再開
新年、明けましておめでとう御座います!
遅くなりましたが更新再開となります!
今回は週2回の更新とさせて頂きます。毎日更新は大変なの…。
今年も3カウントDEを楽しんで頂けると幸いです。
シュウ・キサラギが逃亡してから4ヶ月程が経過した頃。
エルフェンフィールド軍は今もシュウ・キサラギの捜索を続けていた。
「成る程、随分と上手く逃亡している様だな」
「はい、何人かの協力者は捕えましたが。今だに本命が掴めておりません」
セシリア准将は自身の執務室で、部下からの報告を受けていた。
正直に言えば直ぐに諦めて戻って来ると考えていた。
そもそも、ブラックカードを使い逃亡しても使用履歴は見れる。また、現金化に関しても厳しい制限を設けていた程だ。
「やはり、外部からの協力者か」
「間違いありません。手の込んだデコイが複数有りました」
シュウ・キサラギを逃す際に、社長とナナイ軍曹は様々な所にデコイを作った。
似た様なルートから新しい国籍を複数用意し、その全てをデコイとしてバラ撒いたり。
犯罪者を利用して、無理矢理国外逃亡させたり。
目撃情報を偽り、全く関係無い場所を報告したり。
本人は全く知らない事だが、シュウ・キサラギを逃す為に結構なクレジットが掛かっているのだ。
「確実な足取りを掴めたのは、ある団地までです。既に団地に住む住人全員に聞き取り調査もしましたが」
「……我々は、奴を甘く見ていた様だな」
エースパイロットとしての名声だけに目が奪われていた。だが、歩兵として活動していた時もあった。
つまり、己の身体一つで何とかしようとする可能性もあった筈だ。
「一応、目撃情報は幾つかありましたが。逃亡先は不明です」
一人だけ情報を持っていた人物も居たのだが、他の余罪が多数出て来た事により調査中になっている。
結婚詐欺だけでなく、振込詐欺や恐喝にも一枚噛んでいたらしい。
「唯、外見の特徴は吐きました。とは言え、直ぐに変えれる変装ばかり。恐らく、既に別の形に変えてるでしょう」
「だろうな。全く、これだからエースパイロットは無駄に頭が回る」
戦況を把握し、自分が何処で戦えば敵を効率良く倒せるか。
また、敵から狙われれば直ぐに対処しようと動く。
アーマード・ウォーカーを自分の手足同然に動かすエースパイロットなら、普段から頭を使ってるのは間違いない。
「そう言えば、クリスティーナ中佐は?」
「外見上は普段通りだ。唯、内側に溜め込む性格だからな。恐らくだが、あの男を捕まえたら……監禁するだろうな」
少しだけ遠い目になるセシリア准将。
妹の恋が無事に成就して欲しい気持ちはある。だが、相手が色々と問題を抱え過ぎてる男だ。
下手に素行が悪い奴よりもタチが悪い。
「そうですか。クリスティーナ中佐も中々大変ですね」
「そうだな。それから、元301訓練大隊の者達の様子はどうだ?」
「無事に近衛師団に編入されました。唯、戦闘中による暴言が多いので、現在矯正中です」
301訓練大隊は訓練生でありながら、確かな練度を持っている事を証明した。
特にお偉いさんの息子、娘が大活躍した模擬戦でもあった。
両親達は我が事の様に喜んでいた。
訓練生達は当然の結果だと言わんばかりに無表情だった。
このギャップの差に一部の親達が非常に心配して、担当教官を呼び出そうとした。
しかし、当の本人は既に逃亡済み。結局、詳細を聞く事は叶わず退散せざるを得なかった。
因みにシュウ・キサラギが逃亡した事は301訓練大隊には秘匿している。
一応、臨時作戦に駆り出されたと伝えて必要の無い混乱は抑えた形だ。
「しかし、こうも上手く逃げられるとはな。我々も少々平和ボケをしていたのだろう」
「デルタセイバーの一件以来、大きな事件も襲撃も起きてませんから」
デルタセイバーが襲撃される間に、同盟惑星に対して大量の宙賊艦隊が押し寄せて来ていた。
しかし、所詮は旧式艦隊であり、自分勝手で連携とは無縁の連中だ。
一部の者達は持てる戦力を持って逃亡。残りは、エルフェンフィールド艦隊と惑星の自治艦隊により、宇宙の藻屑となって消えた。
今では大量の新鮮なデブリが浮いており、デブリ回収業者にとって新たな仕事場が増えた訳だ。
「デルタセイバー……あの機体は、色々と混乱を招いてしまったな。現にアーマード・ウォーカーは新しい世代へと移り変わろうとしている」
デルタセイバーが与えた影響は計り知れない。それこそ、既存のAWに対し進化を求めた程だ。
それはエルフェンフィールド軍も例外では無い。
「しかし、改良したガイヤセイバーの先行量産型がそろそろロールアウトします。今や、巻き返しの時です」
