海の底で1
わたしは海面に叩きつけられる。
「ぷはっ!」
着水してすぐに海面から顔を出した。
周りを見ると、他のみんなも次々に顔を出す。
わたしたちは視線を交わしてうなずき合うと、誰ともなく変身薬を口にした。
水の中にいるのに身体が熱くなって、下半身に違和感を覚える。
どうだろう。全員ちゃんと人魚になれただろうか。
わたしは試しに海中へ潜ってみた。
まず自分自身の変化に気づく。
下半身が魚類のそれなっているのはもちろん、息がまったく苦しくない。普通に呼吸できている。水の中だというのに視界も良好だった。
みんなの姿がはっきりと見える。
ちゃんと全員、人魚の姿になっているみたいだ。
あ、薬を飲んでいないオヤカタくんはきのこのままだけど。そんなオヤカタくんは、なんか優雅に辺りを泳いでいる。
「クロちゃん、どうっ?」
ミュウがわたしのそばに寄ってくる。
人魚姿の彼女を見るのは、ずいぶんと久しぶりな気がした。
というか、水中なのに会話も普通にできるのか。
「問題ないよ、ちょっとびっくりしてるけど」
「よかったっ、ロゼちゃんにチコちゃんはっ?」
「自分も平気だ」
「チコも大丈夫でぇす」
「みんな問題ないみたいだし、先に進もう」
わたしの言葉に、ミュウたちが首肯を返す。
「ヨナさん、案内をお願いします」
「はい、お任せください!」
頼もしい返事をして、ヨナさんは海の底へと進んでいく。
「みなさま、こちらです!」
ヨナさんの後に続き、わたしたちは泳ぎ出すのだった。




