甘ぁ~いそれを、沢山作ろう!
まずは取り急ぎ育てた砂糖大根を、蟻さんに上げる。
蟻さん達は、ホクホク顔で帰って行く。
次に、兵隊蜂さん用の砂糖大根をガンガン育てていく。
ある程度、出来たら左手で白いモクモクを出し、大鍋を作る。
蟻さんと違って、蜂さんにはちゃんとした砂糖にしてあげる必要があるからね。
ん?
よく考えたら、蜂蜜の代わりだから砂糖水の方が良いかな?
でも、砂糖水だとちゃんと割合を考えないと凍っちゃうかな?
そうすると、保存とかが出来ないから困るかな?
やっぱり、固形の方が良いかな?
などと考えつつ、白いモクモクで大鍋を作る。
砂糖大根は大根とカブの中間みたいな感じがする。
それの皮を白いモクモクナイフで剥いて――え? 手伝ってくれる?
妖精ちゃん達と一緒に皮をサクサク剥き、細かく刻んで大鍋に入れていく。
因みに、妖精姫ちゃんは工事の方に戻っていった。
なんか、やたらと『わたし、頑張るから、砂糖よろしくね!』っていわんばかりにアピールしてきたのには、苦笑してしまった。
あと、イメルダちゃんには一旦戻って貰った。
ある程度出来た倉庫に、育てた分を運び入れるためだ。
勿論、重い荷物を運ぶのは近衛騎士妖精君達にお願いしたけどね。
そうこうしている内に、大鍋の中も程良い数になった。
妖精ちゃんって基本、何をやるにも早いんだけど、今回のは輪をかけて凄かった!
三倍速ぐらいの動画を見ている感じ――どんだけ、甘い物が好きなの!?
まあ、わたしとしては助かるから良いんだけどね。
次に大鍋の中にお湯を入れる。
入れるといっても、そこは白いモクモク、にじみ出すようにお湯を出すことが出来る。
少し水面に手のひらを近づけて――もう少し、熱い方がいいかな?
魔力を込めて、熱する。
うむ、これくらいかな?
次に、大鍋に蓋をする。
これも、どちらかというと、塞ぐって感じかな?
一応、ちっちゃい穴は空けるけど。
グツグツしすぎない程度の熱で、しばらくそのままにする。
ここら辺、何回かの経験則で行っている事なので、正しいかは良く分かんない。
とにかく、一時間ぐらいかな?
それぐらいそのままにする。
その間、右手で何か作ってようかな?
え?
もっと、砂糖大根を!?
いや、今作ってる分でも結構な量になると思うんだけど……。
まあ、確か砂糖って腐らないはずだから、作り貯めしても良いかな?
言われるまま、砂糖大根を育てていく。
……。
……。
いや、もういらないから!
ほかに作るべき物があるから!
やたら、不満そうにするけど、もう、山となっているからね!
ほら、それよりお芋さんでも育てよう!
え?
いらない?
ほほう……。
そんなことを言ってもいいのかな?
サツマイモを一本、白いモクモクで拾い、そして、掲げる。
「これ、かなり甘いんだけどなぁ~」
え?
そうなの?
みたいな顔でこちらを見る妖精ちゃんにわざとらしくため息を見せる。
「まあ、砂糖しか興味のない人にはあげないけどねぇ」
すると、妖精ちゃん達はわたしに、あざと可愛い感じにすり寄ってくる。
ふふふ。
わたしは偉そうに胸を反らす。
「君たち、そんなに甘い物が食べたい?」
当然! というように妖精ちゃん達はコクコクと頷く。
「ならば、この女王様に絶対の忠誠を誓える?」
妖精ちゃん達はビシっと敬礼する。
「ふむふむ、ならばわたしの命に従うのだぁ!
女王様の命令は絶対!