「スピアセイバーもまだ現役で行けるだろう。だが、ウォーウルフとヴェノムと続けば徐々に性能差は無くなってしまう」
ZCM-08ウォーウルフとZMF-09ヴェノムは短時間なら飛行も可能となっている。
勿論、GX-806スピアセイバーも短時間なら飛行も可能だ。
だが、既に性能面では互角くらいのレベルになっている。
また、維持費に関してはウォーウルフとヴェノムに軍配が上がる。
ZC-04サラガンとZM-05マドックの後継機なだけあって、共通部品は多い。
その為、辺境惑星でも性能を充分に活かす事が可能となっている。
つまり、運用面に関してはGX-806スピアセイバーは敗北しているのだ。
勿論、エルフェンフィールド軍内でのみ運用されているので問題無いと思われる。
だが、使用面と整備面でも相手の方に軍配が上がるだろう。
「全く、聞けばあの男はウォーウルフの開発に関わってたそうだな」
「はい、その通りです。現にバンタム・コーポレーションのホームページにも、開発協力者として名前が記載されてます」
サービス旺盛なシュウ・キサラギは、自分とZC-04サラガンを踏み台としてZCM-08ウォーウルフを完成させた。
更に販売促進させる為のCM映像の提供までしてくれたのだ。
バンタム・コーポレーションが感謝を込めて記載するのは当然だろう。
「しっかりとエフェクト付きでしたので。相当感謝してるかと」
「その感謝の気持ちを、我々にも感じさせて欲しかったがな」
変な所で名前を残すシュウ・キサラギ。
魅了された奴は、その背中に憧れを抱き続ける。
それは、シュウ・キサラギに少なくない数のファンが居る理由なのだ。
超級双胴戦艦ウラヌス・オブ・スターに乗艦する事になった訳だが。
流石にウラヌス内の戦力を把握して無いのは色々と不味いので、事前にエイティに端末に資料を纏めて貰った。
最初に、一番多く使用されているのがHS-105Sヴォルシア。次にMHS-108Sヴァルシアの親衛隊仕様のAWだ。
警備隊との違いは高出力ブースター、スラスターを使用している事と色だ。
親衛隊と言う訳でメディアへの露出も警備隊より多いので、胴体をネイビーブルーで残りがホワイトグレーとなっている。他にも別の色を使っているが、細かい部分だけなので省略する。
次にZC-04FCサラガンとZCM-08Sウォーウルフだ。
こちらは少しだけ複雑なのだが。どうやら、アイドル・ナインズのメンバーにバンタム・コーポレーションの社長の愛娘が一人所属しているとか。
その為、バンタム・コーポレーションが愛娘を守る為に機体、パイロット、整備士を全て用意。更に多額の資金提供もしているので、文句はマネーパワーで黙らせるという素晴らしい対応も取っている。
次にアーマード・ストライカー部隊だ。
ASは主に対艦戦闘や対要塞戦などに使用される事が多い機体だ。
大型で分厚い正面装甲に戦闘機並みの速度。そして高火力で敵艦隊に突入して行く。攻撃機としての性質が強い分、生還させる必要もある。
その為、搭乗出来るパイロットは対G能力が高い獣人系になる事が多い。
そして、ウラヌスが運用しているAS【DMX-28アスタロン】。
この機体は、ガルディア帝国の皇帝陛下がホープ・スター企業に対して無償提供された代物だ。
民衆達に素晴らしい時間を提供してくれたホープ・スター企業が、これからの宇宙航行を安全に出来る事を願って。
塗装は親衛隊同様になっているが、機体側面にガルディア帝国のシンボルマークが刻まれている。
そしてエースパイロット達の専用機なのだが、知り合いが居た。いや、一度戦場を共にしただけので顔見知り程度だろう。
唯、今後顔合わせはする予定も無いし、するつもりも無い。
と言うか、専用機調べてたら凄く羨ましい感情と虚しい感情が入り混じって、悲しくなったのは秘密だ。
「はぁ、滅茶苦茶テンション下がったわ」
機体を格納庫に入れて、所定の位置に固定されたのを確認。それからメインシステムを切ってから、コクピットから降りる。
アイリ中隊のメンバーも終わったのだろう。
全員が一箇所に集まって、何度も何度も深呼吸をしていた。
「何やってんの?アイツら」
『不明です』
何かの新手の儀式かな?と思いつつ近付いて行く。
すると、ギャランがこちらに気付いたのか手を振って来る。
「どうですかな?田中氏殿も一緒に深呼吸をしてみては。とても、とても、満たされますぞ」
「いや、満たされるって。何故深呼吸を?」
何を言っているのか良く分からない。格納庫に居るのに、深呼吸する事で満たされる環境じゃ無いだろ?
