言わないんだからな!」
「うるせぇよ。いつも規則、規則、規則って! いい加減俺だって頭に来てたんだ!」
騎士の男がそう言うが、杖の男は一向に黙ろうとしなかった。
彼らは同じ仲間のはずだが、よくもまぁこんなにも対照的な二人を組ませて斥候として送り込んできたものだ。普通ならもっと命令系統がしっかりしていてもおかしくないが、間に合わせで組ませたのか、なんなのか、まったく意図が読めなかった。
「こんな辺鄙な村の斥候だったら、一方的に蹂躙できるって聞いたから来たのに、なんでこんな目にあわなきゃいけないんだ。俺は世界でも有数の魔導士なんだぞ! それをこんな惨めな格好にさせるなんて、お前ら覚えておけよ」
なんて言えばいいのだろう……。
杖の男は、軽く見積もってとんだクソ野郎だった。
それにしても、この男で世界有数の魔導士を名乗れるとは、口だけの可能性もあるが、スイジュ国は本当に魔法に特化した国なのだろうか?
攻撃魔法などには特化せずに、生活魔法が発展しているとか?
ドモルテに会わせたら、いったいどんな表情をするのだろうか。
この男の今までの常識がすべて壊れるに違いない。
「ロックさんどうしますか? 埋めますか?」
シャノンがわざと脅かすように、彼らに冷たい視線を送りながらいい放った。
できるかぎり情報をここでとっておく必要があるからだろう。
「そうだな。雪山に埋めてしまうのもありだな。元々斥候で来ているような奴らは死体が見つからなければ、誰にもバレることはないからな。ただ、情報を吐くなら助ける価値はあるかもしれないな」
一番最初に折れたのは杖の男だった。
「何でも言う、俺たちは魔道スイジュから来たんだ。通路はあそこの壁のところにあるのを使ってきたんだ」
男が見た方角は俺たちが先ほど見つけた通路と同じだった。
やっぱりスイジュ国と繋がっているのだろう。
「黙れ!」
騎士の男が身体ごと体当たりして黙らせようとするが、男はそのまま話し続けた。
「何が聞きたい! 目的か? 俺の目的は人が殺せるって言われてきたんだ。他の奴らはこの村の特産品と、ドラゴンをこの国で暴れさせるのが目的だ」
あまりにも簡単に話しすぎる展開に、どうしたものかと考える。
情報は確かに欲しいが、偽の情報を流し混乱させるということもありえるからだ。
話されないのは話されないので、口を割りたくなるが、ここまで言われると逆に嘘のように疑いたくもなってくる。
ただ、こいつが嘘を言ったところでメリットはなさそうだ。
先ほどからの発言が自分のことしか考えていないのは明白だった。
「お前らが斥候だっていったよな。本隊はいつくるんだ?」
「明日の夜だ。明日の夜に俺たち魔法使いが雪魔法を使って、闇夜の中ですべて始末するつもりなんだ。どうせこんな村なくなっても誰も気が付かない」
「黙れって言ってるだろ!」
大丈夫だろうか。本気なのか、冗談なのかわからないが、こんなことをさらさらと言ってしまう奴が仲間にするというのは……そうとうなめているのか……本当に罠なのか。
「ご主人様、本当のことを言ってるんでしょうか?」
「わからないけど、村長に引き渡せばいいだろう。襲われるのはこの村だからな。村長に話を通さないわけにはいかない」
「ロックさん、明日も帰れそうにないですね」
シャノンが気の毒そうに俺の方を見ながらいってくる。
おかしい。まだシャノンに助けるって言ってないのに、なんで心読まれたんだろう。
もちろん助けるつもりだったが。
「シャノン、なんでこの村に残るってわかったんだ?」
「ロックさんが見捨てるわけないじゃないですか」
どんなイメージを持たれているのだろう。
「そっそうか。杖の男、この村に協力者がいるのか?」
「いない。俺たちが今夜ここに来て、下準備をしておくつもりだったんだ。これだけ話したんだから、もう解放してくれてもいいだろ? 他の男たちは殺してもいいからな。頼むよ」
どうやら心底クズなようだ。
全面的に信用はできないが……でも、本当の可能性が高い。
「解放か……今から村長の元に連れて行くから、村長に頼め」
『ロック、どうやって連れていくんだ?』
「時間がかかるけど、歩かせるしかないだろ。夜になってこんなところに放置されていたら、凍死ぬしかないからな。さすがにそれは後味が悪い」
「俺はお前らの言うことなんか聞かない! ここで死ぬ覚悟だってあるんだ。俺は絶対に口をわらないし動かないからな。これは騎士の矜持だ!」
フリかな?
