FCサラガン
オーレムは恐怖を知らないのだろう。味方が高出力ビームに直撃して、消炭になっても攻撃を止める気配は無い。
親衛隊は前線で戦いつつ、機動戦に移行。オーレム相手に果敢に戦闘を続ける。
『レイピア1より各機。α、β型を出来るだけ引き連れて纏めろ。後は艦隊の火力で処理すれば良い』
高い機動性と運動性を生かして、オーレムを大量に引き連れながら戦闘を続ける。
HS-105Sヴォルシア親衛隊仕様。
MHS-108Sヴァルシア親衛隊仕様。
両機共、警備隊と機体は同じ。
だが、ブースターとスラスターは高出力型になっており、並の技量の持ち主では扱い切れないピーキーな機体となっている。
しかし、その圧倒的な機動性と運動性はオーレム相手に無類の強さを発揮していた。
『ッ!レイピア6!β型が多数向かってる!回避に徹しろ!』
『了解!』
β型の群れが1機のヴォルシアに突撃して行く。更にビーム攻撃で追撃しながら、一気に距離を詰める。
『しまった⁉︎右脚部被弾⁉︎』
『レイピア6!各機、レイピア6を援護するぞ!』
『新たなオーレムの群れが接近中!α、β型の群れです!』
『こんな時に!』
レイピア6にβ型の群れが殺到する。
(殺られる)
レイピア6が、心の中で呟いた瞬間だった。
先頭のβ型が高出力ビームに貫かれて爆砕。更に2体、3体と貫通させながらβ型が減って行く。
『ッ⁉︎た、助かった。レイピア6、一時離脱する!』
レイピア6が離脱して行く。無論、β型は追撃を続ける。
だが、遠距離からの高出力ビームによる攻撃がオーレムの追撃を許さない。
最初は同じ親衛隊が助けてくれたのだと思っていた。
だが、レーダーの識別信号を見れば違っていた。
『警備隊?それも、単機……だと?』
近付いて見ると、1機のヴォルシアが対艦ビームカノンで攻撃を続けていた。
『……成る程。良い腕だな』
あの距離で的確にオーレムに当てている。
親衛隊が機動戦をしているので、オーレムの動きは予測し難い筈なのだが。
それでも、確実にβ型を優先して仕留めている。
だが、オーレムは障害排除を優先する。
レイピア6からアイリ12に目標を変更。オーレム特有の正確なビーム攻撃で反撃して行く。
「正確無比の射撃は逆に有難い。避け易くなるからな」
β型から放たれるビーム攻撃の合間に機体を滑り込ませるアイリ12。
回避しながら反撃して、確実に数を減らして行く。
「加速寄りのセッティングが功を奏してる。これなら、行けるぞ。オーレム相手なら充分戦える!エイティ、前に出るぞ!」
『余り、推奨しませんが。了解しました』
更に前に出て、β型を優先に次々と狙撃で倒して行く。
スコープを覗きながら狙撃をしていると、丁度サラガンみたいな機体を使ってる部隊が見えた。
「んー……なぁ、エイティさんや。気の所為かも知れんけど。11時方向にさ、サラガンの部隊居ない?」
『はい、居ます。識別にはZC-04FCサラガンとなっています』
「フルカスタムサラガンだと?もしかして、バレットネイターより上なのか?」
FCサラガンとは中々良いネーミングセンスだ。それにパイロットの練度も中々に高いのか、オーレム相手に一方的に戦っている。
『機動性と運動性はバレットネイターの方が数値では上です。そもそも、FCサラガンは総合的に性能を底上げしている様です』
「成る程。つまり、アレか。俺が使ってた教官機の強化版か」
ZC-04Rバレットネイターは機動力に振り切った機体だったからな。
パイロット保護の為に慣性抑制装置増設、脱出装置撤去仕様だったけど。
少なくとも、FCサラガンは脱出装置はデフォルトであるだろう。
『但し、パーツには高性能な物が使用されているそうです』
「完全上位互換じゃん!あのサラガンなら欲しい!」
長い事サラガン使ってたユーザーとしては、是非予備機として欲しいくらいだ。
勿論、メインはバレットネイターやブラッドアークみたいな俺専用機さ。
親衛隊仕様のFCサラガンを見つつ、再び狙撃に徹する。
しかし、遂にγ型を中心としたオーレムの群れが迫り来る。
『親衛隊の皆さーん、一度後退してねー。今から収縮砲と大型砲でγ型を処理するから』
アーノルド艦長のやる気無い声が通信から聞こえる。
直ぐに戻る親衛隊のAW部隊。そして、一番最後に取り残される1機のヴォルシア。
そう、俺である。
「どうしよう?これ」
『直ぐに戻って下さい』
「頑張って戻ってるんだけどねー。全然速度が出ねーんだわ。ハハハ……参っちゃうよなー」
こんな状況になると乾いた笑いしか出ねぇよ。
AWは好きだ。狙撃も一方的に相手を倒せるから別に良いさ。
でもさ、やっぱり……高機動型のAWに乗りてぇよ。
(今まで搭乗して来た機体との落差がデカ過ぎるんじゃい)
ZC-04Rバレットネイター。
ZCM-08Rブラッドアーク。
脱出装置が無い事を除けば、最高に心躍らされる高機動型の機体。
もう一度乗りたい。今直ぐに乗りたい。
『そこの警備隊何やってるのさ。そんな機体で前線に出るんじゃ無いよ。撃っちゃうよ?』
虚しい現実より、過去の栄光に浸っていると通信から声が聞こえた。
(確か、アーノルド艦長だっけ?逃げ続けてる人生ってのも考えものだよな)
危険予測があるからホープ・スター艦隊は安全な航行が出来る。
アイドルを守る観点から見れば理想な艦長なのは間違いないだろう。
(まぁ、俺も人の事を言う立場じゃ無いけどさ)
俺の場合は借金から逃げてる正真正銘の屑野郎だからな!アハハハ……マジで笑えねぇ。
「構いませんよ。こちらで避けるので」
若干不貞腐れ気味で返信する。それに、機体よりオーレムの追撃速度の方が速いので、このままだと追い付かれる。
なら、早急にオーレムを殲滅して貰った方が助かる。
『……君、本気で言ってる?』
「勿論ですよ。アーノルド艦長殿。それに、オーレムは待ってくれませんからね」
俺の言葉を聞いてアーノルド艦長は少しだけ考える。
しかし、直ぐに決断を下した。
『ふーむ……じゃあ、上手く避けてね』
「了解です」
『じゃあ、本人の許可も降りた事だし。全艦、γ型に向けて集中砲撃!そのまま収縮砲も発射!』
本人の許可は取った。なので、遠慮無くホープ・スター艦隊はオーレムに向けて砲撃を開始。
俺はギフトを使い、味方艦隊からの攻撃を縫う様に最短距離で避けて行く。
(マジで加速寄りのセッティングにして良かった。お陰で回避は一応出来る)
実戦なら、敵の攻撃に当たらない方が良いに決まってる。
これから先もオーレムの襲撃は来るだろう。なら、このやり方で戦って行くしか無い。
(あーあー、早く時が進んで欲しいぜ。全く)
内心愚痴を大量に吐き散らしながら、一度補給の為に航空戦艦エイグラムスに帰還するのだった。