「今、拙者達はウラヌスに乗艦した訳でござる。つまり、アイドル・ナインズと同じ空間に居るのでござる。同じ空間……つまり、彼女達が吸った空気が沢山ある訳でござる‼︎」
目がクワッと見開き、再び深呼吸するギャラン。
「いや、ござるじゃねーよ。大体、ここ格納庫じゃねぇか。アイドルが格納庫に来る訳ねぇだろ」
何考えてんの?それに、空調と循環機が効いてるんだから意味無いだろ。
しかし、ギャラン達の表情は真剣だった。
「良いか?田中、良く聞け。空気は艦内を循環するんだ。つまり、ウラヌスの艦内に居れば自然と同じ空気を吸える」
「だが、吸える期間はたったの1ヶ月だけだ。つまり、今の内にDNAにしっかりと刻み込んでおく必要があるんだ。分かったか?」
凄い事を言いながら力説するアイリ中隊のメンバー達。
俺は、これ以上関わると碌な事にならないと判断した。
「取り敢えず言いたい事は分からないけど、分かりました。後、我々の部屋はどちらに?」
そう言うとイチエイから無言でカードを渡される。
部屋番号が書かれていたので、個室が割り当てられてるみたいだ。
「では、自分は先に失礼します」
今はアイリ中隊から離れたい。その一心で手荷物を持って、割り当てられてる部屋に向かう。
少し急いで向かっていたからだろう。通路の突き当たりで誰かと軽く打つかってしまった。
「おっと、失礼。急いでいたもので」
「ううん、平気……わぁ!シュウがいる!」
知らん奴と打つかったと思ったら知り合いだった。
だが、コイツとは別に親しい関係でも無いし、一度だけ共闘した間柄なだけ。それ以上でも無ければ、それ以下でも無い筈。
てか、俺の変装を簡単に見破ってますやん。
「……人違いですね。私は、ジェームズ・田中と言います。どうぞ、宜しく」
「そうなの?でも、シュウはシュウだよ?」
精神年齢が妙に幼い感じの美少女。
【翡翠瞳の姉妹】と呼ばれているエースパイロットの妹の方。
フランチェスカ・エヴァット少尉。いや、階級が上がって中尉になっていた。
以前、マザーシップ攻略戦で共に突入した仲だ。
「……ハァ、良いか。何度も言わせるな。今はジェームズ・田中なんだ。田中さんって呼べよ」
「そうなの?」
「そうだよ」
「うーん……分かった!ジェームズ!」
「田中って言えよ」
輝く様な笑顔と共に分かってくれて、ジェームズも安心だよ。
「じゃあな、俺は忙しいんだ」
「うん!今度シミュレーターで戦おうね!」
「戦わねーよ」
俺は再び移動しようとする。しかし、前から姉の方がやって来た。
フランシス・エヴァット中尉。いや、こちらも妹同様に階級が上がって大尉になっていた。
妹が可愛い系の美少女なら、姉はクールビューティーな美少女だな。
「ん?……貴様は、シュウ・キサラg」
「初めまして。ジェームズ・田中です。宜しくお願いします。田中さんって呼んで下さいね!畜生が!」
だから、何でお前も俺の正体見破るんだよ。やっぱり、金髪とサングラスだけだと駄目なのか?