一人だけ騎士の男はまだ、諦めていないのか縛られたままだというのに、元気があっていいことだ。
「動きたくないなら仕方がないですね。それならあれですね」
「ご主人様、歩きたくないみたいですからね。あれしかないです」
シャノンとメロウがニヤリと笑いながら、ラッキーのそりの方をみる。
なるほど、二人とも彼らをあれに乗せたいらしい。
「ラッキー?」
『私は犬ではないが、そういうことなら仕方がないからな。任せろ』
ラッキーはそうは言いながらも尻尾をブンブンと振っていた。
乗るよりも引っ張ってみたかったのだろうか?
「お前らの思い通りには絶対にならないからな」
そんなことを言っている男たちを、俺たちはお構いなく、どんどんラッキーのそりに乗せていく。
他の兵士たちも文句を言っていたが、勢いだけだろう。
現に口では騒いでいたが、乗る時には自分たちの足でしっかりと乗っていった。
まるで出来の悪いコントでも見ている気分だ。
男たちをそりに乗せ終わってから、そりとラッキーの身体をしっかりと結ぶ。
「それじゃあ、ラッキー頼む」
「ロックさん、私箱庭に入ってますね」
「ご主人様、私も」
シャノンとメロウが俺の返事も聞かずに一瞬で箱庭の中に消えていった。
理不尽だ。俺はこういう時に逃げられないからな。
『ロックいくぞ』
「わかったよ。イバンも一緒に乗せていくら安全に頼むぞ」
『あいよ』
俺とイバンはラッキーに直接乗り、残りは落ちないようにロープで縛ってそりに括り付けた。
これなら多少のことでは、落下したりしないだろう。
ラッキーが3歩で加速すると、縛られたままの男たちは急に叫び声をあげだした。
まだ、トップスピードには程遠い。
雪山の中をラッキーがもの凄い勢いで走っていくと、そりが宙に浮き激しく上下に振られる。
さすがパトラ作のそりだ。あれだけ激しく上下しながら地面に叩きつけられているが、いっこうに壊れる気配がない。
最初は叫び声や苦悶の声が聞こえてきたが、段々と静かになってきた。
彼らもラッキーのスピードに慣れたのだろう。
意外と適応能力はあるようだ。
そんなことを考えながら後ろを覗くと、全員が白目になって気絶していた。
別に拷問をしているわけじゃないんだけど。
多少揺れるのは我慢をしてもらうしかない。
村に着くまでの数分の間だったが、男たちからは完全に生気が消えていた。
これからまた取り調べを受けるというのに……頑張ってもらいたいものだ。
ロック「ラッキー、すごいことが起こったぞ」
ラッキー『どうしたんだ? ついに私の写真集が発売か?』
ロック「いや、今のところその予定はまったくない。それよりもこれを見てくれ」
ロック「青森県にある成田本店みなと高台店さんの週刊ランキング7位になったんだ」
ラッキー『それは、これを読んでくれる人が地域の書店さんで買ってくれたってことか』
ロック「そうなんだ。きっとここ以外の書店さんでも手に取ってくれていると思うと嬉しくて」
ラッキー『肉球プニプニしてやるしかないな』
ロック「読者を爆散させるな」
いつも応援ありがとうございます。
あなたのおかげで青森県の成田本店みなと高台店さんの週刊ランキングにものることができました。
地域の書店さんのランキングにのれるのは、すごく不思議な気分です。
書籍は発売から2週間がとても大切な時期になります。
ぜひ、今後とも応援よろしくお願いします。
いつもありがとうございます。