命がけで、事に当たるように!」
ハハァァァ! というように頭を下げる妖精ちゃん達、それを見ながら満足げに「おぉ~ほっほっほぉ~!」と高笑いをするわたし――なんてやっていると、「なにをやっているの?」と冷めた声が聞こえてきた。
視線を向けると、イメルダちゃんが戻ってきていた。
イメルダちゃん、冷たい視線をこちらに向けながら言う。
「遊んでないで、さっさと働く!」
「あ、はい」
せっかく高まっていた気持ちが、しゅんとしてしまった。
あれ、おかしいな……。
女王様より何故、宰相様の方が偉いんだろう……。
そろそろかな?
と思い、白いモクモクの大鍋――その上部を少し開ける。
右手から白いモクモクを出し、細長いスプーン状にする。
そして、熱気を避けつつ、煮汁をすくい、フーフーしつつ一口――うわぁ!
甘ぁ~い!
妖精ちゃんがわたしも! わたしも! と詰め寄ってくるけど、きりがなさそうなので「ほらほら、沢山作るんでしょう! 邪魔しないの」と言いつつ、離れさせる。
煮汁以外は不要だから、取り除く作業をする。
「あ、イメルダちゃん。
危ないから離れてて!
妖精ちゃん達も!」
説明しつつ、距離を取らせる。
糖を取り切った砂糖大根はどうしよう?
穴を掘れば良いかな?
何て考えていると、妖精ちゃん達が桶を持ってくる。
え?
食べてみる?
……あんまり美味しいものでは無いよ?
まあ、欲しいならと入れて上げて、残った残り汁を一気に煮詰める。
灰汁とか砂糖大根とかの欠片を、右手から出した白いモクモク匙ですくい取る。
うむ……。
「イメルダちゃん、まだまだ時間がかかりそうだから、次育てる物教えて」
「大丈夫なの?」
「キノコとか手間がかかるものは難しいけど、単純に育てる物は大丈夫」
イメルダちゃんの指示に従い、右手で育てつつ、煮込んでいく。
しばらくすると、とろみが付き、白っぽくなり、固まってくる。
ここまで来たら、熱は不要――白いモクモクの上で冷ましていく。
茶色っぽい感じに固まってきたら、完成!
「どれどれ」と欠片を摘まみ、口に入れる。
「甘、美味しぃぃぃい!」
幸せな味ぃぃぃ!
と浸っていると、妖精ちゃん達が顔面にくっついてきた!
ちょ!
女王様に対して不敬でしょう!?
仕方が無いので、手伝ってくれた妖精ちゃん達に、小さな一欠片づつあげる。
勿論、イメルダちゃんにも上げる。
「イメルダちゃん、あ~ん!」
と食べさせて上げようと思ったのに、冷めざめとした目のイメルダちゃんに摘まんでいた欠片をパッと奪われてしまった。
でも、それを口に入れたイメルダちゃん、とろけそうな顔で「甘い……」と言ってた!
可愛すぎる!
って、それよりも兵隊蜂さんだ!
大げさなくらい大きい大鍋ではあったけど、砂糖になった量は凄く少ない。
わたしの拳、三個ぐらいだ。
味見分で一個分無くなったので、二個分を木にもたれかかっている兵隊蜂さんに持って行って上げる。
展開に困惑していた兵隊蜂さんだったけど、差し出した砂糖の塊を受け取ると、こちらをチラチラ見つつ口に入れた。
兵隊蜂さんの体がビクッ! っと震える。
そして、驚いたように囓った砂糖を眺めると、再度、囓った。
飛び上がった兵隊蜂さん、まるで『う~ま~い~ぞぉぉぉ!』と叫んでいるかのように、わたしの回りをブンブン飛び回ってる。
ふふふ、喜んでもらえたようで良かった。
え?
これは巣に居る皆に食べさせて上げたい?
それはつまり、巣に戻る……と言うことで良い?
コクコク頷く兵隊蜂さん、わたしはその背後に隠れている女王蜂さんに声をかける。
「兵隊蜂さん、戻るって!」
え? というように振り返る兵隊蜂さんに、女王蜂さん達が嬉しそうに抱きついてた!
本当に、良かったね!