「……フーチェ、何があったの?」
悩む俺を他所に、近くに居たフランチェスカに聞くフランシス。
すると、フランチェスカは笑顔と共に理由を話す。
「あのね、シュウはジェームズになったんだって」
「そうなの。それは良かったわね」
「良くねーよ。全然良くねーよ」
この姉妹は俺に喧嘩売ってんのか?だったら言い値で買ってやろうじゃねえか!コノヤロー!
「全く、良いか?俺達は他人だ。次、出会っても無視しろよ」
俺はそう言い捨ててから立ち去る。
フランシスは睨んで来るが、フランチェスカは笑顔で手を振って見送ってくれた。
姉妹の優しさに触れられて嬉しいね。
因みに、あの姉妹が搭乗している機体。以前とは違い別の機体になっている。
ZMF-09FEロアノティルト。
ZMF-09ヴェノムをベースとした翡翠瞳の姉妹専用機だ。
武装構成は以前のZF-07FEエレンティルトと同じで、特殊兵装アラクネを使用する様に調整されている。
また、プラズマジェネレーターなども出力向上している。今まで以上に手強いエース機になってるのは言うまでも無いだろう。
更にロアノティルトにはもう一つ特徴がある。
「先行量産型。畜生……俺だって、俺だってよぉ」
ZMF-09FEロアノティルトは先行量産型をベースとした専用機なのだ。
もう一度言おう。先行量産型をベースにしてるんだ。
正直に言えば滅茶苦茶羨ましい。
以前は、俺も似た様な立場に居た筈なのに。今はこの体たらく。
全て、自分が招いた結果だとしてもだ。
何故、よりにもよって翡翠瞳の姉妹が居るんだよ!
このクソ広い宇宙で、何で再会する展開になってんだよ!
大体、お前らは再登場する程の人気は無かったやろがい!
「まぁ、何でも良いや。どうせ、今後関わる事は無いだろうからな」
楽観視するのは当然だ。
あの姉妹はエースパイロット様。俺は唯のパイロット。
関わる理由も無いし、共闘する事も無い。
それに、今の俺の機体では機動戦は到底不可能なのだから。
「全部自分で選んだ人生だ。なら、行ける所まで突き進んでやるさ」
俺は、手荷物を持ち直してから自室に向かうのだった。
「ねぇ、フラン?また、シュウ……じゃないや。ジェームズと一緒に戦えるかな?」
ジェームズ・田中が立ち去った後、妹のフランチェスカ中尉は姉のフランシス大尉に問い掛ける。
フランシス大尉は端末を使いながら、ジェームズ・田中の事を調べていた。
「どうかしら?今調べてみたけど。警備隊に所属してるみたいね」
「えー?警備隊なの?じゃあ、可変機のヴァルシアに乗ってるの?」
「残念だけど、ヴォルシアの方ね」
警備隊所属と聞いて嫌そうな表情をするフランチェスカ。
それもその筈。見た目が可憐で美少女な姉妹なのだ。そして同じAWパイロットでもあり、話題の共通点もある。
毎度毎度、月初めになると警備隊が言い寄って来るのだ。
無論、大抵は無視するのだが、気分によっては模擬戦で徹底的に叩き潰して黙らせたりする。
最近では、模擬戦で叩き潰した方が早く黙らせるのでは?と思いつつある。
「ぶー……それじゃあ、つまんなーい」
「仕方無いわ。名前と国籍まで変えてるんだから。余程の事があった様ね」
警備隊が使うAWを知っているフランチェスカ中尉は、不満顔になりながら頬を膨らませる。
パイロットが良くても、今の機体の差が大き過ぎて勝負にならないと判断したのだ。
「でもでも、シミュレーターだったら大丈夫かな?」
「そうね。シミュレーターなら色々な機体データが入ってるから」
「じゃあ、後で模擬戦出来るね!」
なら、シミュレーター室で妥協しようと提案するフランチェスカ中尉。
シミュレーター室なら様々な機体データが入っている。特に、有名所のエースパイロットの戦闘データを模倣したNPCは、下手なパイロットより手強いのだ。
「そうね。私達の方が上だって証明出来るわね」
「うん!私、頑張るね!」
既に姉妹の中では、シミュレーターで戦う事が決定している様だ。
そんな事は知らないジェームズ・田中は背中に悪寒が走ったとか何とか。




